みらい探訪

掲載日:2015年10月20日

第2回 次代の医療を見すえて築いた仕組みが
食を通じた世界の共存・繁栄にも貢献。

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イメージイラスト(Illustration:Noriyuki Goto)

日本ユニシス総合技術研究所の所長を務める羽田昭裕が、同研究所で進めている研究を切り口にして数年後に実現する世の中を紹介する「みらい探訪」。今回のテーマは、「ライフサイエンス」。医療だけでなく、食文化や農業など、「ライフ」を幅広く捉えることで見えてくる未来を紹介します。

ミラノ万博で提起された水と食料を地球レベルで流通させることの大切さ

2015年5月から10月まで、約140の国と地域と国際機関が参加し、「地球に食料を、生命にエネルギーを」というテーマのもと、ミラノ国際博覧会(略称ミラノ万博)が開催されました。日本も官民一体で日本の優れた食や食文化を紹介するため、「共存する多様性」をテーマに日本館を出展。日本ユニシスは日本館に協賛し、日本の食にまつわる情報や楽しい体験を提供するスマートフォンアプリを開発したほか、館内展示の技術サポートなども担当しました。

食が万博のテーマに選ばれたのは、史上初めてのこと。これは、食を通じて各国文化への理解を深めることに加え、この1年間で世界人口は約8,100万人(注)も増えており、地球レベルの共存・繁栄を図るためには、世界で水と食料を流通させることが必要であるという認識を広める意図もあります。

ところが、イタリアでは日本のかつお節が輸入規制品に該当したため、日本館で懐石料理を提供するのに、とても苦労しました。このように、ある国で普通に流通している食料品が、他国で輸入規制対象になる例は少なくありません。これは、食品の成分と健康影響の関係が、科学的にすべて解明されていないことが一因です。食生活は国や文化で異なり、食品の摂取量には差があるため、ある国で健康影響を指摘された食品が他国でも影響を及ぼすとは限りません。今後、食料を世界で流通させるためには、各食品のベネフィットとリスクを科学的に解明し、各国の行政から市民で共有することが大切です。

(注)総務省統計局「世界人口の推移」より

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あらゆるデータを統合して予防医学の研究に利用できる仕組みを世界に先駆けて構築

ベネフィットとリスクを解明して共有する取り組みとしては、予防医学の分野で進んでいるものがあります。ゲノムコホート研究と呼ばれるもので、健康な人たちの集団を対象に、全員のゲノムから、食生活、生活習慣、診療などの情報を10年、20年と追跡し、健康や発病との関連を明確にしようという取り組みです。こうした研究は世界各地で行われていますが、各研究機関が独自の仕様でデータを収集・解析しているため、情報が共有できる基盤はまだ存在しません。

そこで、京都大学医学研究科附属ゲノム医学センターでは、まず日本国内の各情報を統合し、調査対象を拡大して研究精度を高めることを目的に、2011年から情報共有基盤の開発に取り組んでいます。このICTパートナーを務めているのが、私たち日本ユニシス総合技術研究所です。個人データのプライバシー保護はもちろん、各種情報を統合して一元管理する仕様の策定や、利便性の高い統合データベースなども構築。研究者が、それぞれの視点で必要なデータを簡単・正確に抽出でき、スピーディに研究が進められる環境を実現しています。

こうした情報基盤は海外にも例がなく、この仕組みが予防医学の研究で世界をリードすると同時に、食べ物と健康の関係解明にもつながる可能性があると考えています。

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日本食のベネフィットが科学的に証明され世界中で流通する可能性も

世界中のデータが統合されて解析が進み、世界各地の食料や料理と健康の関連が解明され、例えば日本食の健康に対するベネフィットとリスクが体質や民族ごとに明らかになれば、ベネフィットのある地域で人気メニューになり、大きく広まることが考えられます。また、希望する健康状態に近づけたり身体機能を高めるために、食べた方がいい食材や料理を個人レベルで推薦する仕組みが登場する可能性もありますし、新しい食品が開発されて世界中に流通することも、十分に考えられます。

こうした環境が生活に浸透するのは少し先のことかもしれませんが、いま取り組んでいる情報基盤の仕組みづくりが予防医学の枠組みを超え、地球レベルの幅広いライフサイエンスの進化に貢献することも見すえながら、今後も研究を進めていきます。

次回は、人間の五感や自然に行う動作で、機械などが操作できる方法として注目度が高まっているNUI(Natural User Interface)をテーマに、お話ししようと考えています。

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