掲載日:2005年8月3日

ユーザー事例

シンエイ/三越

ICタグ活用−サプライチェーン全体の最適化を目指す

靴卸大手のシンエイと老舗百貨店三越が取り組んだICタグを使った、売り場改革の実験が成功裏に終了し、2005年4月から本稼働しています(pdfファイルを開きます本誌2004年12月号で紹介)。この実験の総括と今後の課題などについて、株式会社三越 商品本部 商品システム推進部 ゼネラルマネジャー 西田雅一氏と、株式会社シンエイ 営業企画システム担当 ゼネラルマネージャー 加藤義則氏にお話しいただきました。

西田 雅一氏写真

株式会社三越
商品本部 商品システム推進部
ゼネラルマネジャー
西田 雅一氏

株式会社シンエイ
営業企画システム担当
ゼネラルマネージャー
加藤 義則氏

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「お待たせしない売り場づくり」を目指す

百貨店の婦人靴売り場は、従来「お客様をお待たせする売り場」と言われてきました。西田氏はその実態を「サイズが平均6サイズあり、店頭の6〜10倍の倉庫在庫を持っています。したがって、店頭と倉庫の往復が多く、欠品のロスも多いのです」と語ります。また、百貨店のシステムは、発注から仕入れの電子化はかなり進んでいますが、仕入れ後の電子化はまだ十分とは言えません。三越はこれらの問題を解決するため、IC タグ実験に望みました。

一方、卸側のシンエイでは、1日2〜3万足の入出荷を回しながらどこかの工程で情報をとろうとすると、必ず物が止まるという問題を抱えていました。その解決策としてICタグに期待をかけました。また、既存システムとの連携にも興味を持っていました。

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効率が大幅にアップし、売上も1割増を実現

作業工程はシンエイでICタグを付けるところから始まります。今回は三越だけが対象の実験だったため、出荷直前に一つひとつICタグをビニール袋に入れて箱に付けていきます。ICタグのなかには何も情報は入れておらず、ICタグ固有のコードとJANコードとを関連付けてから出荷しています。

品物が三越に着くと、三越側で受け入れ作業を行い、店頭に靴が並びます。店舗作業での効果について西田氏は、「お客様からこの靴の24センチはありますかと聞かれたら、携帯情報端末でICタグを読み込み在庫確認ができます。セルフの接客端末では、靴を置けば在庫情報が出てきます。もしサイズがない場合は、サイズがある他の商品が出てくるので、他の商品の検索も可能です。棚卸も非常に速くなり、倉庫1ラックに従来バーコードで15分かかっていた読み込みが、3、4分になりました。なくなった商品も個体でわかります」と語ります。販売員が本音でこれは便利だと言い、実験終了後も継続して使用したいと、強く要請されました。実際売り上げも1割増を果たし、4月から本稼働を行うこととなりました(実験結果は表参照)。

三越接客担当の声

  • ICタグだと一度にたくさん読み取りができるので、棚卸がスピードアップしました
  • お客様が色やサイズ違いを求められたとき、今まではバックヤードに行かなければ在庫がわからず、ない場合無駄な時間になっていました。今はその場で在庫がわかるので、お客様をお待たせすることなく、他の商品をおすすめできるようになりました
  • お客様が手に取った商品がわかるので、それを多めに発注するといったことが可能になりました
ICタグを付けた靴
表:実証実験および本稼働後の結果

表:実証実験および本稼働後の結果
実験の結果、ICタグの導入は、接客業務の効率化に
対する効果が非常に大きいことがわかりました。
お客様による、端末検索が一般化してくれば
さらにニーズは高まることも予想されます。
※1:10月12日〜12月20日 2:4月26日〜5月31日

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卸側の負担を解消するための現実解を模索

店頭では大きく顧客満足向上と売上増に貢献した今回の実験ですが、実際には卸であるシンエイ側の作業負担のうえに成り立っていました。

その点について「現状のシステムとうまく融合し、ICタグでの検品からEDI(電子商取引)まで動くことを検証できましたが、その分、新しい作業がでてきました。ICタグの取り付け作業と、ICタグとJANコードの関連付けです。また、今使っているICタグは高価なので、再利用をしています。使い終わったICタグは回収して汚れていたら拭くという作業があります」と加藤氏が語るように、店頭では大きな効果が出ていますが、今現在はそれを実現するために、川上に負担がかかってしまっています。サプライチェーン全体としてこれらを吸収できなければ、最終的に顧客にしわ寄せが行きかねません。

この課題を解決するため、今、シンエイではさまざまな取り組みを行っています。従来から使っているバーコードのラベルにICタグを付けて、これを靴の底に貼るという実験です。「まだ印刷会社に手作りで作ってもらっている段階ですが、ラベルには値段が付いているので三越側で値札を付けなくてもよくなり、 ICタグの取り付け作業を吸収できるかもしれません」と期待を語ります。

あわせて、発行時にJANコードとICタグの関連付けができるプリンタを開発してほしいとメーカーに依頼しており、実現の目処が立っているといいます。加藤氏は、「これができれば、増えた負荷が吸収されて、ICタグの増加コストも持てるのかなと思っています。お客様のメリットを考えるとやめるわけにはいきません。当社では今靴卸の団体に、このICタグを入れたバーコードラベルの統一化など働きかけていますし、研究会も発足しています。今後も広げるための活動を続けていきます」と力強く語りました。

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シンエイの課題解決のためのアクション

  • 従来のバーコードラベルに、値段とICタグを付け、靴に直接貼ることで、三越の値付け作業をなくす
  • JANコードとICタグの関連付けを発行時にできるプリンタ製造をメーカーに要請
  • 靴卸団体に働きかけ、ICタグを入れたバーコードラベルの統一化を目指すとともに、研究会も発足

(BITS2005パネルディスカッションより)

株式会社シンエイ
http://www.shin-ei-corp.co.jp/

株式会社三越
http://www.mitsukoshi.co.jp/

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篠原 圭写真

日本ユニシス・ソリューション
テクノロジコンサルティングサービ
ビジネスディベロプメント
篠原 圭

ICタグを高価なバーコードで終わらせてはいけない!

今回の実証実験において、当社は主にシンエイ様の倉庫・物流業務に関するシステムを担当させていただきました。その結果、現場の視点にたったICタグの導入によるメリット・デメリットが明らかになりました。その中であらためて実感したことは、「ICタグを高価なバーコードで終わらせてはいけない!」ということでした。

確かに、バーコードからICタグに置き換えることで業務効率は改善されたものの、残念ながら新たな価値を生むところまではいきませんでした。

ICタグは業務改革を実現するためのツールと位置付けており、今後、これを活用することでお客様に新たな価値を生むご提案をしていきたいと考えます。さらに我々はシステム基盤の整備も重要な課題であると認識しており、EPCグローバルなどの標準技術の採用や個品レベルでの情報管理など、お客様が安心して使っていただけるIT基盤をご提供します。

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※本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

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