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成熟期に入るクラウド

セキュリティ面の信頼性が高まり、可用性を確保できる仕組みが整い、巨大ショッピングモールのように様々なサービスが充実したクラウドは成熟期に入っている。クラウドへのシフトがますます進み、データセンターの利用が縮小し、ITインフラを担当していた要員の再配置が行われている。クラウドの制約や特徴を踏まえて、多種多様なサービスを使いこなすために、クラウドに精通したITベンダーが積極的に活用されている。

背景と現在の状況

多くの企業では、いつかクラウドへシフトする日が来ると確信し、クラウドを全面的に採用する先進的な企業の事例などを参考にしながら、クラウド活用の長期方針を検討している。各クラウドベンダーが提供する様々な形態のクラウドの中から自社のビジネスに適したクラウドを選定し、自社システムの一部をクラウドに移行/運用することで、クラウドのメリット/デメリットを評価している。

3〜5年後の姿

クラウドの利用を検討する上で懸念となっていたセキュリティや突然の停止への心配は、回避できる仕組みが整い、様々なサービスが充実したクラウドは、成熟期に入っている。

クラウドの方が安心/安定との認識が広がる

オンプレミスより複数のセキュリティ標準の認証を受けているクラウドの方が、よりセキュアなシステムの構築/運用が可能であるという考えが広がっている。セキュリティ対策が自営できないことを理由としたクラウドへのシフトが進み、オンプレミス上の自社開発アプリケーションやパッケージからSaaSへのシフト、PaaS/IaaS上での開発/運用へのシフトが行われている。
パブリッククラウドベンダーはデータセンターの増強や運用改善などの継続的な投資を続けており、障害による突然の停止は減りつつある。しかし、あくまでも共有環境であり、完全に障害をなくすことはできていない。企業はそれを認識した上で、マルチリージョンでシステムを構成して片方のリージョンが停止しても残りのリージョンで業務を継続するような仕組みでインフラを運用している。PaaSを利用する場合はクラウドベンダーが前述の仕組みを組み込んでおり、こうした安定性も考慮したPaaSを積極的に活用している。
クラウドの安定性が向上することにより、今までパブリッククラウドに対して様子見をしていた業界最大手企業が積極的な採用を打ち出している。この影響が大きく、その後矢継ぎ早にその業界の他の企業へクラウド採用が急速に広まっている。

巨大ショッピングモール化するクラウド

様々な業務システムの開発/運用をクラウド上で対応できるようなサービスが、クラウドベンダーやソフトウェアベンダーから数多く提供されている。AI/IoT/ビッグデータなどのPaaSや業種特化型のSaaSやPaaSが今以上に強化され、巨大ショッピングモール化して、なんでも揃うようになっている。

SaaSレイヤでは、メール、グループウェア、人事・給与、会計などのほとんどの業種共通システムにAIが組み込まれて提供されている。これらのシステムは、データを自社の外に配置したくないなどのオンプレミスで利用しなければならない特別な理由が無い限り、SaaSでの利用が主流になっている。また、業種特化型である自治体/製造/流通/金融向け業務システムも多くがSaaSとして提供され、さらに業界トップ企業とITベンダーとの連携/共同開発による、業種特化型プラットフォームの同業他社への提供も活発になっている。

PaaSレイヤでは、クラウドネイティブなアプリケーションをより簡単に開発・デプロイ・スケーリングなどができるようなサービスが多数提供され、利用が浸透している。また、従来のPaaSより簡単に開発できるサーバレスコンピューティングが浸透し始め、インフラを意識しない運用などができるようになり、開発/運用の負荷が減っている。さらにAI/ IoT/ビッグデータなどの目的別に最適化されたPaaSが多数提供されており、各PaaSを組み合わせ、API連携させることで簡単にシステムを構築できるようになっており、アプリケーションを一からスクラッチで開発するようなスタイルはほとんどなくなっている。

各クラウドベンダーは、AIなど特殊用途向けに最適化したプロセッサ、高速にI/Oできるストレージ、量子コンピューターなどをサービス提供している。このため、AI/IoT/ビッグデータなどの並列処理によるコンピューティングリソースを大量に消費するアプリケーションが快適に動作するようになっている。

巨大ショッピングモール化したクラウドサービスの多くは、可搬性が低くロックインされる可能性が高いが、ビジネスのスピードや変化への対応を重視する企業は、生産性/利便性の高いそれらのサービスを積極的に採用している。

このようなクラウドサービスは米国ベンダーによる寡占化が進み、多くの日本企業がそれらを利用している。一方、データやシステムを米国に牛耳られることを懸念する国では、自国クラウドベンダーを積極的に利用する動きが出ている。

クラウドに精通したITベンダーの積極活用

クラウドベンダーが提供する多種多様なサービスの目利き、それらを適切に組み合わせること、クラウドの制約や特徴を踏まえて非機能要求を満足するアーキテクチャを設計することは、クラウドの各種サービスが増え続けることに伴い、難易度がますます高くなる。それらをうまく組み合わせて設計できないと、新技術によるシンプルな実装、運用の簡素化、期待した性能、コスト削減といったクラウドのメリットを引き出せない。クラウドに精通した人材の育成や、ITベンダーの積極活用を行い、うまくクラウドサービスを使いこなしている企業がある一方で、スキル不足のまま、クラウドを使いこなせていない企業もある。

データセンター利用の縮小とITインフラ部隊要員の再配置

クラウドシフトを加速させている企業では、既存システムの更改タイミングを機に、順次クラウドへ移行していった結果、データセンター利用の縮小が進んでいる。
自社データセンターを所有している企業の一部では、クラウドを積極的に採用したことで余剰となった資産をデータセンター事業者などへ売却を進めている。外部のデータセンターを利用している企業は外部のクラウドへの移行が比較的容易なため、データセンター利用を縮小し、クラウドへ移行している企業が増えている。
それに伴い、ITインフラ部隊を中心に要員の再配置が行われ、社内のクラウドサービスブローカー、クラウドインテグレータの役割や、事業部門のデジタルビジネス開発におけるIT専門家としての役割を担うようになる。業務内容が大きく変わるため、うまく対応することは難しいが、再配置先で活躍している人もいる。

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