みらい探訪

2016年5月掲載

第4回 現実世界のオープンデータをデジタル世界で分析し、理想の未来をかたちに。

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イメージイラスト(Illustration:Noriyuki Goto)

日本ユニシス総合技術研究所の所長を務める羽田昭裕が、同研究所で進めている研究を切り口にして数年後に実現する世の中を紹介する「みらい探訪」。今回のテーマは、「オープンデータ」。
現実の地域や環境をデジタル世界で再現することによって見えてくる未来を紹介します。

“デジタルの双子” を活用することでより良い未来を導き出す

ある航空機エンジンメーカーでは、「デジタル・ツイン」という新しいデータ活用の取り組みを進めています。これは、機体に設置した各種センサから得られたデータをすべてデジタル世界にコピーして、現実世界の出来事をそっくりそのままデジタル上に再現する――いわば、双子をデジタル上で生み出すというものです。このデジタル・ツインを使ってシミュレーションを行うと、現実世界では何年もかかるPDCAもあっという間です。しかも、さまざまなパターンを試すことができます。そのシミュレーションのなかからもっとも理想的な結果を導き出したパターンをフィードバックすれば、より良い現実世界が実現できるというわけです。

デジタル・ツインの取り組みによって、この航空機エンジンメーカーは、最適な保守スケジュールを実現しているほか、用途に合ったエンジン仕様を導き出し、次期エンジン設計に反映することなども実現しています。

この航空機エンジンメーカーが実施しているデジタル・ツインはセンサからのモノや機械の情報を活用したものですが、オープンデータや公共データを用いることで、地域や環境についても同様のことができそうです。これを私たちは「風土記」になぞらえて、「風土シミュレータ」と呼んでいます。

オープンデータとは、国や自治体などが保有する公共データなどを、従来のような紙ベースの情報ではなく、デジタル処理に適した形式で二次・三次加工できるものとして公開したものです。誰もが自由に編集・加工・分析することで新ビジネスの創出や企業活動の効率化で地域経済を活性化する効果が期待されているほか、自治体でも地域問題の改善や政策の効率的な意思決定などに活用されています。

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オープンデータの活用でダブルケア世帯の支援と経済活性化に取り組む横浜

日本ユニシスが取り組んでいるオープンデータの活用プロジェクトには、オープンデータ活用に積極的な横浜市と、同市を中心に事業を展開する横浜信用金庫とともに推進している『ダブルケア対策プロジェクト』があります。

横浜市では親の介護と育児を同時進行するダブルケア世帯の増加が大きな課題になっています。プロジェクトでは、横浜市が提供する人口動態データをもとに市内の町丁別・年齢別人口推移や介護・保育施設の住所情報などのエリア情報や予測情報をはじめ、地域サービスの需給バランスなどを直感的に判断できるICTシステムを想定。さらに、事業者が事業相談で横浜信用金庫を訪れた際には、窓口で新規事業所の最適な出店場所や資金的な支援案を提示できるようにするなど、ダブルケア世帯をサポートする事業化を円滑に進める仕組みの有効性を検証しました。

加えて、ほかの地域でも同様にシミュレータを活用して風土をふまえた課題改善や経済活性化を進めています。

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オープンデータへの対応技術を深めお客様の価値向上に貢献

このほか、私たちは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提供する公共データを利用し、太陽光発電の発電量予測システムの開発にも着手しています。

太陽光発電は環境負荷が少なく、将来の主力電源として期待されているものの、天候など外部環境の影響で発電量が変わってしまう課題を抱えています。そこで私たちは、JAXAの地球観測衛星データを利用したシミュレータで外部環境の影響を把握し、精度の高い発電量予測システムの実現をめざしています。

また、日本総合研究所と共同出版している「全47都道府県幸福度ランキング」も、公共データを活用した取り組みの1つです。こちらは、国の統計データなどを独自に分析し、データビジュアライゼーション技術で都道府県別の強み・弱みなどの特長とともに、新たな課題発掘やめざすべき方向性を直感的で分かりやすく表現したものです。さらに、シミュレータで各自治体の将来を分析し、優先して実施すべき政策の決定を支援できるよう取り組んでいます。

このように、私たちは公共データやオープンデータを活用し、分析方法や分析結果の表現方法を工夫することで、これまで見えなかった課題や気づきを導き出し、ビジネスの新たな成長に貢献することをめざしています。今後はオープンデータと企業がもつデータを組み合わせ、業務改善や新サービスの創出はもとより、社会課題の解決に貢献して企業価値を高める取り組みにも対応していきたいと考えています。

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