掲載日:2008年7月31日

特集:「仕事と生活」が共存する社会へ。パク・ジョアン・スックチャ×松岡 功

「ワーク・ライフ・バランス」を経営視点・戦略視点で捉えることで新しい時代の組織や働き方が見えてくる。

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企業にも個人にも経済的メリットをもたらすワーク・ライフ・バランス

松岡
昨年12月に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」とその推進に向けた行動指針が、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の合意によって策定されたこともあって、日本においても「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が注目を集めるようになってきました。
ただ、日本ではまだ多くの場合、この言葉は「女性のための育児支援」や「仕事をほどほどにして余暇を楽しむこと」とやや狭小的な受け止められ方をしているように思います。早くからワーク・ライフ・バランスに着目してこられたパクさんは、その本質的な意味をどう捉えておられるのですか。
パク
ワーク・ライフ・バランスという言葉は多様に解釈されていますが、私がいろいろな情報を調査・分析してみたところでは、「仕事と生活や家庭を共存させながら、もっている能力をフルに発揮して質の高い仕事を担う」という概念として、1980年代後半に米国から広まっていったと感じています。その概念を具現化したのは、まさしく同時代に起こったIT革命でした。IT革命によって世界の社会・経済が激変し、従来の「成功の方程式」が崩壊したのです。
米国はその変化に素早く対応し、技術だけでなく、企業での働く環境や働き方、そして組織風土さえも劇的に変え、再び経済発展を果たしました。そのなかで、優秀な人材の確保を目的に、ワーク・ライフ・バランスをコンセプトとする新しい人事制度や働き方が導入されるようになりました。優秀な人材ほど「仕事と私生活・家庭の共存」を望んでいることを企業が気づいたことで、どんどんと積極性を高めていったのです。
ですから、ワーク・ライフ・バランスは性別や年齢を問わず「働く人すべての問題」であり、仕事より余暇を優先するといった類の話ではなく、働き方の革新を図ることに本質的な意味があります。
松岡
パクさんご自身がワーク・ライフ・バランスに着目されたきっかけは何だったのですか。
パク
ワーク・ライフ・バランスという言葉が使われるようになる以前、仕事と家庭の両立を図る「ワーク・ファミリー・バランス」という言葉がありました。私の場合は、その実体験が現在の仕事につながっています。
当時、米国と日本で外資系企業に勤めていた私は、アジア各国・地域にも頻繁に出張し、その間に二人の子どもを産み育ててきたのですが、いわゆるワーキングマザーとしていい仕事をしようと思っても、日本は海外に比べて非常に働きづらかった。当時は何の支援制度もありませんでしたから。
とはいえ、経済的な理由からも仕事を休むわけにはいきません。そこで海外では定着しはじめていた「フレックスワーク(柔軟な働き方)」を求めて会社と交渉しました。その時に感じたのが、会社側も優秀な人材は確保しておきたいのだな、ということです。当然ですよね、優秀な人材は会社の利益を生むわけですから。つまり、企業にとってフレックスワークの導入は経済的メリットがあるわけで、私のようなワーキングマザーだけでなく、社員全員の働き方にも大きな影響を及ぼします。
そう考えていくと、先ほどお話しした従来の成功の方程式が崩壊した時代背景も含めて、日本人の働き方を抜本的に革新する必要があるという問題意識が芽生えました。その時に、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が私の頭の中にスッと入ってきたのです。
パク・ジョアン・スックチャ氏の写真 松岡 功の写真

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