掲載日:2005年4月4日

ユーザー事例

[クローズアップ]青森県八戸市

出生届に関するマルチ電子申請の実証実験
―Linuxベースのシステム基盤を構築

青森県八戸市では、平成16年9月から約3カ月間にわたり、「出生届」に関するマルチ電子申請の実証実験を行った。

これは、4つの課にまたがる出生届の業務の申請書を、一度の入力で自動作成し一括申請するマルチ申請のモデルについて検証するもの。電子申請の推進は全国の自治体に広がっているが、こうしたマルチ電子申請の実証実験は国内では初めてのケースになる。

今回の実証実験は、日本ユニシスなどが参画する「電子申請推進コンソーシアム(注)と八戸市が共同で実施したもので、日本ユニシスはサーバやネットワークなどシステム基盤部分の構築を担当した。このシステムではLinuxをはじめオープンな標準技術を採用している。

(注) 電子申請推進コンソーシアム
行政機関への電子申請の早期実現を目指し、電子申請のためのポータルサービスモデルの検討や関連技術の標準化を推進している組織。現在、日本ユニシスなど約20の企業・団体が参加している。

玉田 政光氏写真

八戸市 総務部
情報政策課
副理事兼課長
玉田 政光氏

池田 和彦氏写真

八戸市 総務部
情報政策課
IT推進グループリーダー
池田 和彦氏

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電子申請推進コンソーシアムとの共同で実証実験

八戸市では、ITの活用による行政事務の効率化・高度化、住民サービスの向上を目指す「八戸市IT推進計画」を策定し、昨年からは「e-八戸」プロジェクトを推進している。同市では、自治体と共同で各種電子申請の実証実験を進めている「電子申請推進コンソーシアム」からマルチ電子申請の共同実証実験の提案を受けて、「e-八戸」プロジェクトの一環として取り組むことにした。

マルチ電子申請は、一度の入力で複数の業務の申請書を自動作成するもので、各種申請における住民の利便性の向上や関係業務の効率化・スピードアップなどが期待できる。今回は、とくに出生時の届出に関わるプロセスを対象に行われた。

電子申請推進コンソーシアムではこれまでも地方自治体と共同して電子申請の実証実験を行っているが、マルチ電子申請の実証実験は八戸市が初めてのケースになる。同コンソーシアムでは今回の実験によって、マルチ電子申請の効果を測ると同時に問題点を把握することが目的だ。明らかになった問題点を解決した上で、出生届から死亡届までライフサイクル全般にわたって電子申請化することを目指している。

写真撮影・提供:bp special(日経BP社)

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マルチ申請で住民サービス向上などを目指す

八戸市の場合、出生時の届出は市民課、国保年金課、子ども家庭課と健康増進課の4つの課に、最大で6種類の申請書類を提出するようになっている。「文字通りの“縦割行政”で、住民に負担をかけている。窓口をワンストップ化できれば、こうした弊害を解消できる。それで実証実験に取り組むことにした」と、総務部 情報政策課 副理事兼課長の玉田政光氏は語っている。

今回のマルチ電子申請では、届出をする住民はパソコンを使って、用意されているWebサイトにアクセスし、対話形式のウィザード画面に従って情報を入力して届け出るという仕組みだ。手書きでの届出のように、複数の書類に繰り返し同じ住所や氏名を記入する必要はない。一度の入力だけですべての届出書類が作成でき、ワンクリックで関係する4つの課に送付できるので、住民の利便性は向上する。また、担当課でも窓口対応や処理の負荷を軽減し、事務の効率化、スピードアップが期待できる。

ただ、出生届の場合には医師の記入が必要な項目があり、今回の実証実験では八戸市内の5つ医療機関に協力を依頼し、電子申請もこれらの医療機関に設置したパソコンから行われた。

図1:マルチ電子申請実証実験の概要 (クリックで拡大)

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Linuxをはじめオープンな標準技術を利用したシステムを構築

実証実験のためのシステム構築は電子申請推進コンソーシアムに参画している各社が分担して行い、日本ユニシスはネットワークやシステムの連携などを含めたインフラ部分の構築を担当した。

システムの大きな特徴として、オープンな標準技術を採用していることが挙げられる。これは、政府が“e-Japan戦略”で推奨している「電子政府・電子自治体の構築はオープンな技術を採用」に基づくもの。たとえば、申請を受け付けるサーバは、代表的なオープンソースソフトウェアであるLinuxを基盤として構築された。

また、XML、PDF、Webブラウザなど標準技術を活用した開発環境、実行環境を提供、申請者がウィザード形式で入力した届出の内容は、紙の申請用紙と同じ様式、同じレイアウトのPDFフォーマットに自動的に変換され電子的に回覧されるので、各課の担当者も違和感なく確認が可能だ。記入した内容に不備がある場合には、PDFの注釈機能を使って指示を付け、オンラインで修正を依頼できる仕組みになっている。

図2:マルチ電子申請実証実験のシステム構成 (クリックで拡大)

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マルチ電子申請アプリケーションのソースコードを公開

9月24日から12月下旬までの実証実験の期間中、事前に参加を希望した住民のうち20名が実際にこのマルチ電子申請を行った。 その効果について同市では、申請する住民には届出が簡素化し、利便性が向上したこと、また、担当課の窓口処理についても全体として2割程度の時間の短縮ができたことなどを挙げている。

一方で、いくつかの課題も明らかになった。たとえば電子申請をしてもそれで完結するわけではなく、対面での育児指導などで住民が役所に直接出向く必要があること、複数の課にまたがるため、その調整や受け入れ体制の見直しが不可欠であること、各医療機関の協力体制の確保や住民の情報リテラシーの向上をどう図るかという問題もある。

同市では、「まだ解決すべき課題は少なくないが、こうした方向で進めればいいというビジョンや考え方が見えてきた」(同市・情報政策課 IT推進グループリーダー 池田和彦氏)としており、今回の実証実験で得た電子申請のノウハウを出生届以外の業務やサービスに活用することも構想している。

電子申請推進コンソーシアムでは、現在、今回の実証実験について分析、検討を進めており、明らかになった課題とその解決の方向などを含めて集約する予定である。その成果をベースとして電子申請の推進・拡大につなげたいとしている。さらに、今回の実証実験で開発したアプリケーションのソースコードについて広く公開する予定である。

青森県八戸市
http://www.city.hachinohe.aomori.jp/

日本ユニシスのLinuxサービス
http://www.unisys.co.jp/linux/

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※本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

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