JP/EN

 

Foresight in sight

企業情報

feature vol.22

日本リーグ優勝への軌跡
昨年の10月11日に開幕し、12月26・27日が最終節(大阪府守口市民体育館)だった「バドミントン日本リーグ2009」。
最終日まで唯一全勝の日本ユニシスは、勝てば優勝のNTT東日本戦で勝ち点を上げ、06年以来3度目の優勝を全勝で飾った。
7戦全勝の数野健太/早川賢一が最高殊勲選手に選ばれ、早川は新人選手賞とダブル受賞している。
昨年11月、初参戦の2部リーグで優勝した女子チームは、1月31日の入れ替え戦でも1部昇格を果たし、2010年のバドミントン界は、ユニシスから目が離せない。
主将・坂本修一と、小宮山元の目は、もう潤んでいる。
NTT東日本との最終戦。1-1でまわった第2複、数野/早川が勝てば優勝だ。
1ゲームを先取し、2ゲームも18-11と大量リード。優勝まで、あと3点だ。
1ポイントごとに、盛り上がるベンチ。全員が立ち上がり、声を張り上げ、その瞬間を待つ。
なかでも、今季限りでの引退が決まっている坂本と小宮山。1点ごとに感情が高ぶっていき、涙腺は決壊寸前だ。
まるで1987年の日本シリーズ、巨人を相手にあと一人で日本一という場面で、感極まって試合中に泣き出した清原和博(当時西武)のようだった。
19-12、20-14……そして、チャンピオンシップポイント。早川がこじ開けたスペースに、数野が速いタッチで落とすと、早川はベンチに向かって両手でガッツポーズし、数野はラケットを高く放り投げていた。
優勝の瞬間
日本ユニシス、3年ぶり3度目の優勝。
——ひとしきりの歓喜の輪がほどけたあと、整列し、応援席に挨拶するときには、坂本だけではなく中西洋介ヘッドコーチも号泣していた。
涙を見せるのは、めずらしいですね……こちらの問いに、坂本はいった。
「僕はこのリーグ、一度も試合に出ていませんが、いざ試合に出るとなると自分のことで精一杯なんです。その点いまはベンチにいて、周りがよく見えている。僕から見たら、相手によってムードに波のあるチームでしたが、自分の現役最後の試合で、数野/早川が気合いの入ったプレーを見せてくれました。そういう若い選手たちが優勝を勝ち取ってくれたことがうれしくて、思わず涙が出たんです」
サポーターへの挨拶の際、涙を見せる中西ヘッドコーチ(左から2人目)と坂本修一(右から3人目)
サポーターへの挨拶の際、涙を見せる中西ヘッドコーチ(左から2人目)と坂本修一(右から3人目)
苦しいシーズンだった。
複・単・複(ダブルス2本・シングルス1本)で争う団体戦。2つのダブルスのうちひとつは、坂本/池田信太郎からエースの座を受け継ぐ数野/早川で決まりだ。
しかし、ダブルスの世界ランキング5位、アルベン・ユリアントのパートナーが流動的だった。
中西は「廣部か信太郎がベスト」と想定しながらも、10月の開幕では廣部が肩痛、池田がオランダ遠征のため不在。
11月の東海興業戦も、廣部が今度は脇腹痛、池田はヨーロッパ遠征直後のため出場を回避せざるを得なかった。
そんなわけでリーグ序盤は「坂本も、ケガをしていて使えない。となると、アルベンと組むのは小宮山か遠藤しかいなくて、実は人がいるように見えても足りなかった」(中西)のである。
アルベン/遠藤(写真左)、アルベン/小宮山(写真右)
リーグ前半、アルベンのパートナーは遠藤、小宮山など流動的
それでもトナミ運輸、NTT東日本と3強を形成する力は、絶対値が違う。前半を4戦全勝として、12月23日、やはり4戦全勝のトナミと激突した。
トナミ運輸は01~04年と連覇している強豪。中西が開幕前から「ここで勝てば、優勝に近づく。逆に負ければ、NTTさんとの力関係から、トナミさんの優勝」と考えていた、優勝争いの大きな山場だ。

12月上旬に行われた全日本総合の結果を、物差しにしてみる。
シングルスは総合2位のトナミ・佐々木翔に対し、ユニシスは山田和司がベスト4。ダブルスは、平田典靖/橋本博且が総合で優勝し、数野/早川が準優勝。
2複1単で争われる団体戦を単純計算するなら、トナミに分がある。 ただ、団体戦がおもしろいのは、オーダーの駆け引きである。ランキング順の出場が義務づけられているトマス杯と違い、さまざまな思惑が交錯するのだ。

大一番を前に、中西は考えた。
“シングルスでは、佐々木にはなかなか太刀打ちできないだろう。ウチが勝つには、ダブルス2つの勝負になる”
幸い、全日本総合からそのまま東アジア大会に行っていた池田が、12月20日のJR北海道戦で初出場し、アルベンと息が合ったところを見せた。
“アルベン/池田と、数野/早川でいこう。 トナミには、平田/橋本の全日本チャンピオンがいるが、チャンドラ ・ウィジャヤがいる。かつての世界チャンピオンは3回目のリーグで、ここまで来日以来15勝無敗。プライドもある。優勝争いには、もっともいいパートナーと組んでくるはずだ。つまり、チャンドラ/平田。ここに、アルベン/池田をぶつけよう”。
大一番のトナミ戦、アルベンのパートナーには池田信太郎が抜擢された
大一番のトナミ戦、アルベンのパートナーには池田信太郎が抜擢された
中西の読みは、当たった。
第1複がアルベン/池田対チャンドラ/平田。山田と佐々木のシングルスをはさみ、第2複が数野/早川対橋本/黒瀬尊敏。 トナミは、総合王者をばらして勝負に出てきた。

結果から、書く。
ユニシスは、アルベン組が第1ゲームをジュースで取ると、そのまま2ゲーム目も押し切り、先制。
シングルスは、山田がファイナルまで食い下がりながら落としたが、数野/早川は1ゲーム先行を許すものの続く2ゲームを連取して逆転し、ユニシスが大一番をモノにした。
こう書くとあっけないが、男子のリーグとしては異例の、2時間半を越える熱戦だった。

中西は、この勝利を振り返る。
「信太郎とアルベンが組んで練習したのは、東アジア大会後の1週間程度。時間としては、ほかのパートナーより短かかったのですが、このペアが一番安定感があったので、第1複にもっていきました。アルベンは、坂本/池田と対戦し負けたこともありますから池田の実力を認めてもいるし、もっとも信頼していたと思います。
実際、 信太郎は試合になると、混合に慣れていた分、速いタマの処理にややもたつきましたが、流すタマや前に沈めるタマが抜群にうまかった。アルベンも、期待以上の力を発揮してくれ、チャンドラさんより上回っているように見えました。
数野/早川も、橋本/黒瀬にはなんとかなるかな、と思っていましたが、ファイナルに持ち込んだあと1-5、2-6とリードされたときは、もう心臓が痛かったですね。ホントによく勝ってくれました」
終始リードを奪われていた数野/早川も勝利
そして、最終節初日。ユニシスは金沢学院クラブを下して全勝を守るが、やはり全勝で並んでいたNTTはトナミに敗れて一歩後退し、ユニシスが優勝に王手をかけた。だが、最終戦(vs NTT東日本)で仮に敗れれば、マッチ率で優位に立つトナミに、逆転優勝の可能性が大きくなる。つまり、NTTに勝つことが優勝の条件であることにかわりはなかった。

その夜の、ミーティングのこと。中西が、こう切り出した。
「坂本と小宮山にとっては、最後のリーグ。絶対に優勝しよう!」
今季チームは、意図的にミーティングを多くしている。ミーティングというより、スタッフの決断を選手に理解させる場だ。全員が共通意識を持ってこそ、チームが機能するからだ。
決戦前夜とあって、言葉こそ少ない。だが、誰もが勝つことがVの条件だとわかっている。当の小宮山が、涙ながらに「優勝したい!」と口にすれば、「昨年は“勝てればいいな”というくらいの気持ちでしたが、今年は絶対に勝つつもりでやります」と早川。
試合に出る者、ベンチでサポートする者、全員の心がひとつになる。ことに12月に入ってから感じていたチームの結束に、中西は「優勝できる雰囲気はある」と手応えを持った。
最終戦、中西ヘッドコーチの言葉に耳を傾ける選手たち
そして、最終戦。23日に池田が負傷したため、今季初めて出番が回ってきた廣部が気合いをむき出しにし、アルベンとのペアで佐藤翔治/川前直樹を圧倒すると、第2複では数野/早川。リーグ中盤まで「破壊力はあっても、安定感が今一歩」(中西)と感じていたが、激闘を制したトナミ戦以後は、つねに勝負のかかる第2複で登場し期待に応えてきた。
そして、この日も、ストレートで完勝してVをもたらすのである。
優勝を決めた数野・早川に駆け寄る選手たち
昨季はリーグ1勝だったが、今季は7戦全勝で最高殊勲選手と、大黒柱に成長した数野はいう。
「個人戦はともかく、今シーズンは、実業団(準決勝でNTT東日本・川前/田児賢一に0-2で敗戦)などチームに貢献できていませんでした。それでも、ダブルスのレベルが高いなかで全試合に出させてもらう以上、なんとか結果を出したかった。最後の3戦はすべて1-1で回ってきて、ドキドキしましたが、ホント、よかったです」

思えば05年、初のリーグ制覇を果たしたのが、守口市民体育館だった。
優勝を決めたのは、シングルスの中西。大会やリーグ戦のたびに応援に駆けつけてくれた父・一夫さんと、歓喜の記念写真に収まった思い出の会場だ。
奇しくもこの日未明、病と闘っていたその一夫さんが永眠した。76歳だった。
選手にはそれを伝えずにいた中西だが、整列して挨拶するときには、たまらずに涙がこぼれた。応援席のどこかから、一夫さんが、3年ぶりの優勝を祝福してくれているような気がしたからだ。
「父さん、優勝したよ」——。  

さあ、2010年のシーズンがスタートする。
若き指揮官は、今度は6月の全日本実業団で、4年ぶりの優勝を報告するつもりだ。
(2010年2月12日掲載)
TOP