日本ユニシス十勇士
特集
メインフレーム全盛時代から培ったノウハウと、高度な技術力を有するエンジニア集団“日本ユニシスグループ ”個性豊かな10人のエンジニアと、彼らが抱く“オープンソースで叶えたい夢”をつないでゆく大型連載!
日本ユニシス十勇士 第6回 三浦和夫
日本ユニシス株式会社 商品企画部 OSSビジネスディベロプメント ソフトウェア企画グループ グループリーダー
ソフトウェアでマーケットに衝撃を!遅れてきたハイエンドOSS請負人
ネットワークシステムを中心にビジネス向けのソリューションとして広く普及したOSS。日本ユニシスではこうしたOSS利用の流れをさらに大規模かつ自らの得意領域でもある、ミッションクリティカルへと押し上げるべく画策している。今回はそんなユニシスが開発準備を進めるデータベース・マネジメント・システム※1(以下DBMS)と同商品の仕掛け人、三浦氏を紹介する。
OSSが広く普及した要因の第一としてライセンス費用がかからないことが挙げられるだろう。通常、ライセンス費用をサービスの対価とするソフトウェア製品群にあって、その存在はひときわ魅力的である。
三浦和夫はこうしたOSSの恩恵を、ミッションクリティカル・システムに反映させるべく奔走している。所属は日本ユニシス内商品企画部のOSSビジネスディベロプメントと呼ばれる部署。彼が今手がけるのは、OSSミドルウェアのサポートサービスの企画立案と、日本ユニシスが独自開発した大規模開発向けフレームワーク『MIDMOST』のOSS対応。そして現在日本ユニシスが研究開発を行っているミッションクリティカル用途のDBMSの企画立案である。
データベースを構築するソフトウェアであるDBMSは、商用であれば高額なライセンス費用が発生する。そのためPostgreSQLなどのOSSを利用してシステムを構築することの意義は大きい。ライセンス費用が問題視される企業などの基幹系システムではなおさらであるが、実際にはこうしたシステムでの採用は多くない。そうした状態を打破するべく動き始めたプロジェクトがユニシスの新しいDBMSである。
「開発企業や特定ビジネス向けのソリューションとして利用されているOSSのDBMSですが、我々のターゲットでもある基幹系システムでは導入がなかなか進んでいません。そこで日本ユニシスではPostgreSQLをベースに、メインフレームで培ったクラスタリング※2などの技術を盛り込んだ、ミッションクリティカル向けのDBMSを準備しているところです。機能を強化したOSSのDBMSにより、お客さまには、ライセンスコストのメリットを享受していただけると考えています」
DBMSをはじめとするOSS商品に携わり、会社の内外を問わずさまざまな人間とミーティングを繰り返す三浦だが、OSSに関わるようになったのは最近になってから。以前は商用ソフトウェアの企画業務を担当していたという彼にOSSの第一印象を聞くと「タイムスリップしている」という答えが返ってきた。
「ソフトウェアビジネスの観点でいえば、商用ソフトウェアには細分化されたテクノロジーと、ソフトウェア利用の対価であるライセンス費用という高度な考え方があります。OSSはそのどちらもが退化したソフトウェアだと感じました」
1992年にエンジニアとして日本ユニシスに入社した三浦は、入社後に行われたメインフレームとUNIXの選択制新人研修で、迷うことなくUNIXを選ぶ。その背景には当時叫ばれていたシステムのダウンサイジング※3があったという。
「当時は、さまざまな企業がUNIXやWindowsで小規模システムの開発に挑戦しているような時代でした。私はUNIXエンジニアとしてお客さま先に常駐して開発業務にあたっていましたが、そのすぐ横でユニシスのメインフレームをなくそう! という趣旨の会議が行われているような状況でした。悲しい気持ちになったのを覚えています」
苦い経験ではあったものの、このときの“ダウンサイジング”というメリットの見えるソリューションは、強烈なインパクトとして心に刻まれた。このころから彼の関心は少しずつビジネストピックに向き始める。
その後やってきた日本ユニシスの企業留学制度のチャンスでは、大学やIT企業で技術を学ぶエンジニアたちの中にあって、コンピュータとは関係のない社会福祉に取り組むNPOで学ぶ。帰国後はITベンチャーが次々に生み出した新しいビジネスモデル、いわゆるドットコムバブルに大きく影響された。
「そのころから商材としてソフトウェアを取り扱いたいと考えるようになりました。コピーしていくら、付加価値にいくらというソフトウェアのビジネスプロセスに興味を持ったのです」
ここからマーケッター三浦の人生が始まった。
商用ソフトウェアの仕組みに興味を持ち、マーケティング活動を続けてきた三浦。初対面で“退化”を感じたOSSという商材を、今はどのように捉えているのだろうか。
「いくつもの利点が存在するOSSには誰もが少なからぬ魅力を感じています。ただミッションクリティカルのビジネスで考えたときには、非常に距離を感じているのが実情ではないでしょうか。ホストのダウンサイジングによって生まれたコストメリットは、目に見えてすばらしい投資効果として企業に受け入れられました。当時のように大きな衝撃を与える商品を提供していくことがOSSにおいても重要だと思います」
OSSの導入を検討するユーザーは大きく二分されると三浦は言う。自分の思うものに充足すればよい “Good enough”な考え方と、完全な形でシステムの基盤を大きく移行する“ミッションクリティカル”な考え方である。これまでのコミュニティ主体であった“Good enough”なOSSを“ミッションクリティカル”に押し上げるのが日本ユニシスの使命であり、顧客にハッキリ見える形のメリットを生み出すのが彼の仕事である。
自らを「OSSに思い入れがない人間」と評する三浦だが、実はOSSを理解したいと誰よりも考え、そのための方法を誰よりも悩んでいると周囲は語る。顧客に衝撃を与える商品を提供したい。そうした思いのもと、今日も彼はOSSを研究している。周囲には「特別な思い入れはない」と漏らしながら。
フリーマガジンNEXTWISE 2007年4月号に掲載
※1 データベース・マネジメント・システム(DBMS)
複数のユーザーやアプリケーションが共有するデータベースを管理、運用するためのソフトウェア。最近ではデータを表形式で管理するRDBMSが主流になっており、PostgreSQLやMySQLといったOSSはこれに含まれる。
※2 クラスタリング
イーサネットなどで接続された複数のコンピュータを、あたかも大きな1台のコンピュータのように利用するための技術。1台のマシンが停止しても他のマシンが作業を引き継ぐため、システム自体は止まることはない。
※3 ダウンサイジング
コンピュータ業界においては、それまで大型コンピュータで構築していたシステムを、コスト削減の目的から、小型のパソコンなどに移行することを指す。一般的にはコスト削減のために規模や量を縮小することをいう。
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