鼎談

掲載日:2017年5月

破壊的イノベーションを生み出すために。

日本企業の強みを活かした“皆が主役になれる”ビジネスエコシステムと
失敗を恐れぬ文化の醸成が
イノベーション創出の可能性を拓く。

世界で賞賛される日本企業とリーダーシップ

福島
佐藤さんのご著書「ハーバードでいちばん人気の国・日本」で紹介されているように、世界中のエリートが集まる米国ハーバードビジネススクールでは、日本の企業やリーダーを教材とする授業が増えていると伺いました。なぜ今、日本企業への賞賛の声が高まっているのでしょうか。
佐藤
米国はエンロン事件やリーマンショックなどを経て金銭至上主義が見直され、尊敬される企業やリーダーが必要であることを痛感しました。さらに現在は、先の大統領選挙や英国のEU離脱など、先行きの不透明感がますます増しています。
こうした背景のもと、ビジネススクールで教える内容も変わりました。リーダーシップ関連の科目が増え、企業が長きにわたって存続していくために何が必要かを学ぼうという機運が高まったのです。
福島
日本には長い歴史をもつ企業が多いことが注目される要因ですか。
佐藤
はい。日本は世界で最初に企業(578年創業の建設会社・株式会社金剛組)が誕生した国であり、長年の歴史のなかで積み重ねてきた英知が、企業やリーダー、そして社員一人ひとりに受け継がれています。
福島
どのような点がとくに評価されているのでしょうか。
佐藤
日本の企業やリーダーが、ビジネスを通じて利益を追い求めるだけでなく、世の中や人々に役立つことを目指している点です。さらに、それを社員一丸となって高いモチベーションでやり遂げる遂行力も評価されています。
福島
ハーバードの授業で取り上げられている事例を1つ教えていただけますか。
佐藤
株式会社JR東日本テクノハートTESSEIの事例を紹介しましょう。新幹線の車内清掃業務を担うJR東日本の子会社です。
平岡
「新幹線お掃除劇場」や「セブンミニッツミラクル」というキーワードで紹介され、世界中から賞賛された企業ですね。
平岡 昭良の写真
佐藤
新幹線の清掃はいわゆる3K(きつい・汚い・危険)といわれており、同社もかつては社員のモチベーションが低く、クレームも多いといった課題を抱えていました。しかし、矢部輝夫氏という一人のリーダーが大改革を行い、現場のモチベーションを劇的に高め、奇跡的な再生を果たしたのです。
矢部氏は社員に向かって「あなたたちはお掃除のおばちゃん、おじちゃんじゃない。新幹線の運行を支える技術者です」と、事あるごとに語りかけました。その結果、社員は自分の仕事に誇りを抱き、高い自主性のもとで現場が改善され、エクセレントカンパニーに生まれ変わりました。
平岡
感動的なお話ですよね。
佐藤
日本企業ならではの現象だと思います。例えば米国人の学生に「社員のモチベーションを高めるには何をしたらいいと思う?」と尋ねても、回答として出てくるのは報酬を上げるといった方策です。これだと一時的にはモチベーションが高まるでしょうが、長続きはしません。
同社は年間売上40億円ほどですが、今やJR東日本グループ全体、さらには他地域のJR各社にも良い影響を与えています。
福島
1つの企業の意識改革が大きな波及効果をもたらしているのですね。

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