巻頭言

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掲載日:2008年11月28日

籾井 勝人の写真

代表取締役社長

籾井勝人 Momii Katsuto

Profile 1943年福岡県山田市(現嘉麻市)生まれ。筑豊炭田にある小さな町で小説『青春の門』さながらの言葉を話しながら高校時代までを過ごす。1965年九州大学経済学部卒業、同年、三井物産株式会社入社。鉄鉱石部長、取締役鉄鋼原料本部長、米国三井物産株式会社社長、三井物産代表取締役副社長執行役員などを経て、2005年6月より現職。趣味はクラシック音楽鑑賞。

第17回

地域活性化の第一歩は、“人の流れをつくる”こと

私の郷里である福岡県嘉麻市は、「筑豊」と呼ばれる地域にあります。かつて黒田官兵衛(如水)の子、長政が治め、謡曲『黒田節』が謡い継がれてきたこの地域は、1970年代まで“炭坑の街”として大いに賑わいました。しかし、閉山後は、他の炭坑街と同様、めぼしい産業もないまま衰退の一途をたどり、炭坑のシンボルだったボタ山は、今は見る影もありません。また、少子高齢化による人口の減少と、それにともなう税収減も街の衰退に拍車をかけました。これらの結果として、行政サービスは低下を余儀なくされ、生活の拠点としての魅力が損なわれるという悪循環が起きています。

こうした状況は、嘉麻市に限ったことではありません。今、“地域の活力低下”は全国各地に広がり、日本が抱える大きな社会問題のひとつとなっています。私は、こうした状況を見るにつけ、「どうにか変えていかなければならない」という思いを強くしてきました。

しかし、地方の財政状態の改善は一朝一夕にできることではなく、お金を使っての人集めや、いわゆる“ハコもの”に頼る施策は限界にきています。

では、「無風状態」に陥っている地域はどうすれば活力を取り戻し、深刻化する少子高齢化に立ち向かうことができるのか――。私は、そのポイントは、その地域で暮らしている人たち、働いている人たち、そして地域に思い入れがある人たちが集まって議論を重ね、「地域をどう変えていくのか、どんな社会をつくっていくのか」というビジョンや目標を明確に打ち出し、知恵を出し合って“人の流れをつくる”方策を立てることが大切だと考えています。

例えば、自然環境の豊かさを見つめ直したり、観光資源となる文化遺産を発掘して地域独自の魅力をアピールすることもひとつの方法です。また、IターンやUターン希望者の受け入れ体制の整備や、国や自治体の援助に頼らない自立的で継続的なビジネスを興すことも重要です。さらに、定年を過ぎた人たちに、蓄積してきた経験を活かして働いてもらえるような仕組みをつくることも有効なアイデアでしょう。

私は、こうした地域の人たちが立てたビジョンや方策をサポートしていくために、ICTがもつ可能性やメリットを積極的に提供していきたいと考えています。ちなみに、近頃盛んに“ICTを活用して地域を活性化する”議論が交わされていますが、“ICTありき”の方策は成功しないでしょう。ICTはあくまでツールであり、その効果は地域の人々の主体性や独自の創意工夫のもとで、活動の方向性が明確に定まってこそ発揮されるものだからです。

こうした考えのもと、現在、日本ユニシスは、活力を取り戻そうとしている日本のさまざまな地域を、微力ながら支援するビジネスを本格的にスタートさせています。地域社会の活性化は、日本全体の問題であり、当社の力が及ぶ範囲は限られていますが、個々の地域の特長を見つめながら、たとえ小さなことであっても、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

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