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Technology Foresight

社会に溶け込むAI

AIは生活の中で接するさまざまなサービスに浸透し、人々の暮らしにとって意識せず利用するようになりつつある。また不特定多数向けではなく、パーソナライズされたAIも登場し始め、医療分野や教育分野の向上に寄与するなどAI適用の成功事例も増えている。IoTが普及し、加速度的に増加する多種多様な情報とAIがつながることで新たな可能性が生まれる一方、個人情報や機密情報などのセンシティブな情報の取り扱いへの不安も増加しつつある。今後は、これらの情報を扱う仕組みを踏まえ、人々の生活や企業、産業へAIの浸透が加速されるだろう。
社会に溶け込むAI

背景と現在の状況

AI適用の事例が増え始め、さまざまなビジネスシーンでAIの適用が検討され、すでに活用が始まっている。特に課題を持つ企業とテクノロジー企業、大学機関などとの共同研究という形で適用が加速している。しかし、現在のAIは個人向けのものはまだ少なく、人々の暮らしに欠かせないとまでは言い切れない状況にある。さらに「AIは人々の暮らしを脅かす」と懸念する声もある。

3~5年後の姿

企業の視点では、AIは業界共通の入力されたデータを理解するフレームワークの時期から、業種・業界ならではの活用に移ろうとしている。第1フェーズのAIは人間の属性や行動、判断などのデータから学習しているが、第2フェーズでは、AIが人間の認知バイアスや限界に影響されずにさまざまなデータを認識する。第2フェーズのAI活用は、人間の知見を拡大し、産業と社会に新たな価値を生み出すだろう。

個人の視点では、AIは医療や教育分野で個人が持つ課題を解決する鍵となる。あらゆるものがセンシングされるIoTの普及など、ハードウェア環境の多様化により、フィジカル空間とサイバー空間の緊密化が進み情報がつながることで、AIの活用領域は拡大していく。個人の情報が流通する一方、個人情報利用に関する法律などが整備され、いかにセキュアに情報活用を進めていくのかが企業に求められる。

産業へのAIの浸透

従来、AIは人間が作り出したデータから学習してきたが、今後は、データ化されていない人間の持つ経験や知見、そして人間が一度に判断できない大量のデータを認識し、新たな価値を生み出すだろう。

例えば、橋梁の予防保全や機械で作られた製造物のゆがみを見つける匠の目視など、実空間認識技術がAIで実現されることにより、人間が正解を与えることができないような問題に対し取り組むことができるようになる。物理シミュレーションや図形の数理的な処理など、ノウハウが埋め込まれた既存のプログラムの利用や、人工的なデータの生成、ヒトの偏見が入り込まないデータの利用による新たな価値提供などを通じて、産業界での裏付けがある知見を駆使した新たな応用が生まれる。AIの認識が人間の知見を拡張し、多面的な価値を創出する「産業と社会」が作られるだろう。

AIは、入力側の技術プラットフォームとデータホルダーの組み合わせが競争上の優位だった時代から、新たなAI技術で産業や社会の側のプラットフォームと、データを生み出す科学や技術のホルダーを組み合わせることが競争上の優位を左右する時代となる。今後は、人間の知恵や知見が価値を生む創造性本位の産業や社会が作られるだろう。

パーソナルAIビジネスの浸透

すべての人々がパーソナライズされたAIの恩恵を受ける選択肢を得ることができる。普段の生活や業務はパーソナルAIがまるで個人の専属秘書のように管理、効率化し、また、医療分野と教育分野での適用は顕著に進み、個人の病歴や現在の症状から病名候補、薬剤を推察するAIや、個人の学習理解度に合わせたカリキュラムを作成するAIが浸透する。

ただし、パーソナルAIの構築には、膨大な個人データの収集とAIの機械学習により提供される。このため、個人データの蓄積を中心に、データを預ける/活用するという多層的な仕組みの確立が求められる。また、個人データをセキュアな環境で一元管理・運用を行う情報銀行が重要な役割を担い、一般的に利用される。情報銀行の登場により、個人データの利活用が活発になることで顧客ニーズに合わせたサービス提供が進む。ニーズに即したサービス提供が実現されるため、顧客満足度
も向上していく。

こうした環境変化の中で個人データを収集し、提供するデータビジネスが台頭することにより、データを持つ企業がAIビジネスをリードする。
パーソナルAIビジネスの浸透

求められるAIの信頼性

コンピューターリソースの高速化や強化学習などのディープラーニングの発達によって、人工知能(AI)自身がデータサイエンティストに代わって手法の選択やデータクレンジング、パラメータチューニングなどを目的に合わせて行うようになり、知識のない人でも、AIを活用したサービスを素早く作成できるようになる。一方で、誰でも高精度AI を作成できるために、性能による差異化が難しくなる。また、人の手によらず作り出されるため、倫理観に欠けるAIが作り出される
可能性がある。今後AIビジネスの成否を分けるのは、AIの精度ではなく、ビジネス課題の理解と倫理観への対応となる。

AIの実用化が進む中、判断プロセスがブラックボックスであることが問題視され、世界的に「explainable AI(説明可能なAI)」が注目されている。特に、医療や自動運転など、命に関わる分野のAI活用では、企業は透明性や説明責任が求められているためAIが適用可能な範囲が限定されている。今後は、これらの特定分野でAIを活用する場合、被害発生時における責任の所在を明確化するために、AIがどのような判断で結論に至ったのかを説明できることが活用の条件になる。

また、AIの信頼性の面では、セキュリティ問題も重要である。AIを有益なものとして利用する一方で、AIを悪用する人も出てくる。AI技術を利用した偽造データの作成やウイルスによる攻撃により、導入しているAIの判断が誤った方向に誘導される危険性があり、対策を行わないと企業はたちまち信頼を失ってしまうだろう。
求められるAIの信頼性

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