2014年3月20日掲載

ユーザー事例

京都大学 様 先進の疫学情報基盤を駆使して医学の進歩とヘルスケアの発展に貢献する大規模な「ゲノムコホート研究」を推進。

市民1万人の健康関連情報を活用し最先端の疫学研究を推進

京都大学医学研究科附属ゲノム医学センター外観の写真

医療・介護費用の増大や国民のQOL(Quality of Life:生活の質)向上への要求が高まるなか、わが国では、予防医療の充実が重要な社会課題となっています。これまでの予防医療は、年齢や性別、健康診断結果などをもとに“生活習慣などに気をつける”といった画一的な取り組みが中心でした。これに対して最近では、個々の遺伝子情報を解析して“どのような病気になりやすい体質なのか” を調べ、より効果的な健康指導を行ったり、病気の発症や進行のメカニズムを解明し、適切な治療的介入を実施することで発症を防止したり、遅らせたりする新しい取り組みが注目を集めています。「先制医療」や「0次予防」と呼ばれる新しい医療の実現をめざして、現在、京都大学様と滋賀県長浜市が連携して推進しているのが、「ながはま0次予防コホート事業」(通称:ながはまコホート)です。

このプロジェクトは、募集に応じた長浜市の市民約1万人を対象に、特定健康診断と京都大学医学研究科が考案した詳細な「健康に役立つ検査」を組み合わせた「0次健診」を5年ごとに実施。そこで採取した血液や尿、DNAなどを生体試料バンクに保管する一方、これらを分析・解析して得たゲノム情報や生化学検査結果、健診結果、さらに生活環境や生活習慣に関する問診結果など、健康に関わる情報を網羅的に収集し、データベースに蓄積します。また、データベースには、京都大学医学部附属病院をはじめとする地域の医療機関や調剤薬局などと連携して、電子カルテや検査システム、処方記録などに蓄積された参加者の臨床データも取り込んでいきます。

これによって参加市民の健康状態を長期間にわたって観察しながら、京都大学様では、バンクに保管した生体試料やデータベース内の情報をもとにさまざまな疫学研究を推進します。例えば、がん、脳血管障害、心疾患、メタボリックシンドロームを中心とする生活習慣病の発症メカニズムの解明などを通じて、医学の発展に広く寄与するとともに、個々の体質に合わせた効果的な予防法・治療法の開発などによって市民の健康づくりへの貢献をめざしています。

京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野 教授で、ながはまコホートの推進役の一人である中山健夫氏が語ります。

「ながはまコホートは、参加した住民の方々から、遺伝子情報をはじめ、健康に関するさまざまな情報をお預かりして疫学研究を進めています。通常の健診に大動脈波速度や呼吸機能検査などを加えた0次健診の結果に基づく健康指導は実施されますが、『将来、特定の病気にかかるリスクがある』といったゲノム解析の結果については、倫理的な見地から現時点では個々の参加者にはお知らせしないルールとなっています。個人の疾病予防や健康増進にゲノム解析の結果を役立てるにはまだ科学的な知見の蓄積が必要ですし、結果の伝え方を十分かつ慎重に検討しないといたずらに不安をあおることになりかねないからです」

このように、ゲノムコホート研究は、その成果がすぐに参加者の暮らしに反映されるものではありませんが、中長期的にはさまざまな成果が社会に還元されると期待されています。

「遺伝的特質と特定の疾病の因果関係が科学的に明らかになって、かつ効果的な予防方法などが確立されれば、将来、個々の参加者に情報をフィードバックしていくことも考えられます。また、今後の研究によって、遺伝的特質と医薬品の効果・副作用などの関係が解明されれば、医療機関と連携して個々の体質に合わせた最適な医薬品を処方するといった個別化医療の推進に貢献できるでしょう」(中山氏)

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