JP/EN

 

Foresight in sight

オープンソース

事例紹介

2008年12月

UNITRA® 次世代物流情報プラットホームサービス

次世代物流プラットフォームサービス「UNITRA」をオープンソースフレームワークで構築し物流イベントの可視化を実現

Interview

有家 正博氏の写真
有家 正博 ウケ マサヒロ USOL東京 共通利用技術部 第1グループGL
永田 俊秀氏の写真
永田 俊秀 ナガタ トシヒデ USOL東京 共通利用技術部 第1グループ
菅井 慎也氏の写真
菅井 慎也
スガイ シンヤ
USOL東京
共通利用技術部
第1グループ
村野 葉月氏の写真
村野 葉月
ムラノ ハツキ
総合技術研究所
OSSセンター
利用技術二室

Page index

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。

【開発の背景】物流におけるすべての情報をリアルタイムに収集し、「モノ」の動きや場所の可視化をめざす

  • 物流コストを削減するためには、物流情報をリアルタイムに把握することが必要
日本ユニシスは、三井物産と次世代物流情報プラットフォーム・サービス「UNITRA」(ユニトラ)を共同開発し、2008年4月から本格的に運用をスタートさせている。UNITRAとは、物流現場において「モノ」に割り振られた固体識別番号をICタグやバーコードなどの自動認識技術で識別し、インターネット経由で「モノ」の移動履歴や分析機能を利用者に提供するサービスのこと。個別の環境にシステムを構築することなく、インターネットを介していつでも、どこからでも情報分析ができるSaaS型サービス(*1)として提供するもので、物流情報は日本ユニシスのデータセンターにあるプラットフォームに蓄積している。

現在、UNITRAの機能第1弾として、パレットやカゴ車、プラスチックコンテナなどの循環利用型の搬送器具(RTI:Returnable Transport Items)を管理する「RTIマネージャ」を提供中だ。今まで管理が行き届かなかったRTIの動きを可視化することで紛失や偏在を解消し、RTIの最適配置、最適在庫、投資効率を向上させることをめざしている。出荷貨物明細などの物流情報と紐付けることにより、RTIに積載した製品・商品の動きをリアルタイムに把握することが可能だ。
有家正博氏
  • EPCグローバルへの対応を視野に、スクラッチ開発でスモールスタート
経済のグローバル化で流通構造は国際化に向かい、サプライチェーンは年々高度化・複雑化する傾向にある。あらゆる企業が物流コストの削減を求められる中、1社単独による効率化対応には限界が見えつつある状況だ。これらの課題を解決するためには、企業間で物流情報をリアルタイムに共有し、的確な対応をとっていくことが不可欠になってきた。
そこで、三井物産と日本ユニシスは、両者の共同開発によって、様々なノウハウを融合させながら新しい物流システムを構築することをめざした。三井物産が創立以来130年以上培ってきたグローバル物流ノウハウと、日本ユニシスが持つEPCグローバル・ユビキタスIDセンターでの標準化や様々な実証実験・本番システム構築を通したRFID(*2)システムの構築技術を融合し、企業間をまたぐリアルタイムな物流情報の可視化を実現したシステムが「UNITRA」なのだ。
三井物産と日本ユニシスは、RFID技術を用いた物流情報システムを構築するにあたり、当初は既存の物流パッケージをベースとするカスタマイズ開発を検討する。しかし、技術面・コスト面に鑑みて、スクラッチ開発によるSaaSソリューションが有利であると考えた。
「我々の開発グループは、日本ユニシスにおいてASP型のビジネスサービスを一貫して手がけてきました。その中で、三井物産様と共同で事業企画を進めてきた日本ユニシス ビジネス企画部、商品企画部および製造ソリューション統括Pから『ASPのノウハウと、RFIDのノウハウを融合した物流情報プラットフォームを作りたい』というお話をいただいたのがプロジェクトに参加したきっかけです」とUSOL東京 共通利用技術部 第1グループ グループリーダーの有家正博氏は振り返る。
「グローバル展開をめざすUNITRAにとって、RFIDの標準化対応は避けて通ることができませんが、現状のマーケットではそこまで標準化が進んでいません。将来的に国際標準のEPC(Electronic Product Code)グローバルに対応することをめざしつつ、まずは個別のID構成を持つシステムをカバーすることが先決であると考えました。そこで、EPCグローバルへの対応を視野に入れながら、スクラッチ開発でスモールスタートする方向で話がまとまりました」(有家氏)
しかし、スクラッチ開発となると、開発期間の長期化やコストの増大は避けられない。また、システムのクオリティは開発者の経験とスキルに依存してしまう。そこで、これらのデメリットを解消するため、オープンソース(OSS)を用いて開発期間の短縮とシステムの標準化をめざした。
*1:SaaS(Software as a Service) インターネットを介してソフトウェア機能を提供するサービス。月額使用料を支払って利用するケースが一般的。 *2:RFID(Radio Frequency Identification) データの読み取り(書き換え)が可能なICを埋め込み、電波を使って情報の読み書きを行うことができるタグ(荷札)。

【OSSフレームワークの採用】日本ユニシスグループのJavaアプリケーション開発フレームワーク「Maia」を適用

  • Spring, StrutsおよびO/RマッピングツールのiBATISサポートが導入の決め手
OSSによるスクラッチ開発にあたり、コスト削減と期間短縮を両立しながら、完成度の高いソリューションを実現するために、日本ユニシスグループのJavaアプリケーション開発フレームワーク「Maia」(マイア)を適用した。
「Maia」とはSpring、Struts、Hibernateに日本ユニシスグループ独自の補完機能を実装したOSSベースのフレームワークだ。アプリケーションサーバにJBossまたは商用のWebLogic、データベースにはOSSのPostgreSQLまたは商用のOracle®を採用。日本ユニシスグループのオープン系システム基盤である「AtlasBase®」の中小規模システム向けプロダクトセット検証プログラムと連動しており、豊富なサービスメニューとサポートメニューを用意しているため、安心して開発に集中することができる。
村野葉月氏
Maiaを採用した理由を、有家氏は「Javaを使ったWebアプリケーションフレームワークであるSpringおよびStrutsを採用していることと、O/RマッピングツールとしてiBATIS(アイバティス)をサポートしていることが大きかった」と話す。別の開発案件でこれらのフレームワークを使っていたこともあり、自社や協力会社のエンジニアが新しい技術を覚えることなく開発に移行できることが最終的な決め手となった。
UNITRAの開発に際しては、日本ユニシス OSSセンターのエンジニアもプロジェクトメンバーに加わる。サポートを担当した総合技術研究所 OSSセンター 利用技術二室の村野葉月氏は、「Maia自体が新しいサービスなので、開発を後方支援する目的と同時に、ハードウェアやソフトウェアを組み合わせた日本ユニシス独自のシステム基盤「AtlasBase」を現場に適用する目的もありました。現場ならではの使い方を見ながら、Maiaの新バージョン開発にもフィードバックしています。Maiaの多言語対応は、UNITRAの要求に後押しされて導入を早めた一例です」と語る。
UNITRAの開発では、データベースサーバはMaiaで標準サポートされているPostgreSQLとOracleのうち、Oracleを採用している。その理由を、有家氏は「物流システムは高いパフォーマンスを要求するため」と話す。UNITRAで想定されるタグの数は650万件、1日のトランザクションは100万件にもおよぶ。さらにデータベースには過去3年半のICタグ情報を蓄積して、ICタグのトレーサビリティとあわせて管理しなければならない。将来性や運用・障害対策を考えるとPostgreSQLの実績では不十分と考えOracleの採用に至った。
データベースの採用に際して、村野氏は「Maiaでは、データベースのアクセス機能が切り替えられるので、案件の要件に応じて、PostgreSQLとOracleの切り替えが可能です」と柔軟性の高さを強調している。
  • 通信レスポンスを確保し、短時間で大量の情報を処理するためにMQを適用
Maiaを採用したもう1つの理由は、MaiaがアプリケーションサーバにJBossを推奨していたこともあげられる。物流拠点から上がってくる大量のデータを同期処理しようと思うと、レスポンスには長い時間がかかってしまう。通信レスポンスを確保し、短時間で大量の情報を処理するためには非同期処理を実現するMQ(メッセージキュー)が必要不可欠だ。MQを適用するためにはJBossが必要であり、JBoss に対応しているフレームワークはMaiaだった。
「物流拠点から上がってくるイベントには多くのICタグが含まれています。例えば100枚パレットがあれば100個のICタグが付いていますし、2000枚なら2000個のICタグが付いている。これらの大量のデータを同期方式で処理すると応答だけで数分かかってしまいます。そこで、大量のデータを一括して受け取り、キューイングによって非同期でデータの受け渡しを実行すれば、数秒でレスポンスを返すことができます」とUSOL東京 共通利用技術部 第1グループの永田俊秀氏はMQを適用した理由を語る。
イベント数が多くなれば多くなるほどMQによるレスポンスの短縮効果は大きい。また、エラー処理においてもMQは再スケジュール機能を標準装備しているため、自前で再スケジュールを設定する手間を省くこともできる。

【開発のポイント】納期遅れが許されない環境で短期開発を実現、運用後のトラブルもなし

  • Maiaだからできた短期間での開発
UNITRAの開発に要した期間は、論理設計工程から導入まで約8カ月、短期間での開発に成功している。
プロジェクトチームは、物流拠点から上がってきたデータを処理する「基盤開発」、RFIDタグによるRTIの在庫管理などの「業務系アプリケーション開発」、マスターデータを管理する「マスター開発」の3グループに分かれ、マスター開発の一部はグループ会社のUSOLベトナムでのオフショア開発を用いた。国内開発チームは協力会社のエンジニアを含めて約20名、オフショアチームは約20名、合わせて40名程度のメンバーでプロジェクトに取り組んだ。
菅井慎也氏
「UNITRAを導入する大手パレットメーカーが、新しいパレット工場を設立中でした。出荷のタイミングに合わせてカットオーバーする要望が寄せられていたため、スケジュールの遅れは許されません。納期厳守で開発ができたのは、Javaフレームを利用したMaiaがあったからといってもよいでしょう」(有家氏)
システム構成図の通り、各物流拠点で読みこんだICタグ情報は、EPCグローバルのALE規約に則ったデータフォーマットに変換され、SOAPによって「トレーサビリティフロントエンドサービス」に送られる。そこでイベントを1個1個のICタグに分割し、各データを上位レイヤーの「トレーサビリティバックエンドサービス」に転送。Oracleで構築したデータベースとデータをやり取りする仕組みだ。バックエンドサービスやデータベースの情報は、外接サービスや管理・分析サービスを介して外部と連携を図ることもできる。
「最も苦労したのはオフショアによるマスター開発です。特に成果物のレビューが大変でした。ソースのコメントはすべてベトナム語で書かれているため、検証時はコードをひたすら追いかけるしかありません。設計書通りにコーディングされてはいるものの、日本人のように"行間を読んで"という柔軟性は期待できませんから、細かく指示を出す必要があります。実装テストから結合テストまでをオフショア開発で行った結果、3〜4カ月かかりました」と、USOL東京 共通利用技術部 第1グループの菅井慎也氏は開発時の状況を振り返る。
また、UNITRAは、国際物流に対応するために多言語対応を行っている。表示項目、日付書式、数値書式など地域に依存するデータとタイムゾーンの2つを国際化。マスター情報としてユーザーごとのロケールを保持し、ログインしたユーザーにあわせて自動的にブラウザに表示する言語を切り替える仕組みだ。この機能があるおかげで、海外の企業は日本の物流拠点でも日本語ブラウザで自国の言語やタイムゾーンに合わせて表示できる。逆に、日本企業が海外の物流拠点において、海外のブラウザで日本語や日本時間で表示することも可能だ。会社名やユーザー名もユーザーロケールにあわせてマスターデータから取得して表示する機能も装備している。
  • 導入後のトラブルもなく、運用にかかる手間もほとんどなし
OSSフレームワークMaiaを使った開発は、開発期間の短縮と、開発工数削減の面で大きな成果を残した。2008年3月のカットオーバーから現在(2008年11月)まで、大きなシステム障害やトラブルは起きていない。また、Maiaで開発してみて改めてわかったことも多かったという。
「一般的なフレームワークのメリットと共通する部分はありますが、ログ出力機能、例外処理、ユーティリティなどの共通部品をゼロから作らなくて済みます。その結果、開発工数の削減につながりました。また、Java EEの標準的なアーキテクチャなので、Java開発者ならMaiaのアーキテクチャに短時間でなじむことができます。開発者を確保しやすいStrutsやSpringといったメジャーなOSSを採用している点もメリットです」(菅井氏)
「アプリケーションの構造がMaiaの中で規定されているため、開発全体の見通しがよくなります。ロジックやデータの受け渡しなどもすべて規約に準拠しているので、開発効率は飛躍的に向上しました」(有家氏)。

【今後の展望】適用範囲拡大とグローバル対応

  • 個別商品の管理に拡大したいがハードルは高い
物流情報プラットフォーム「UNITRA」によって、RTIに積載した製品・商品の動きをリアルタイムに捉えることができるようになった。今後は、RFIDを用いた個別商品の管理にも適用範囲を拡大していく考えだ。ただし、個別商品に対応するためには様々なハードルがあるという。
「現状の機能では、RTIのパレットに対して伝票番号を紐付けしています。個別商品にICタグを付けるとなると、管理するデータ量は今よりも膨大になり、現状のデータ管理方法では対応ができなくなるでしょう。個々にICタグを付けるとなると、別の仕組みを用意する必要がありますし、見せ方も当然変わってきます」と永田氏は予測する。
永田俊秀氏
個別管理をするとなると、商品マスターを用意しなければならないが、商品マスターをどこに確保し、その紐付けをどうするかも課題だ。システム内部に持たないとすれば外部システムとの連携をどうするか。UNITRAをSaaSで提供していくとなれば、外部サーバに用意した商品マスターとの連携・連結が視野に入ってくるだろう。
ビジネスサイドからは、「データを様々な角度で分析したい」といった要望も寄せられている。現在は、特定のUNITRAユーザーに必要な機能のみを提供している状況だが、今後はあらゆる物流ニーズで活用できる分析機能が必要である。1つのアプリケーションとして提供するか、ツールを使って自由に分析できる形にするかなど、残された課題は多い。
  • EPCグローバルへの対応
将来的には、物流システムの国際標準化対応も課題だ。開発当初の思想としてEPCグローバルへの対応を視野に入れているため、UNITRAはサービスコンポーネント「EPCIS」(*3)に準拠している。現在でもEPCISに準拠したフォーマットとデータ交換を行えば世界中の「モノ」がどのように動いているかを把握できるが、現状では「EPCIS」に準拠したシステムが稼働していないため、「つながる相手がいない」(有家氏)状態だ。
「今後は市場のニーズを探りながら、最終的にはICタグとUNITRAにつながったネットワークを使って、世界中のあらゆる荷物の動きが共有できる社会的なインフラの実現をめざしていきたい」と、有家氏は将来の展望を語っている。
*3:EPCIS(EPC Information Services) EPCグローバルが仕様を策定するICタグに紐付けられたモノの情報を登録・検索するためのサービス仕様。

事例のポイント

次世代物流情報プラットフォーム「UNITRA」の開発は、創立以来130年以上に渡って国内外の物流サービスを行ってきた三井物産と、ICタグに関する実証実験や安定的なシステム・基盤運用で実績を残してきた日本ユニシスのコラボレーションによって実現した。
開発のポイントは以下の通り。
  • グローバル展開をめざすUNITRAにとって、RFIDの標準化は避けて通ることができない課題だった。
    将来的に国際標準のEPCグローバルに対応することを視野に入れながら、スクラッチ開発でスモールスタートをめざす必要があった。開発期間を短縮し、低コストで構築することを目的に日本ユニシスグループのJavaアプリケーション開発フレームワーク「Maia」を採用する。
  • MaiaはOSSベースのフレームワークで、JBoss、Struts、Spring等に対応。
  • Maiaを採用した理由は、Javaを使ったOSSベースのアプリケーションフレームワークであるSpringおよびStrutsを
    採用していることと、O/RマッピングツールにiBATISをサポートしていること。開発を担当したプロジェクトチームは、これらのフレームワークを使った開発経験があったため、エンジニアが新しい技術を覚えることなく開発に移行できた点が大きなポイントだった。
  • 高レスポンスを確保するためにMQを適用した。MQを利用するためにはJBossが必要であり、
    るフレームワークはMaiaだったことも採用の理由となった。
  • データベースは、650万件のICタグ数と、1日100万件にもおよぶトランザクションに対応するため、
    パフォーマンスを重視。Maia標準のPostgreSQLとOracleのうち、Oracleを採用した。
  • 国際物流に対応するために多言語対応を実現。マスター情報としてユーザーごとのロケールを保持し、
    ブラウザの言語に関係なく自動的に言語を切り替えて表示させる仕組みを構築した。会社名やユーザー名もユーザーロケールにあわせてマスターデータから取得して表示する機能も装備している。
  • ログ出力機能、例外処理、ユーティリティなどの共通部品をゼロから作らなくて済むため、
    開発工数の削減が実現した。また、Java EEの標準的なアーキテクチャなので、開発者を確保しやすく、教育にかかる時間やコストも削減できた。ロジックやデータの受け渡しなどもすべて規約に準拠しているため、開発効率の向上につながっている。
  • EPCグローバルへの対応を視野に、サービスコンポーネント「EPCIS」に準拠済み。
UNITRAのソリューションイメージ図
UNITRAのソリューションイメージ図
UNITRAのシステムイメージ図
UNITRAのシステムイメージ図

*UNITRA、Maia、AtlasBaseは、日本ユニシス株式会社の登録商標です。

*OracleとJavaは、Oracle Corporationおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標または商標です。

*その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。