|
|
[試合リポート in 守口大会]
日本リーグ2005の天王山、あるいは今年のバドミントンの千秋楽となる最終戦。 日本ユニシスは宿敵トナミ運輸と優勝を賭けての1戦を迎えた。 一昨年は星一つリードされて、昨年は全勝対決、今年は1勝分リードしての戦いとあって、優勝の機運も高まる。 さらにトナミ運輸の柱の1本、大束忠司選手が怪我のため欠場。日本ユニシスにとっては追い風が吹く。 注目のオーダーは
D1 仲尾/坂本 - ハルモノ・ユウォノ/舛田 圭太 S 中西 - 大束真也 D2 劉永/池田 - 木下 政彦/平田 典靖
となった。 トナミ運輸の第1複、単は2003年と全く同じ。 そのときはトナミ・ユニシスと分け合って第2複までもつれ、最終的にユニシスが直接対決は制するものの、優勝を逃すという結果となっている。
●第1複: トナミ運輸・ハルモノ選手のサービスにより、決戦の火蓋は切って落とされた。仲尾選手のサービスレシーブはいきなりネットインと幸先のよい出だし。 続いて舛田選手のスマッシュレシーブがネットにかかり、先制点は日本ユニシス。 だがトナミペアもお返しとばかりに、レシーブをネットインさせてみせる。 両者とも多少の気負いがあるのか、ややネットにかかるミスが見られるものの、シャトルを上げずにドライブ・ハーフ球でせめぎあうラリーは見ごたえ充分。 3-3、4-4と互角の展開となる。 トナミ運輸の5点目は、舛田選手がネット前への素早い詰めから強烈なプッシュ。その打球が坂本選手の顔面に直撃し、一瞬その場が凍りつくが 坂本選手はプレーを続行。タフなところを見せる。 4-6、6-7と、わずかにトナミが先行しながらゲームがじりじりと進んでいく。 しかし7-9とされたところからユニシスペアが本領を発揮。 坂本選手がコート中央へ誘い球の緩いドライブを打ち、するするとネット際に現れた仲尾選手が返球を決めるという鮮やかなコンビネーション。 また強打が相手のレシーブミスを誘い、終盤に差し掛かる大事な場面で12-9と逆転する。 さすがに13点目はやるまいと、舛田・ハルモノ組も集中。 ネット前に立ちはだかってプレッシャーをかけ、またドライブもネットインとなり12-11と迫ってくる。 だが初優勝にかける思いからか、坂本選手のバックハンドのドライブがネットインし13-11。 さらに14点目は二人の連続スマッシュで奪い、ゲームポイントを手に入れる。 試合巧者のトナミペアも、セティングに持ち込もうと奮闘し13点までは取るが、 仲尾・坂本組はあわてることなくラリーをスマッシュで断ち切り、全日本王者らしい自信を示す。 最後はネット前からの舛田選手のスマッシュを防ぎきり、攻めに転じてネット前から坂本選手がスマッシュ。15-13で第1ゲームは日本ユニシスへ。 第2ゲームは2点を先制されるが、相手のバックアウトを見逃さないなど落ち着いたプレーで3-3。 高速なドライブ戦や浅い位置からのスマッシュを確実に決めていく。 6-4とした場面、フットフォルトを取られて嫌なムードになりかけるが、 相手の勢いを6-6で食い止め、逆転を許さない。 むしろ追いつかれて集中力を増したか、攻めの姿勢を崩さない積極的なバドミントンで、一気に12-6までリード。 このままでは終われない舛田・ハルモノ組も必死のプレーで5連続ポイントをあげて迫るが、どうしても仲尾・坂本組を逆転できない。 逆に坂本選手がトナミペアの中間にスマッシュを打ち込んで大事な13点目を手にし、歓喜の時が近いことを感じさせる。 舛田選手のジャンプスマッシュで13オールに追いつかれても、不思議と醸し出される安心感。 次のラリーでコートの隅をついたドライブを決め、見事にサービス権を奪い返す。 汗を拭き、最後を締めるべくより一層集中するユニシスペア。 素早いネット前への詰めがハルモノ選手の脅威となり、ミスを誘って14点目をゲット。 最後は仲尾選手のドロップに舛田選手が詰めたところを、読みよく坂本選手がカットしライン際へ。 その打球がインとなった瞬間、仲尾・坂本両選手に抱きつく福井選手と山田選手。 15-13、15-13の大激戦を制して、1点目は日本ユニシスへ渡る。 紙一重の実力差だったとはいえ、日本リーグの通算成績でこれまで1敗しかしていなかった舛田選手に土をつけたことで 優勝への予感が確信に変わってくる。 ●単: 期待を受けて登場する中西選手の相手は大束真也選手。 前節では全日本王者の佐藤翔治選手に敗れたものの、ファイナルゲームまで持ち込む健闘を見せている。 ジュニア時代からの因縁の対決は長いラリーでスタート。 これを中西選手がライン際へのジャンプスマッシュでものにすると、次も大束選手のバックサイドにスマッシュを決めて1-0。 ここから次の点が入るまでに、サービスオーバーが繰り返されること実に9回。 選手のみならず、双方の応援団もタフなクロースゲームになることを予想したことだろう。 だが2-2から点を加えていくのは、常に中西選手。 大束選手も股抜きショット、ダイビングレシーブなどトリッキーなプレーを見せて観客を沸かせるが、 それは裏を返せば中西選手のスピードが勝っているということにほかならない。 中西選手がボディへのスマッシュを決めて9-2としたところでトナミベンチからは真也コールが起こり、 それに応える大束選手はスマッシュでサービスを奪う。 しかしパワーで押そうとする大束選手の打球はバックアウトが多く、それを冷静な中西選手は悉くジャッジ。 大束選手に3点目が入ったとき、中西選手の得点はすでに11点。 ネット前の入りが速い中西選手は、フェイントの効いたロブで相手をのけぞらせ、 上がってきた球をジャンプスマッシュ。またプッシュで決める場面も多い。 14点目も大束選手のドロップに鋭いプッシュをお見舞いしてポイント。 その印象が尾を引いたか、15点目は大束選手がドロップを自らネットにかけて15-3。第1ゲームを中西選手が奪う。 優勝まであと1ゲームと迫り、チームの雰囲気も押せ押せといったところ。 王手をかけられた立場の大束選手。優勝を決めさせまいと第2ゲーム出だしから奮起し、まず2本をリード。 自らの手で優勝を勝ち取りたい中西選手も、スマッシュへのロングレシーブやネット前からのロブで逆をつき、3点を奪って逆転する。 すると大束選手も単発の鋭さで2点を加え、3-4と再逆転。 次のネット際の攻防で、中西選手が決めようとしたショットを大束選手がラケットをネットぎりぎりに出してブロック。ラケット同士が接触し金属音が響く。 中西選手がオーバーネットしたという判定をめぐり中條監督、山田コーチ、今泉トナミ運輸監督が主審の元へ。試合は3分にわたり中断する。 判定は覆らなかったが、この難しい間で中西選手は気持ちを新たに集中。 早いタイミングでドライブをクロスに放って、サービスを奪い返し、 ネット前からの展開で7-6と逆転に成功する。 一方の大束選手も、相変わらずミスは多いものの打球の鋭さを増して7-9と対抗。 すると中西選手は我慢してミスを待ち、11-9。優勝を決める一戦らしく、スリリングなシーソーゲームとなる。 さらに大束選手がクロスドロップをネットにかけて中西選手に12点目が入ると、ベンチに、そして観客にガッツポーズ。 決意の表情を窺わせる。 後がなくなってきた大束選手。ここにきてプレーに工夫が見られるようになり、 力を抑えてコースを突いたスマッシュや、ジャンプしてのドロップを続けるなどして、土壇場で12-13と逆転。 しかし早くファイナルゲームに持ち込みたい気持ちが災いしたか、中西選手のアタックロブをジャッジするも、イン。 次のラリーでも中西選手のドロップに一瞬足が出ず、ネット際に返そうとするも白帯を越えない。 13オール。応援席も固唾を飲んで見守る。 中西選手のショートサービスに大束選手がヘアピン、同じく中西選手もヘアピンした打球は、ネットに絡みながら大束選手のサイドへ。 大束選手のロブが失敗し14点目が入ると、ベンチの全員が渾身のガッツポーズ! 中西選手も力強いガッツポーズの後、ゆったりとコートを1周し、呼吸を整える。 あと1点。最高潮に達した雰囲気の中、中西選手の心中はどれほど緊張していたことだろう。 しかしこれまでと同じようにショートサービスを打つ中西選手。ヘアピンで返球する大束選手。 そして放ったクロスロブが、中西選手の最後の打球となった。 大束選手がハイバックカットをネットにかけた瞬間、両手を力強く掲げる中西選手! ベンチを飛び出した全選手、そして中條監督が我先にと中西選手に抱きつく。 吉田部長、劉永コーチもそれに続き、全員がひとかたまりとなって抱き合う。 日本ユニシス実業団バドミントン部の、創部16年目にして初の団体戦優勝がここに決まり、 同時にバドミントン界に新たな歴史が刻まれた。 戦い終えて応援団に挨拶する中西選手の目には、大粒の涙があふれていた。 中條監督、山田コーチをはじめとする皆が中西選手を労い、 応援団も中西選手のみならず、自分たちの手で初優勝を勝ち取った全選手を、心の底から祝福した。
●第2複: こうなれば第2複も勝利し、3-0の完全勝利で有終の美を飾りたいところ。 日本ユニシスは劉永・池田組、トナミ運輸は木下政彦選手と来期入社が内定している平田典靖選手が登場する。 181cmの木下選手、180cm平田選手が長身から繰り出すパワフルなショットに、劉永・池田組は持ち前の守備力で対抗。 レシーブを大きく切り返して相手に上げさせ、攻めに転じてフィニッシュまで持っていく。 またドロップショットを交える緩急の利いた攻撃で体勢を崩させ、そこにすかさず強打。 すでに優勝が決定したことによる気の緩みなど全くない、集中したプレーを見せる。 一方のトナミ運輸、特に平田選手がネットにかけてしまったり、バックアウトしてしまったりとミスがやや多いのは、 やはりリーグ特有の雰囲気、また優勝は決まっているものの最終戦の最終試合であるためだろうか。 そんな平田選手を気遣う木下選手。ラリーの合間に声をかけて緊張を解きほぐそうとする。 しかしプレーの修正は容易ではなく、また木下選手もスマッシュをネットにかけるミス。ユニシスに13点目が入る。 ここからトナミペアが6連続ポイントで13-11と迫るが、劉永・池田組にはなおも安心感が漂う。 木下選手のスマッシュレシーブがエンドラインを割るのを劉永選手が見届けてサービス権を奪い返し、 14点目はネット前に詰めた平田選手のプッシュがバックアウト。 トナミペアも3度のゲームポイントを凌ぐが、点数は11点のまま進めることができない。 ドライブ戦から角度をつけてスマッシュを放ち、対する平田選手のレシーブがアウトで1ゲーム終了。15-11で劉永・池田組が先制する。 2ゲーム目はまず劉永選手のドロップがネットイン。サービスプッシュを待ち構えて、早いタイミングで打ち込み2点目、 さらにネット前からの木下選手のスマッシュがバックアウトとなり3-0とする上々の立ち上がり。 2点を返されても、池田選手のネットプレーですぐさま5-2と引き離す。 劉永選手はラリー中にくるりと1回転、また笑顔も見せる余裕のプレー。 フォアからバックから、長短を織り交ぜたクロスドライブが効果的となり、鋭い牙を持つトナミペアを封じ込める。 ロブのバックアウトをジャンプしながら劉永選手が見送り10点目を取ると、 11点目を狙う池田選手のサーブに、木下選手がレシーブするもネットにかかる。 いい球を打たなくてはという思いからか、狙いすぎる感のあるトナミペア。 12点、13点も打球がバックアウトしてしまい、ユニシスが13-5と大きくリードする。 さらに14点目は、劉永選手の大きなクロスへのショットがトナミコートへ落ち、マッチポイント。 一度はドライブレシーブがサイドアウトとなり、サービス権はトナミペアへと渡るが、 1点も与えずに奪い返し、劉永選手のサービス。 池田選手が2本のドロップで充分な体勢をつくり、ジャンプスマッシュを2本続けて放ち、 浅くなった返球を劉永選手が渾身のスマッシュ! 15点目が入った瞬間、両手を掲げたコート上の二人めがけてベンチの選手・監督が一斉に飛び出し、抱擁を交わす。 肩を組んで形づくった円が団体戦終了の握手のために崩れても、歓喜の渦はいつまでも止まらない。 一列に並んで応援団に挨拶し、喜びを分かち合う各選手。 "フレーフレーユニシス"をともに唱える観客、深々と礼する選手団。 その後は部長、監督、功労者の面々の胴上げへと続き、16年間の大願を成就させた喜びをあらわした。
[中條監督のコメント] 初優勝大変うれしく思います。昨年まで3年連続2位とあと一歩というところまできて逃していましたので、今年こそはという気持ちで試合に臨みました。勝負所の第1ダブルスを取り流れに乗れた事が勝因だと思います。初優勝に浮かれる事なく来年も良い一年にしたいです。 |
|
|
|
|