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Foresight in sight

Technology Foresight 2016

スマート・マシンによる産業構造の変革の始まり

ロボット、自動運転車、ドローン、3Dプリンタなどの成熟・普及が進み、グローバル製造業を先頭に工場や事業所の完全無人化やスマート化が前進する。また、2020年に向けた建設・交通・旅行関連や、地域コミュニティや介護・医療の現場等のスマート・マシンによる自動化*1 が拡大している。
スマート・マシンやAIによる自動化は、新たな産業革命の始まりをもたらし、数十年にわたって産業構造が変革され雇用が再配置されていく。この変革に伴う混乱は不可避であり、社会/産業/生活が安定に至るには長期的な進化が必要になる。
新たな産業革命

背景と現在の状況

3K(危険、汚い、きつい)の削減と生産性向上を目的に始まったロボットやセンサーの利用は、少子高齢化と人手不足の進行と自動運転車、ドローン、3Dプリンタなどのスマート・マシンの台頭を背景に、製造業から農林水産業、土木建設業、サービス産業に広がりつつある。特に日本経済の約7割を占め労働集約型の業務が多いサービス産業では、店舗での来客受付などでロボット利用や自動化の試みが始まっている。
コンシューマITで当り前化した各種のパーソナル・アシスタント*2 による利用者の意図を察し手間暇を軽減する技術は、企業ITの世界にも侵入しつつある。たとえば次世代ERPソフトウェアには、利用パターンを機械学習することにより、入力の多くを選択に置き換えている製品がある。
2020年に向けた建設需要の増大(震災復興もある)に加えて、政府によるイノベーション促進・規制緩和・法制度整備の取組みにより、スマート・マシンによる自動化が特定分野で急速に進むと期待されている。
*1 ここでは自動化を人間の補完・支援から自律動作まで幅広く捉えている。自動運転車を例に取ると自動ブレーキや自動縦列駐車は人間の補完・支援であり、道路のカーブの自動追尾は自律動作と位置づけられる。
*2 Apple Siri など

3〜5年後の姿

ロボット、自動運転車、ドローン、3Dプリンタなどの成熟・普及が進み、グローバル製造業等を先頭に工場や事業所の完全無人化やスマート化が前進する。また、2020年に向けた建設・交通・旅行等関連や、持続困難な地域コミュニティや人手不足の深刻な介護・医療の現場等では、政府によるイノベーション促進・規制緩和・法制度整備の取組みと足並みが揃うことにより、スマート・マシンによる自動化が拡大している。

industry 4.0、industrial internetなどによって、製造業を中心とした産業の自動化の標準が広がり、線としてのつながりが形成される一方、面としてのつながり(例:スマートシティ)やコスト面では障壁に直面している。標準化統一の争いの焦点は、テクノロジ・スタックとプラットフォームから、相互運用性(データ交換、制御連携)に移っている。

米国や一部新興国(例:中国)では、産業の自動化により産業構造の変革や雇用の再配置がダイナミックに起こりつつある。一方、欧州や日本では、産業構造の変革や雇用の再配置は穏健な形で進んでいる。

スマート・マシンやAIによる自動化は、産業構造の変革や雇用の再配置の始まりをもたらした。これは、数十年にわたる新たな産業革命の入口であり、スマート・マシンやAIと人間の協調・共生を通じて、人類文明の新たな高みが模索される。産業革命であるが故に変革・飛躍の一方で混乱・苦難は不可避であり、社会/産業/生活が安定に至るには長期的な進化が必要になる。

実世界の自動化の拡大

ロボット、自動運転車、ドローン、3Dプリンタなどの成熟・普及が進み、並行して政府によるイノベーション促進・規制緩和・法制度整備の取組みが進められる。これらの足並みが揃った分野では、スマート・マシンによる自動化が拡大している。

2020年に向けて、建設需要と訪日旅行客需要が増大する中、関連する建設・小売・観光・旅行・宿泊・飲食等の現場でスマート・マシンの活用が進んでいる。たとえば建設現場では自動運転ブルドーザとドローンによる整地状況の継続計測を組み合わせることにより熟練工に頼らず高精度な整地作業を行うことが当り前化している。各種接客の現場ではサービスロボット、自動運転車、パーソナル・アシスタント、自動翻訳等により訪日旅行客を満足させるおもてなしを提供できている。

厳しさを増すグローバル競争にさらされる製造業では、完全無人化工場やスマート工場(原材料調達から製品出荷までの進捗状況をリアルタイムで見える化することを目的に、生産設備機械や情報流がシームレスに連携する工場)のモデル工場を国内で開発し、海外に展開している。製造業以外の事業所(例:運輸業の物流拠点)でも完全無人化やスマート化(入荷から出荷までをリアルタイムで見える化)が広まっている。

高齢化・過疎化により持続困難となっている地域コミュニティや、人手不足が深刻化している介護・医療の現場においては、自動運転車、ドローン、パワーアシストスーツ(腰痛防止、リハビリ支援)、コミュニケーションロボット(認知症予防)の活用が進んでいる。

自動化の拡大などがもたらす生産性向上による経済効果について、2025年の日本のGDPを現時点の予測(4.9兆ドル)より最大で6.3兆ドルと30%拡大できると予測されている*3。
*3 “Future of Japan 生産性向上が導く新たな成長の軌道”.マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社.
http://www.mckinsey.com/global_locations/asia/japan/ja/latest_thinking/future_of_japan , (参照 2016-5-12).

産業の自動化に関連する標準化は発展途上

industry 4.0、industrial internetなどによって、製造業を中心とした産業の自動化の標準が広がり、線としてのつながりが形成される一方、面としてのつながり(例:スマートシティ)やコスト面では障壁に直面している。
標準化統一の争いの焦点は、テクノロジ・スタックとプラットフォームから、相互運用性(データ交換、制御連携)に移っている。しかし面としての展開にあたっては、技術面よりも多様なステークホルダー間の利害調整・利益配分の方が重要になっている。コスト面では高価格・長寿命な製品(たとえばジェットエンジン、建機、CT/MRI等の産業・医療用機械)から、低価格・短寿命な製品へ裾野を広げる方策やそのために有効な標準化が課題となっている。

現在、スマート工場の例として独BMWとコマツが著名であり、製品ライフサイクルを通じたサポートとしてはコマツ、シスメックス、米GE*4 が著名である。3~5年後には、マルチベンダーの機械設備を利用している大多数の工場や医療機関等では自動化の恩恵をフルに享受するには至っていないが、これらの産業界の取り組みとindustry 4.0、industrial internetなどによる標準化の取り組みにより、製造業を中心とした産業の自動化を促進している。
*4 米GEは、航空・医療・運輸産業向けに、産業データとアナリティクス専用に設計されたソフトウェアプラットフォーム「Predixクラウド」を2015年に発表。

産業構造の変革や雇用の再配置にはグローバルな地域格差

米国や一部新興国(例:中国)では、企業の営利本能の顕在化への歯止めが乏しいため、産業の自動化により産業構造の変革や雇用の再配置がダイナミックに起こりつつある。一方、欧州や日本では、法規制や文化・伝統が歯止めとなり、産業構造の変革や雇用の再配置は穏健な形で進んでいる。

ソフトウェアが製品・サービスの機能の大部分を規定するようになる一方、IoTがすべてを見える化し、スマート・マシンが成熟・普及することで、製品・サービスが顧客に提供する価値が変わり、産業構造の変革が現実化し始めている。さらに、人工知能(AI)によりルーチン知的作業が自動化可能になることでビジネス・プロセスの抜本改革が可能になると共に、経営者から現場の労働者まで仕事の内容と必要スキルが大きく変わり始めている。特に労働集約型の職種・雇用は、自動化により再配置が大規模に発生する可能性がある。労働集約型でない職種・雇用は、仕事の内容の自動化部分が拡大するものの、職種が無くなり再配置が大規模に起こるまでには至らない。

国内では、グローバル競争に直面するICT、メディア、ハイテク製造、金融・保険などでスマート・マシンやAIによるビジネス・プロセスの抜本改革が進み、産業構造の変革への対応が始まる。サービス産業、農林水産業等においては、少子高齢化や人手不足に対応し生産性向上を図るためにスマート・マシンの活用が進む一方、新たな雇用が生み出され再配置が穏健な形で進んでいる。

人間とスマート・マシンの安定した共生には長期的進化が必要

スマート・マシンやAIによる自動化は、産業構造の変革や雇用の再配置の始まりをもたらした。この変化は長期的な変化、すなわち新たな産業革命の入口であり、スマート・マシンやAIと人間の協調・共生を通じて、人類文明の新たな高みを模索している。産業革命であるが故に数十年にわたって変革・飛躍の一方で混乱・苦難は不可避であり、社会/産業/生活が安定した共生に至るには長期的な進化が必要になる。

スマート・マシンやAIと人間との関係については「2045年に人工知能が人間の知能を超える」というシンギュラリティ仮説をレイ・カーツワイルが提唱して注目される一方、「AI自体が問題なのではない。危険なのは自律的に動くAIである」 「このため、AIにオートノミーを持たせるのではなく、人間の知能とAIが協力していく方向で進むべき」*5 という見解 もある。3~5年後には、「AIに自律性を持たせる方向での研究開発は避ける」「人間の知能とAIは、協力し相互補完する形での協調・共生を目指すべきである」といった社会的合意が形成され、それに基づく長期的進化のコントロールが行われている。
*5 ”AIと経済社会の未来(議事概要)”.独立行政法人経済産業研究所. http://www.rieti.go.jp/jp/events/15092801/summary.html , (参照 2016-5-11).

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