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1996年11月発刊 Vol.16 No.3 通巻51号
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設備安全対策
-- 小 松 広 -- ▲目次
1. は じ め に
コンピュータシステムの安定稼働を確保するためには,コンピュータが要求する付帯設備の条件を維持するための保守が重要である.老朽化した付帯設備は新しいものに交換するという考え方があるが,今日の設備投資が押さえられている状況で,既設の設備を安定稼働させようという要求も強くなっており,保守の重要性が増している.
また,コンピュータシステムの24時間365日稼働の要求,運用コスト削減のためのコンピュータ室無人化の要求が増えてきている.人間の視覚,聴覚,臭覚による異常の早期発見と対処を,無人化を推進するにあたり,どのような対策をとれば良いか運用関係者にとって重要な課題である.
加えて,平成7年1月の阪神・淡路大震災を契機に災害対策の見直しが叫ばれており,コンピュータおよび付帯設備の災害対策についても早急に対応しなければならない課題である.
本稿では,コンピュータ付帯設備の安全性を確保するための保守技術,運用,対策について述べる.
2. 付帯設備における保守と運用
2.1 保 守 技 術
コンピュータシステムの付帯設備の保守を全く行わなければやがて使用不能になる.費用効果を考慮してどのような考え方に基づいて設備の管理を行うのが適正なのかを見極める必要がある.
以下に付帯設備の特徴に合わせた設備管理の基本的な考え方とそれを実現するための保守技術について述べる.
保守方式は,時間基準保守方式と条件基準保守方式に分類される( 図1).
図1 保守方式
2.1.1 時間基準保守方式
時間基準保守方式とは保守する時期を決めて行う方式である.
- 1) 定期点検
- 設備全体または構成要素にストレス(温湿度等の環境変化,過大応力,繰り返し応力等)が作用すると,性能劣化,異音,温度上昇,漏れ,腐食,振動等の初期異常兆候が現れ,それが進行すると故障に至る.定期点検では,実施する時間(周期)を決め,決められた点検の項目を定量的に把握し,設備の劣化がどの程度進行しているかを判断するのを主にしており,故障に至る前兆を何らかの形(たとえば,鉛蓄電池の電解液比重等)で摘出している.
定期点検により前兆が現れたなら,予防保守が必要になってくる.
- 2) 定期修理
- 定期修理,いわゆるオーバーホールである.設備が稼働中の点検では,点検可能な範囲が限定されたり,もし劣化の傾向が発見されたとしても,設備を停止させないと修理できないことも少なくない.オーバーホールは,設備全体を停止し,点検や部品の交換等を行い,できるだけ初期の状態に近づけて運転を再開するのであるが,再び組み立てるのには膨大な費用と時間を要し,実質的に効果が現れたと判断しにくいことが多い.
- 3) 予防保守
- 設備の各部品の寿命を予測し,故障に至る前に新しい部品に交換する保守のことで,先手を打つことによって故障を未然に防ぐという意味からPM(Preventive Maintenance)といわれ,予防保守と訳される.
故障発生前の適当な時期に修理ならびに更新,すなわち事前に取替えを行う方法が付帯設備の保守に多く用いられている.その方法には,時間を基準にして,一斉交換方式と部分交換方式の両方式がある.
- 一斉交換方式
一斉交換方式は,定められた時間(時期)ごとに一斉に交換する方式で,途中で故障してもその部分だけを事後保守で交換し,定められた時間(時期)になったら,途中交換したものも含め一斉に交換する.この方式は部品が比較的安価で多量に使用されているような場合に用いられる.
- 部分交換方式
部分交換方式は,定められた時間(時期)ごとに部分的に交換するが,もし途中でその部分で故障があれば,その部分のみ事後保守で交換し,次回からは定められた時間(時期)ごとに交換する方式で,比較的高価な構成部品やメーカーの統計的データに基づき交換周期が決まっている部品(たとえばバッテリ,コンプレッサ等)に用いられる.この方式では,部品ごとに使用時間を記録するなど,一斉交換方式と異なって識別する必要がある.
2.1.2 条件基準保守方式
条件基準保守方式は,時間や決められた項目だけを基準に作業を進めるのではなく,設備全体の劣化進捗状態に応じて保守を行うものである.
- 1) 予知保守
- 予知保守は,付帯設備全体の状態を定量的に調査・測定することにより,その状況を評価・判断して将来の影響を予測するとともに必要な対策を実施する方式である.設備診断技術の最終目標は余寿命推定にあるが,現状はこの推定が可能な判定装置はまだ少ないといわれている.
- 2) 事後保守
- 事後保守は,故障したら保守修理する方式であり,故障により設備が完全に停止した時に修理する条件で保守する方式である.
保守の基本は,付帯設備の状態を正確に把握し,付帯設備維持の正常化および先手を打てる機会を失わないようにすることにある.付帯設備に関連する各種情報を保守部署で一元的に集約のうえ適切な分析・評価を行い,コンピュータシステムの運用と連携をとり,効率的な保守活動を推進することが必要である.
付帯設備の使用時間(年数)や付帯設備の特徴に合った,最適な保守技術を採用することにより,安全性が確保され「24時間365日稼働」「無人化運用」が実現できると考える.
2.2 運 用
コンピュータシステムの付帯設備は,コンピュータシステムを構成する機器の一部と考え,付帯設備の故障によりコンピュータシステムが停止することを認識する必要がある.
付帯設備は技術的進歩により故障が少なくなっているが,設備の劣化により致命的な影響を与えたり,機能低下をもたらす場合があるため,定期的に劣化の予知や予測を行い,重大故障を未然に防止する必要がある.
また,コンピュータ室の無人化を推進するためにも異常状態が発生した時の対応について検討する必要がある.
- 1) 付帯設備の構成と保守方法
- ほとんどの付帯設備は点検が義務付けられており,必要に応じてコンピュータを停止せざるを得ないケースもある.24時間365日の稼働を求められている現在,付帯設備を停止せずに点検をするためには,設備のバックアップを装備するのが望ましいが,限度がある.コンピュータの保守時間とも連動し,付帯設備の一義的な点検スケジュールを調整し,固有の点検スケジュールを考えなければならない.
- 2) コンピュータ室の無人化対策
- 一般的に設備機器は,機器の動作状態の監視,計測点の監視,保護装置の監視を行っており,設備や機器の故障や異常に対して緊急処理を必要とするものと,直ちに処理する必要がないものに分類される.緊急処理が必要なものを重故障と呼び,後者を軽故障と呼んで区別している.重故障に対しては設備を緊急に停止し,軽故障に対しては,緊急に停止せずに継続運転が可能である場合が多いが,重故障,軽故障を区別するかどうかはビルの設備内容や,運用方針によって異なる.たとえば,ある電源系統において故障や異常信号を並列に接続し,系統内の故障や異常の内容を区別せずに一括して監視する方法があるが,系統内の故障・異常信号を別々に監視する方法もある.
空調設備は故障が発生しても時間的余裕があるため,予備機運転等の対応方法を考える必要がある.
以上のような対応方法があるが,予備機の運転にしても,緊急停止にしても異常が発生した時は通報する必要がある.以下にその方法について述べる.
- 非常通報装置を使用する.
この装置は,あらかじめ通報先や通報メッセージを登録しておき,異常が発生した時に通報しメッセージまたは音声により異常概要を知ることができる.
- 環境監視サービスを利用する.
コンピュータシステムのハードウェアに装備されている統合システム監視制御装置(SFCPまたはSCJ等)による常時監視を行い,異常が発生した時,監視センターに通報する方法である.当社ではこの環境監視サービスを行っており,利用を推奨する.
- ポケットベル呼び出し機能を利用する.
コンピュータシステムのハードウェアに装備されている統合システム監視制御装置(SFCPまたはSCJ)による常時監視を行い,異常が発生した時あらかじめ登録されているポケットベル番号を呼び出す.
無人化を推進するにあたって,付帯設備において故障や異常が発生した時の対応は,設備の構成を把握し,運用方針を決定する必要がある.また,このような監視装置,サービスを有効利用すべきであり,対応の遅れによる重大事故を防止するため,誰にでも障害対応ができるマニュアルを常備するべきである.
2.3 電源設備の保守と安全対策
2.3.1 保 守
- 1) 受変電設備
- 受変電設備における保守の現状は巡視と定期点検が行われており,巡視では人間の五感による点検も行われている.
定期点検は普通点検と細密点検に分かれ,普通点検では外部から測定器を使用した点検を行い,細密点検では内部を分解し部品の点検や測定試験等を行っている.
受変電設備は,その周囲温度,湿度,雰囲気等の設置環境にもよるが,通常15〜20年から磨耗故障期に入ると考えられており,故障率が上昇してくるのは避けられない.また受変電設備の故障は建物,設備全体に大きな影響を与えるため,磨耗故障期に入る前に設備診断技術を利用した予知保守を行い,延命化を図る必要がある.
受変電設備における最近の診断技術の動向は以下の3項目に分類される.
- トレンド監視
- 動作時間,変位計測等の動作特性を計測し,異常の兆候を監視する.
- ケーブル等の絶縁特性を監視する.
- 余寿命推定
- 油入機器(変圧器)の油組成分析による劣化度の計測と余寿命推定.
- 故障判定・故障位置判定
- 各種センサによる活線状態での部分放電,局部過熱等の検出.
- 熱画像の温度分布特性による判定.
診断技術の最終目標は余寿命推定にあるが,現状はこの推定が可能な判定装置はまだ少ないと言われている.
- 2) CVCF,UPS
- CVCF(定電圧定周波電源装置),UPS(無停電電源装置)はコンピュータシステムに安定した電源を供給するために重要な装置であり,保守を行う時にもコンピュータシステムに電源を供給できるように,保守バイパス機能を装備している機種の選定が必要である.
CVCF,UPSの保守は,受変電設備と同様にトレンド管理とメーカの統計的なデータを利用するのが有効である.
- 3) 自家発電設備
- 自家発電設備は,設置場所の環境,使用燃料,潤滑油,運転回数等により保守の間隔や部品の耐用時間(年数)を一律に決められないが,データの変化や推移により異常を発見するトレンド管理とメーカの統計的なデータを利用するのが有効である.
また,自家発電設備は通常は使用されていないため,緊急時,確実に稼働できるように定期保守で確認する必要がある.
一般的に停電時,コンピュータシステムはUPSにより5〜10分程度バックアップされているが,コンピュータ室の空調機は停止し,5分程度で稼働環境の温度上限に達してしまう.コンピュータシステムを継続稼働させるためには,速やかに自家発電設備の起動と空調機の再起動を行う必要がある.
- 4) 蓄電池設備
- 蓄電池の電解液は,蒸発や充電電流による水の電気分解によって電解液中の水分が失われ,しだいに減少するため精製水の補給が必要である.補水の周期と量などの推移により異常を発見するトレンド管理とメーカの統計的なデータを利用するのが有効である.
蓄電池設備の期待寿命(耐用年数)は,放電回数,充電電圧と周囲温度に大きく影響される.周囲の平均温度が10℃高い(25℃と35℃を比較した場合)と寿命が半分になるため,できるだけ低めにする措置が必要である.
表1に電源設備を設置してからの経過年数別に有効な保守技術についてまとめた.
表1 電源設備の保守技術

2.3.2 安 全 対 策
安全対策は,通商産業省機械情報産業局が監修した「電子計算機システム安全対策基準解説書」,金融機関であるならば財団法人金融情報システムセンターが発行している「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準解説書」を基準に検討する必要があり,本項ではとくに自然災害について述べる.
付帯設備が被る自然災害としては,火災,地震,水害,雷害が挙げられるが,電源設備が被災するとコンピュータシステムや他の付帯設備にも波及する恐れが多分にあり,復旧には長時間を要し,費用も莫大になる可能性があることから,災害に対しては十分な検討と対策が必要である.
- 1) 火 災
- 「電子計算機システム安全対策基準解説書」から火災に対する対策基準の主な項目[5]を示す.
- 自動火災報知設備を設置すること.
- 配線が防火壁等を貫通する部分およびこれに近接する部分には,延焼防止および防煙の措置を講ずること.
- 空調設備等のダクトが室内を貫通する部分には,防火,防煙措置を講ずること.
- 漏電警報器または漏電遮断器を設置すること.
コンピュータシステムの電気系統は漏電警報器を採用し,瞬時に電源を遮断しないようにすることが望ましい.
- 2) 地 震
- 阪神・淡路大震災は,電源設備の耐震に対して教訓を残すとともに,貴重なデータを与えてくれた.調査企業により被害状況は違うが,教訓になるものを述べる.
- 電力引込設備
- 地中引込みより架空引込みが被害率が高い.
- 電力会社からの引き込みを,常用と予備の2系統にする.
- 受変電設備
- 変圧器等の基礎・架台の部位周辺に被害発生が多いので,耐震の強化が必要である.
- 変圧器を複数台設置し,代替器によりバックアップ運転や縮退運転を可能にする.
- キュービクル型より開放型が被害率が高い.
- キュービクル型の設置階は,高層階の被害率が高い.
- 自家発電設備
- 設置階は,屋上および地下階に被害が多く,屋外は少ない.
- キュービクル型より開放型が被害率が高い.
- 機器本体より付帯設備の燃料・冷却水系と補機に関する被害率が高いため,冷却水を水道水で行っている場合は循環方式にする.
- 水を使用しないラジエータ方式やガスタービン方式が有効
- 蓄電池設備
- 電漕の移動,亀裂による電解液漏れを起こした.予備蓄電池を含め耐震の強化が必要である.
- 幹線設備
- 超高層棟に被害が少なく,中・低層棟に多い.
- 水平配線の被害が非常に多いので,とくに水平配線の耐震強化が必要である.
- 3) 水 害
- 電源設備が水害の被害の影響を受けるケースは,津波・洪水・出水による天災,食堂の調理場・茶汲場・便所からの水漏れ・雨水の侵入,空調用冷凍機・冷却塔用給水管の破損・老朽化による水漏れなどが考えられる.
以下に通産省「電子計算機システム安全対策基準解説書」の対策基準の主な項目[5]を示す.
- やむを得ず水の被害を受ける恐れのある場所に電源設備を設ける場合には,水の侵入の防止対策または漏水検知器を設置する.
- 屋根や外壁を貫通する給排気口,ダクト,配管,配線等の周りは防水加工を完全に行う.
- 電源室の直上階は防水加工を行う.
- 電源室の床面に水勾配,排水溝等を設ける.
- 4) 雷 害
- 誘導雷サージインパルスは,対接地間電圧で10kV以上の高圧であり,アーク放電により放電電流が流れる経路の部品がすべて破壊される.また,線間電圧も数百ボルトを示し,引込みに近い部品が破壊されるため,接地と避雷器の二つを合わせた対策が必要である.
- 接 地
接地は人体保護,機器の保護,雑音・ノイズ防止,信号回路の一部,雷防護等の目的で用いられ,国内の制定では目的によって必要な接地抵抗値が定められている.
雷防護で用いる接地は,接地抵抗を小さくしサージ電流をすばやく地中に逃がし,機器への影響を受けにくくする必要がある.とくに,建物の下方で生じる雷によって側撃雷を受ける恐れのある高層ビルでは,接地抵抗値について十分配慮する必要がある.
- 避 雷 器
最も基本的で効果的な方法で,配電線からの侵入雷サージを大地へ逃がし建物内設備への侵入を低減するため,電力受電端に避雷器を設置する.配電線用避雷器は一般的に大容量であり,その放電開始電圧,制限電圧が高いため,低圧側のサージ耐量が小さい部分には2次防護対策が必要である.
また,短絡事故を起こさせないようにするため,万一避雷器が故障となっても開放する仕様のものが望ましい.
接地を行い,避雷器を取付けたからといって完全に防雷ができたわけではなく,配電線の地下化等の総合的な対策が必要である.
2.4 空調設備の保守と安全対策
2.4.1 保 守
空調設備を構成する機器は,一般に建築物に比較して耐用年数が短く,取り替えや修理のための運搬や搬入に莫大な費用を必要としたり,ときには修理不能となったりすることもある.このため定期点検や予防保守を行い,機器の耐用年数の低下を防止するように努めたり,故障発生を防止している.
空調設備を設置してからの経過年数別に有効な保守技術について表2にまとめた.
表2 空調設備の保守技術

空調設備の機器は,ほとんど修理しながら使用する機器からなっており,理想的な予防保守を行えば故障率が極力押さえられ,安定稼働が確保される設備である.しかし,保守作業や交換部品の良否により故障率が増加する場合がある.
空調設備は使用水の水質管理を行わなければならないが,その目的は,配管・バルブなどの付属品,設備構成機器(冷却塔,空調機,ドレイン等)に対して防錆・防食を行い,スケールの付着と生成を防止することにある.とくに,コンピュータ室用空調機は加湿により,一般事務室空調機よりスケールが付着し易いため,きめ細やかな定期保守が必要である.
また,コンピュータ室に設置している空調機は一年中稼働しているため,一般ビルの空調設備に比べ比較的寿命が短いことや,フィルタは用紙類の埃により目詰まりし易いため,きめ細やかな点検が必要である.
2.4.2 安 全 対 策
- 1) 火 災
- 空調設備における火災対策は,とくに冷却水の水漏れによる漏電対策と近接した場所よりの波及火災に対する対策が必要である.
- 漏電対策としては,他に波及しないように漏電遮断器を設ける.
- パッキン,フィルタは不燃材料を使う.
- ・断熱材等は有毒ガスを発生する材料を使用しない.
2) 地 震
阪神・淡路大震災による空調設備の被害状況と教訓を述べる.
- 機 器 類
- 屋上に設置している室外機,冷却塔,大型冷凍機,ポンプ等に移動・転倒の被害が集中している.これに伴い,配管関係にも被害が出た.中高層ビルの場合では剛構造になっており,上層部に行くに従って応答加速度は増幅される.超高層ビルの場合は柔構造でできており,振幅(変位)が大きくなる.つまり,架台を設置しアンカー止めで頑強にしないと移動・転倒することになる.
- 空調機は重量物であるので,架台を建物床スラブに固定する.
- 配管・ダクト設備
屋上配管や建物導入部における被害が大きく,通産省「電子計算機システム安全対策基準」の対策[5]が有効である.
- 機器,とくに防振基礎上の機器に接続される配管は,伸縮継手(変位吸収継手)で接続し,その近傍の床スラブ等に耐震支持材で固定する.
- 主管から分岐した枝管,エキスパンションジョイント部を横断する配管,壁を貫通する配管等には,伸縮継手を使用する.
- 壁,床,天井に沿う配管,ダクトは,適切な間隔で振れ止めによる耐震支持を行う.
- 配管,継手等自体の耐震強度を確保する.
水冷式の空調機は配管が破損し漏水した場合,配管を修復後水の補給が必要となるが確保が難しく復旧処理に時間と費用を要するため,貯水槽を用意するか空冷式が望ましい.
- 水害・雪害
雨水や雪等が外気取入口,排気口およびこれらの取り付け位置から侵入するのを防止するため,次の対策を行う.
コンピュータ室用空調機は冬期でも稼働させるため,屋外に設置している機器(冷却塔,室外機)が雪により埋もれるのを防止したり,冷却塔や配管等の凍結防止策が必要である.
2.5 通信設備の安全対策
通信設備における安全対策としては,とくに落雷に対する対策について述べる.
電源設備でも述べたように避雷器を設けるが,この時,パルス信号回線用,アナログ信号回線用,電源回線用等の用途に合わせたものを設ける必要があり,機器本体だけでなく通信線・配電線を含めた総合的な対策が必要である.
雷防護素子の高性能化のほかに通信線の光ファイバ化や配電線の地下化等も合わせて進めていくことが必要である.
2.6 消火設備の保守
コンピュータ室や付帯設備室における消火設備は一般の事務室とは異なり,空調機や機器の冷却ファンにより,発生熱が希釈・拡散される.このような環境下では,異常発熱による異臭や発煙その他の異常を早期発見することが難しいため,一般ビル用の煙感知器の100倍程度のものや1,000倍の感度をもつ超高感度煙検知システムを採用する必要がある.
自動火災報知設備には6か月に1回の外観・機能点検と1年に1回の総合点検が法定点検として義務づけられており,これらの点検は人手によって行われていた.感知器の自動試験機能を採用することで機器異常の早期発見が可能となり,点検費用の軽減が図れる.
また,消火設備についても6か月に1回の外観・機能点検と1年に1回の総合点検が法定点検として義務づけられているが,総合点検で行う作動確認での注意事項を述べる.
コンピュータ室や付帯設備に使用されている消火設備は,ほとんどガス系が使用されており,テスト時(ハロンガス消火設備ではハロンガスの代替としてチッソガスが使用されている)には配管に溜まっていた埃が吹き出てくるため,作動させる前にコンピュータ機器や付帯設備機器の上に防塵のための養生が必要である.
ハロン1301消火剤の生産中止に伴い,代替消火設備の選定が必要であるが,ガス系代替消火設備の一つであるハロン37(呼称HFC-227ea,商品名FM200)は,成層圏のオゾン層を破壊せず,地球温暖化の指標である100yr.GWP(100年地球温暖化指数:100年経過した時その影響が同等となる二酸化炭素の重量)がハロン1301の半分以下である.消火原理は,ハロゲン化物消火剤が炎に接触することで反応し,遮断を行い燃焼を抑制している.
3. コンピュータ室の耐震設備について
付帯設備における地震対策はすでに述べているので,ここではコンピュータ室の地震対策について述べる.
地震対策の基本は機器の移動・転倒や端末機器の落下を防止し,オペレータなどの避難通路を確保して人身の安全を図り,物的損害を最小にとどめ,システムの早期再開ができるようにすることである.
3.1 基 本 方 針
- 人身の安全の確保
- コンピュータ機器の保護
- コンピュータ用付帯設備の保護
- データ・ファイルの保護
- 什器,備品の保護
- 内装の保護
- (建物)
3.2 施 策
- 1) 避難通路の確保
-
- フリーアクセス床の避難通路は,コンクリートスラブや支持脚に固定等の補強を行う.
- 避難通路に面する機器,什器,キャビネット,シート棚等の転倒防止策として床,柱等に固定する.
- 天井より落下の危険性のある照明器具,天井材,アネモ等に落下防止策を施す.
- 蛍光テープまたは夜光塗料により,停電時でも避難通路の位置が確認できるようにする.
- 避難通路および同出口の誘導灯を設置する.
- 非常灯を常備する.
- 一時避難場所を指定し,関係者に徹底する.
- 避難訓練を定期的に実施する.
- 2) コンピュータシステムの機能維持
-
- フリーアクセス床の倒壊防止策として床支持脚を補強する.
- コンピュータ機器の転倒防止策として,機器を直接または間接的にコンクリートスラブに固定するか,免震工法の床を採用する.
- 付帯設備(電源機器,空調機器等)の転倒・移動防止策として,床,柱,壁,架台等に固定する.
- データ保護のため,キャビネット類・棚類の転倒防止策として,柱,壁,コンクリートスラブ等に固定する.
- 3) 二次災害の極小化
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- コンピュータ室およびデータ保管室は一つの防火区画とし,他室からの延焼防止策を講ずる.
- ビル用空調ダクトが,コンピュータ室およびデータ保管室に配置されている場合は,火災発生時にダクト内のダンパーが自動的に閉じる設備にする.
- コンピュータ機器付近に転倒の危険性があるキャビネット,ロッカ類は配置しない.
- 外窓付近には,転倒の危険性がある機器,什器,備品類を配置しない.(転倒物が窓ガラスを破り外へ落下したり,ガラスの破片が落下する恐れがある)
- 非常電源遮断スイッチをコンソールと非常口に設け,1回の操作でコンピュータ機器,空調用電源等の電源を遮断できるようにする.
3.3 地 震 対 策
以下に,免震構造のフリーアクセス床を採用していないコンピュータ室における地震対策について述べる.
- 1) コンピュータ室フリーアクセス床の地震対策
- フリーアクセス床は,固定しておかないと同一フロア内で異なった波状の揺れが発生し,一部の床のはずれにより雪崩のように倒れ落ちる.
機器がロッキング(左右に揺れる)すると,機器の支持脚がパネルの端にあった場合,支持脚が支点となりパネルの片方が持ち上がり,パネルが戻ろうとする時,元の位置に戻らず隣のパネルの上に重なってしまい支持脚部パネルが破損し,パネルの落下により機器が転倒することもある.
以上のことを防止し,被害を極小化するためフリーアクセス床の補強が必要で,次のような方法が用いられている.
- 支柱連結方式(根がらみ方式)
角パイプ,平板鋼,またはターンバックルの補強材を用いて支柱脚を連結し,補強材の終端部分を壁,柱または支持端末受けに固定する.
- ローリング方式
支柱連結方式の一種ではあるが,支柱の底部にステンレス鋼製ボールが取り付けてあり,支柱に柔軟性を持たせている.
- 支持脚補強方式
支持脚にL形フレームの補強金具を取り付け,その金具の中央部をスラブに固定する.
- スナップ・オン・ストリンガ方式
支柱の上部に補強バーをビスにて取り付け,支柱同士を連結する.
- 支柱を太く,脚板を広くしてヒルティを打ち込む.
- 床の四隅をボルトにて固定する.
- 2) コンピュータ機器の地震対策
-
- 機器耐震の考え方
機器の形状,重心および重量により相違があるが,当社の実験結果および阪神・淡路大震災による当社機器の挙動から,次のことが言える.
当社機器が正常稼働する安全限界値は地震加速度250galであり,これを超える加速度を想定する場合には移動・転倒の防止策が必要になる.
機器が転倒する加速度は,実験結果および3方向の揺れを考慮すると重心の高い機器は400galが限界値であり,また400gal以下においても移動・ロッキングが発生するため,地震対策を計画するにあたり床応答加速度を,
・400gal未満
・400gal以上
の2通りに分けて検討する必要がある.
人身の安全を第一に考えた機器の地震対策が必要である.
- 耐震施工方法
機器耐震を施工するにあたり,以下の点に留意する.
・機器の形状・重心位置・重量等
・機器の脚部の構造と設置条件
・機器の重要度
一般的な耐震施工方法を示す(図2(a)〜(e)).

(a) ストッパー方式 i | 
(b) ストッパー方式 ii |

(c) 底辺拡大方式 |

(d) プレート固定方式 | 
(e) ワイヤー固定方式 |
4. お わ り に
コンピュータ付帯設備の安定稼働には保守が不可欠であることを述べたが,コンピュータシステムの「24時間365日稼働」等により保守の実施環境は必ずしも良好とは言えない.計画的な保守を推進していく上で,設備診断技術の最終目標である余寿命推定の実現が待たれる.
- 参考文献
- [ 1 ] (株)オーム社“電設工業”1994年5月号,1995年5・6・12月号.
- [ 2 ] 大島榮次“設備保全の手引”.
- [ 3 ] 社団法人空気調和・衛生工学会“空気調和・衛生工学便覧II巻”.
- [ 4 ] 福富秀雄“雷防護技術ガイドブック”.
- [ 5 ] 社団法人情報サービス産業協会“電子計算機システム安全対策基準解説書”.
- [ 6 ] 財団法人金融情報システムセンター“金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準解説書”.
- [ 7 ] 日本ユニシス“コンピュータ室の地震対策ガイド”.
執筆者紹介
小 松 広 (Hiroshi Komatu)
1952年生.1970年県立勿来工業高校機械化卒業.同年日本ユニシス(株)入社.客先カストマーサービスに従事,現在設備システム事業部設備企画室に所属.

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