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価値交換の在り方が変わるブロックチェーン

価値交換の在り方が変わるブロックチェーン

ブロックチェーンによる分散型のビジネスモデルは、巨大資本を持つ特定企業を中心とした階層的なこれまでのモデルから、多くの企業が自由闊達にビジネスに参加し、共存共栄するモデルへの転換のきっかけとなる。さらに、消費者がサービスを提供する側にもなり得る環境が整い、消費者とサービス提供者の垣根がなくなることでブロックチェーン上での取引はより活発化する。そして、ブロックチェーンは有形無形のさまざまな価値を示し、権利化して新たな取引を可能にするため新たな経済圏が形成されイノベーションが生まれる。

背景と現在の状況

ブロックチェーンの登場は、従来とは全く異なる「中央集権型のような特定の管理者に依存しない、複数企業による分散型」というシステム形態を世間に提示した。複数企業がつながり、ビジネスプロセスを共有する。そして、それを支えるのはデータの真正性保証の技術であり、ブロックチェーン上に記録するデータの真正性を誰もが認め、データが示す価値を全員で共有できるフィールドを提供したことこそがブロックチェーンの最大の特徴である。最初にブロックチェーンを社会実装したビットコインにおいても、世界規模でビットコインの価値基準を共有したことの効果は大きい。ビットコインに代表されるように、当初、送金や決済、証券取引などの金融分野で語られることが多かったブロックチェーンは、金融以外の分野にも裾野を広げ、本人確認(KYC:Know Your Customer)、電力取引、サプライチェーンなどが知られている。現在、ユースケース検討から実証実験による検証を終えようとしており、現実的なサービスの運用に向けて着実に進んでいる。

3~5年後の姿

企業同士のコミュニティがブロックチェーンを活用して形成され、次第にそのネットワークがより強固に構築されていく。世界中でコミュニティの成長とともにネットワークは自律的に拡大し、コミュニティ同士の連携によってさらに拡大を加速させる。 

ブロックチェーンにより記録された真正性の保証を有する情報は、コミュニティ内で共有され、情報そのものに価値が見いだされる。その価値は、ネットワークの広がりとともに金銭的価値のみではなく、人脈、教育、地球環境、地域貢献などの新しい基準として一般化される。次第にそれらが権利化され、個人間での権利取引が活発化していく。

評価の在り方が変わる

ブロックチェーンを利用して、あらゆる行動情報を記録する人々が増え、その情報に基づいた個人の価値を広く共有し、影響力を持ち始める。企業も顧客からの信頼を得るために自社の製品の信頼性や安全性などについてブロックチェーンを利用して情報を公開し、顧客の信頼を得るようになる。
 
情報のオープン化が進んだ社会では、金融機関における本人確認や与信管理、シェアリングサービスやリユースサービスの個人間取引における相手方評価などは、ブロックチェーンが示す価値が基礎となる。それらは各事業者が単独保有する情報に比べて範囲が広く、膨大であり、評価精度は高く公平だ。1つのサービス事業者が行った評価結果を他の事業者と共有して評価プロセスを簡略化したり、複数の事業者で同一の対象を評価することでリスクを分散したりすることで、評価にかかる労力と費用も大幅に削減されている。

評価の在り方が変わる

情報公開ビジネスが生まれる

ブロックチェーンには、個人の金融資産、健康状態などのあらゆる情報がその真正性の証明とともに記録され、価値を持つ。例えば、金融資産情報は従来、預け入れのある金融機関のみが取り扱い、顧客向けの最適なサービス提供を目的として利用された。しかし、ブロックチェーンにより、情報は本来の所有者である個人に帰属し、自身の判断によって金融機関に限らないさまざまな業種の企業に情報を公開し、最適化されたサービスの提供を受ける。さらに、情報提供の対価も獲得する。企業は対価を支払って顧客の情報を収集し、サービスの向上やマーケティングに活用する。情報の共有は公開を許可した相手に限定され、ブロックチェーンはその真正性を保証するだけで情報そのものを知ることはないため、安全に情報を公開できる。ブロックチェーンの広まりにより、個人の情報の閲覧は権利化され、個人自らが主体となり取引する情報公開ビジネスが生まれる。

ブロックチェーンである理由

従来の中央集権型のシステムにおいても、情報に基づく価値の証明、権利移転は実現できる。しかし、それは巨大な1つの企業が提供するサービスであり、企業コミュニティの大きさがサービスの広がりの限界である。また、コミュニティは企業によって持続されている。
 
ブロックチェーンの価値は、コミュニティの拡大速度と持続性にある。ブロックチェーンのネットワークを構成する企業は、長年にわたって信頼関係を築いた特定企業群ではなく、緩やかな信頼関係を有する企業である。サービス内容に共感する企業が参画し、コミュニティは柔軟性を持って規模を大きくし、参加企業全体で持続される。取引は自由活発に分散的に行われ、これに対応可能なブロックチェーンこそが、そのモデルを支える技術である。

デザイン、運用ノウハウは今から蓄積に取り掛かるべき

ブロックチェーンによる新しいビジネスモデルが構築されさまざまなサービスが始まるが、本格的に社会に浸透するには5年ほどの期間が必要である。ブロックチェーンを活用したビジネスモデルは、異業種・異業態の企業や消費者を巻き込んだサービス展開になる。このため、新しい分散型のモデルは、従来業務をただ置き換えるものではなく、互いの情報を共有し合いながら、業務フローの省略や簡略化を図り抜本的な改革を果たす必要がある。その規模ゆえに、多くのステークホルダーが介在するフロー改革には十分な検証と適切な運用ノウハウの蓄積が必要となる。先見的に実証に取り組む企業が、新しい分散型ビジネスのコミュニティで主導的立場となるには、社会に浸透したパブリッククラウドを活用し、自律的に広がるネットワーク型のシステムにおいて有用情報を峻別(しゅんべつ)し、セキュアに共有する仕組みを継続的に構築、運用する必要がある。このため、モデルの検討段階からテクノロジーを持つ企業と協働し、エコシステムを形成する必要があるだろう。

デザイン、運用ノウハウは今から蓄積に取り掛かるべき

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