BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

高度なデータ利活用の浸透

データ利活用の姿は、過去データによる「現状把握」から過去データとリアルタイムデータを組み合わせた「未来予測・予測結果対応支援」へと進化する。また、利活用に利用するデータは、社内の単一データソースから社内外の複数データソースのへと利用範囲が拡大する。その結果、データ利活用による意思決定の精度が向上する。企業規模や分析ノウハウの有無に関わらず、企業がデータ利活用を行える環境が整う。また、データやデータ分析に関する企業同士の連携が広がり、事業範囲の拡大が図られる。これには、分析ノウハウや保持するデータの販売も含まれる。

図1 高度なデータ利活用の浸透

背景と現在の状況

多くの企業で、自社内外に存在するデータを積極的に活用し、従来を超えたデータ利活用を行おうという機運が高まってきている。これまでの利活用は、自社内に蓄積されたトランザクションデータや情報系システムのデータを中心に、過去の状況を把握することが主であった。しかし、利用できるデータの種類の拡大と処理技術の進化が進んでおり、それらを利用したより高度な利活用が可能な環境が整いつつある。

例えば利用可能なデータの種類は、電子マネーやGPS付きモバイル・デバイス、Blog、ソーシャルメディア、各種センサーなどの普及を背景に拡大してきた。これらのデータには、テキストや音声、画像といった非構造化データも含まれる。また処理技術については、前述の非構造化データを処理する技術や、従来では扱えなかった量のデータを蓄積・処理する技術、リアルタイム処理も含め活用に必要な速度で処理する技術が登場してきた。このような技術の例として、MapReduce,やNoSQL, 複合イベント処理、インメモリデータベース管理システムなどが挙げられる。更に利活用に必要なコンピュータリソースが、より低コストで利用可能となってきた。

新たに利用可能になったデータや、それらを処理する技術を用いることで、より高度なデータ利活用を行えることが期待されているが、実際にこのようなデータ利活用を実施している企業は2012年時点では少数であり、十分浸透しているとは言えない。これは日本にはデータ利活用が根付いている企業が少なく、データ分析や処理技術を利用するノウハウが不足していることや、事前に費用対効果を見極めることが難しいことなどが原因として挙げられる。
一方米国では、従来からデータ利活用が根付いており、新たに利用できるようになった処理技術やデータを活かし、競争力を強化している企業の例が増え始めている。日本においても、多くの企業がデータの利活用により競争力を強化できるようになるためには、企業にとってより利用しやすい活用環境を整えることが解決すべき課題である。

3〜5年後の姿

データ利活用の姿は、過去データによる「現状把握」から過去データとリアルタイムデータを組み合わせた「未来予測・予測結果対応支援」へと進化する。また、利活用に利用するデータは、社内の単一データソースから社内外の複数データソースへと利用範囲が拡大する。また、データ分析・予測結果を企業活動に素早く結び付けられる環境が整い、適切な意思決定を行うために必要な分析結果や予測結果が、ビジネスプロセスのあらゆる段階で利用できるようになる。その結果、データ利活用による意思決定の精度が向上する。例えば、コールセンタへのコンタクト履歴から離反しそうな顧客を見つけ、有効な離反防止策を自動的に実行することは、未来予測・予測結果対応支援の一例である。

企業規模や分析ノウハウの有無に関わらず、企業がデータ利活用を行える環境が整う。例えば、自社内にデータ分析のノウハウが無い企業でも、データ分析ノウハウも含めて提供されるソリューションや、SaaS化されたサービスを利用することでデータを利活用した企業活動が容易に行えるようになる。また、企業間でのデータ利活用連携が広がり、事業範囲の拡大が図られる。これには、分析ノウハウや保持するデータの販売も含まれる。データはその活用ノウハウも含め企業間で流通するようになり、真の意味で“資源”となる。

自社で高度なデータ利活用を行える企業は限られているが、ソリューションやサービスを利用することで、目的とする分析が可能となっていく。2012年時点で、統計スキルを持たない要員でもデータ利活用が行える製品(例えばTopicExplorer / TopicStation*1など)が提供され始めてはいたが、全体として個別サービスが多く利用に当たってのハードルは高かった。

顧客離反防止やセキュリティログ分析など、特定目的の分析を自動化したソリューションやメニュー化したサービスが提供されるようになり、データ利活用のハードルが下がっていく。自社でデータ分析が難しい企業でも、データ分析ノウハウも含めて提供されるソリューションや、SaaS化されたサービスを利用することで利活用が可能となっていく。

また、データ利活用は“やってみなければ結果が分からない”事が多く、最初から大きな投資を行うことをためらう企業も多い。そのような企業にとってもデータ分析をサービスとして利用できることは、データ利活用への追い風となっていく。

これらのソリューションやサービスを提供するのは、いわゆるITベンダーやSIerとは限らず、高度な情報活用に長けた企業が自社のノウハウを新たな収益源として活用し始めるようになっていく。

*1 TopicExplorer / TopicStation:BIPROGY株式会社が提供している、ソーシャルメディア対応のテキスト分析ツールおよび統合分析・共有システム

分析の視野を広げたり、より広範囲なデータを利用するために、企業間のデータ利活用連携が拡大する。戦略上の理由や、これまでとは異なる切り口がより有効と考えられることから、同業種間の連携より異業種間の連携が拡大していく。2.1で述べた“分析ソリューションやサービスの利用”とは異なり、このケースでは互いのノウハウや保持するデータを相互活用する形の連携となる。2012年時点でも、Yahoo! JAPANとローソン、クックパッドとアイディーズなどがお互いの顧客情報を共有し、サービスの向上を図っている例があったが、異業種間の連携がますます進んでいく。このような連携は本業の業績拡大のみならず、事業範囲拡大へも貢献する。分析ノウハウや保持データを部分的に販売することも事業範囲拡大として検討されていく。

企業間での連携を可能とするために、複数個所に存在するデータを、セキュリティを確保した上で一つのデータベースとして利活用できる技術が使われている。使用するデータはオンプレミスやクラウド上のデータベースサービスなどにも存在する。また異なるデータベース同士、例えばリレーショナルデータベースとNoSQLの連携も行われている。

これらの企業はITベンダーやSIerに対して、単なるシステム提供以上の役割を期待するようになる。その中には、お互いに必要としているノウハウやデータを保持する企業を結びつけるマッチメーキング的な役割も含まれる。

データ分析や予測の高度化・高速化が進むにつれ、分析結果や予測結果をいかに素早く企業活動に結び付けられるかが重要な課題となってくる。この課題を解決するため、データ分析・予測システムは基幹系システムや情報系システムと密接に連携され、適切な意思決定を行うために必要な分析結果や予測結果が、ビジネスプロセスのあらゆる段階で利用できるようになっていく。それらの分析結果や予測結果は、より鮮度が高く詳細で状況に適したものとなっていく。また予測結果に対して効果が検証された対応策が存在すれば、対応策の推奨や対応策の自動実行が行われ、対応実行までのスピードアップが図られていく。

PDFファイル版のダウンロードPDF【PDF】(341.6 KB)

*Technology Foresightsは、BIPROGY株式会社の登録商標です。

*その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。