掲載日:2010年9月22日

特集:「強い経営」の秘密に迫る。対談:加賀見 俊夫 池上 彰

脈々と受け継がれてきた哲学と一貫した企業理念が卓越したソフト力を生み出す。

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独自の方針で人材を育成し従来にはなかったサービスを実現

加賀見
もう1つ、成功の要因としてあげるならば、人材です。サービスの品質を大きく左右するのはやはり人ですから、教育には力を入れています。
池上
人材教育に関してはどのような方針をおもちですか。
加賀見
30年前、東京ディズニーランド開園に備えてキャスト(従業員)を募集した際、レジャー施設の経験者は一人も採用しませんでした。なぜなら、私たちはそれまで日本にあった「遊園地」ではなく、あらゆる世代の人が五感で楽しめる日本初の「テーマパーク」をつくることが目的だったからです。しかし、経験者だとこうした新しい価値観を伝えても、つい自分のやり方に戻ってしまいがちなのです。
池上
まっさらな状態から身につけた方が効果的だということですね。
加賀見
はい。白紙のところから当社に必要な人材像を描き、育てていく。これがキャストの能力を引き出すうえで重要なポイントだと考えています。
池上
キャストの教育において、とくに強調なさっていることはありますか。
加賀見
まず、「CS(顧客満足)=ES(社員満足)」という考え方です。ゲストが喜ぶ顔を見ることが社員の満足につながり、逆にいえば、自分たちが満足するためにはゲストにもっと満足していただくことが必要だということです。もう1つ、「100マイナス1=0」という考え方も教えています。
池上
どういう意味でしょうか。
加賀見
サービス業は、100人のうち、たった1人が失敗すれば残り99人がどんなに頑張ってもゼロになってしまう、ということです。すべてのキャストのサービスレベルがゲストの期待以上でなければ意味がないわけです。
池上
そうした人材教育の結果、従来の日本にはなかった「東京ディズニーランドのサービス」が生まれたのですね。入園した瞬間から広がる夢の空間は、アトラクションなどのハード面を整備するだけではだめで、人が支えるソフトがあってこそ実現するということでしょうか。
加賀見
仰るとおりです。さらに我々は、キャストからの一方通行ではなく、ゲストとの双方向のコミュニケーションが、高品質なサービスにつながるものと確信しています。
今でこそ、接客業において「コミュニケーション」という言葉は当たり前に使われますが、開園当時はほとんど浸透していませんでした。こうしたなかで東京ディズニーランドは、日本で初めて「いらっしゃいませ」とあいさつするのではなく、「こんにちは」「今日は誰と来ましたか?」などゲストと対話することで、コミュニケーションを深めてきたのです。
池上
そういえば、最近はコンビニエンスストアでも店員さんに「こんにちは」と声をかけられるようになりました。
加賀見
そういう意味では、我々が日本のサービスのあり方を変えてきたといえるのかもしれません。
加賀見 俊夫氏の写真 池上 彰氏の写真

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