掲載日:2015年6月5日

みらい探訪 第1回 自然言語を使えるロボットが、能力を最大限に発揮する人々のパートナーに。

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今回は、日本ユニシス総合技術研究所で進めている研究のなかから、
人工知能分野の研究テーマの1つである
自然言語処理についてお話しします。

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自ら考え、人間とうまくコミュニケーションするロボット誕生

自然言語処理の研究で私たちが見すえているのは、10〜20年後の未来社会です。その頃になると、先進国の少子化はかなり進み、労働力の中心はロボットが担っていると予測されています。そして人間とロボットの関係も今とはすっかり変わって、人間の指示でロボットが動くのではなく、ロボットは自主性をもって行動し、自分では解決できないことに直面して困った時、人間に助けを求め、その要望に人間が応える、という形になっていると考えられています。

こうした未来への取り組みをいち早く進めているのが、ドイツです。産官学が一体となり、「インダストリー4.0」と呼ばれる「考える工場」の実現をめざしたプロジェクトが2011年からスタートしており、自動車の発明から150周年を迎える2036年には、新しい自動車製造の仕組みを確立しようとしています。考える工場では、ラインを流れる生産中の製品に付いている作業手順書をロボットが読み込み、内容を理解して自主的に動き、組み立てます。今でいう製造ラインの変更も、手順書を変更するだけなので、多品種一品生産も短期間・低コストで実現できます。

ここで問題になるのは、不具合が発生した時です。ロボットは障害を自分で取り除けないため、状況を人間に報告して、対応策の立案や実施のプランニングなど、臨機応変な対応と重要な意思決定を人間に頼むことになります。この時、どのタイミングで、どのように表現すれば、人間に状況が正しく伝わり、最善の手段で窮地から救ってもらえるのかが課題なのです。ロボット同士なら、すべての情報をリアルタイムにやり取りし、共有することで、状況や意思を正確に伝えることが簡単にできます。ところが、ロボットから人間へ、状況や意思を短時間で正確に伝えて理解してもらうためには、相対する人間の知識レベルをはじめ、常識や暗黙の了解といった人間のコミュニケーションルールをふまえて、話す内容や言葉を選んだり、そしゃくしなければならないのです。

こうした高いハードルを乗り越え、スムーズにコミュニケーションするためには「自然言語処理技術」が必要です。

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トップチームが参加した国際コンテストで世界一に

日本ユニシス総合技術研究所では、大量の文書から欲しい情報を特定する「情報検索」、文章から構造的な情報を得る「情報抽出」、2つの文章が同じ意味かどうかを判別する「含意関係認識」、文書の内容を簡潔にまとめる「文章の要約」の4領域で、自然言語処理の研究を進めています。

2014年度は、含意関係認識の達成度を明確にするため、国立情報学研究所が主催した国際ワークショップ「NTCIR」のコンテストに参加しました。このコンテストは、大学入試センター試験の社会科を題材に含意関係認識を評価するもので、世界中から人工知能研究に取り組むチームがチャレンジしました。そして今回、私たちは実施された2部門でともにトップの成績を収めたのです。これは、統計学やニューロコンピューティングなど、自然言語処理に関連する技術に90年代から携わり、多くを蓄積してきたことが研究の精度を高めたのだと考えています。

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研究成果の応用で期待される打ち合わせの支援システム誕生

こうした研究の進捗状況から、5〜10年後には言葉の意味を理解するシステムが実現し、その応用で新しいサービスが誕生すると考えています。

その1つが「打ち合わせ支援システム」です。これは人間の発言を聞いたロボットが、声の強弱や言葉の順序などから真意を推し量って要約を作成して話すというものです。また、ロボットが第三者的な判断をすることにより、誤解や対立を避けるシステムの実現が期待されます。

このようなシステムやサービスが誕生すれば、想像力や発想力が求められる知的な取り組みなどの“人間にしかできない業務”に集中できるようになります。そんな未来をできるだけ早く実現し、社会の豊かさや成長速度を速めるために、これからも私たちは、それぞれの研究を全力で進めていきます。

次回は、人工知能と同様にICTの新たな姿が期待されている、ライフサイエンスをテーマにお話ししたいと思っています。

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