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ワークスタイル変革によるワークライフバランス

2007年5月1日掲載
CSR推進部

「ワークライフバランス」という言葉、最近よく聞きませんか。仕事とプライベートのバランスを上手にとって、良い仕事を長く続けましょう、というような意味で使われます。

ワークライフバランスのニーズ

ワークライフバランスのニーズ

これは個人にとっても、また、会社にとっても重要なことです。育児や介護をしながら仕事をできるだけ続けたいと考えている方、自分のキャリアを磨きたくて夜間大学に通いたい方、家族と接する時間をできるだけ長く取りたいと考えている方、そう言う方も、仕事は仕事でしっかりとやりたいと思う方がほとんどです。一方、会社から見ても、社員が仕事と家庭の両立を進めることは長い目で見て、一度採用した優秀な社員が長くつとめることができることは、慢性的人手不足のIT業界では大歓迎です。

育児を例にとってみると、日本ユニシスグループにも男女社員が育児をするための休職制度があり、昨年あたりからは男性の利用者も増えてきているのですが、北欧やドイツのように男性も子育てに参加するのはあたりまえ、というところまでには意識としての距離があるのが現状です。男性が育児のために休職までするかどうかは個人の選択の領域であり、また、多忙な職場で育児のために男性社員が休むことに抵抗を覚える方もおられると思います。しかし、男性が育児を体験することで、育児の大変さや重要性を体感し、同僚の女性が育児をする際の理解を深めることができます。こうした経験者が増えることで、女性社員が育児休職や育児時間を取得する際、同僚からの理解が得やすくなり、女性が無理なく働き続けることができる環境に近づくのではないでしょうか。

また、育児を体験した男性社員のモチベーションも上がって、長期的にみると、会社にとっても、知識や経験が豊富な”人間力”のある人材の確保ができることになると考えます。 こうした長期的な視点に立った取り組みにより、女性が長く勤め続けられるようになれば、採用活動における強みにもなり「人手が足りない」問題の一つのソリューションとなると考えられます。育児関連制度改革には社内の意識改革も必要だと言うことです。

今日は、さらに一歩進んで、仕事の仕方を変える、つまり「ワークスタイル変革」で仕事の生産性を上げて、拘束される時間をフレキシブルにしよう、と言う提案です。フレックスタイムを利用すると、仕事はしっかりこなしながらかなりの時間自由度が得られますが、勤務場所、という制約は如何ともしがたいものがあります、つまり通勤が必要と言うことです。

昨年あたりからニュースでも取り上げられ、3月28日の日経新聞でも一面トップで取り上げられた在宅勤務制度は、昨年11月から日本ユニシスでも試行されており、簡単に言うと通勤時間をゼロにする、という制度です。ワークライフバランス推進のための制度ではありませんが、両立支援には非常に心強い味方になります。日本ユニシスのCSR推進部でも一人の部員に試行してもらい、いくつかのメリットと課題が分かりました。メリットは個人にとっては毎日平均往復で2時間半と言われる通勤時間を仕事と私生活のために使えることです。それ以外は会社での業務と内容的には変わらない仕事をするわけですから、自分の仕事に集中できる、という意見もあります。会社にとっては、育児や介護、その他身体的障害のために一時休職を選択せざるを得ないと考えていた社員に引き続き勤務してもらえる、会社全体で見るとオフィススペースや通勤費節減になる、などのメリットがあります。

課題もいくつかあります。個人としては私生活と業務のメリハリをつけること、会社の同僚とのコミュニケーションをうまく取ることが必要になります。また、男性の場合で奥様に昼食を作ってもらうケースでは、家族に時間拘束を与えてしまうことにもなるので合理的な納得性があることがあげられるかも知れません。会社としては、どのような業務と社員を在宅勤務対象とするか、情報セキュリティ確保のために何が必要か、労務管理をどのように行うかなどです。「在宅勤務をしている時はちゃんとスーツに着替えること」とか、「仕事以外でして良いことは、宅配便の受け取りだけ」という説もあり、本格導入時には既に平成16年に厚生労働省から出されている在宅勤務ガイドラインに加え、業務の状況を踏まえたルールの詳細化が必要でしょう。各家庭にもブロードバンドが普及し、Internet-VPNやモバイルシンクライアントツール“SASTIKソリューション”などのITが使えるようになって、情報セキュリティ部分はITが解決してくれる時代になってきました。

しかし、少し考えると、在宅勤務にモバイルワーク、SOHOも含め定義されている「テレワーク(国土交通省)」が進むためには、働く側も管理職側もワークスタイルの変革が大前提になってくることが分かります。ペーパレス化、いわゆる「報・連・相」の電子化、データ共有と共同作業の進め方の見直し、文書保管キャビネを削減するだけでなく、座席のフリーアドレス化やイントラネットへの接続形態、週間業務スケジューリングの考え方等まで含めて考え直す必要がありそうです。当然、業務プロセス見直しと結果としての生産性向上につながってくるはずですので、うまく運用できれば会社にとっても個人にとっても良いこと、と考えられます。

ネガティブ面を考えるときりがありません。対象をあまり広く考えすぎると労務管理だけでなく人事評価や業務遂行にも支障が出ないとも限りませんので、試行を通して対象とする業務や社員をある程度絞って始めることが必要でしょう。

先ほど紹介したモバイルシンクライアントツールはUSBポートに差し込むだけで自動的に専用の「SASTIK Collaboration Server」に接続、個人毎に設定された環境を使用しているPCのメモリ上でダウンロード展開するもの。従来のInternet-VPNでは会社のPCを個人に貸し出すことや、自宅のPCを会社用に使用するなどの情報セキュリティ上の問題がありました。また在宅勤務者向けに新たにシンクライアントを用意する費用もバカにはなりません。シンクライアントの簡易ツールを使えば自宅に高速回線さえあれば、自宅PCによる業務にも使えるセキュリティレベルが確保できると言えます。

しかし、モバイルシンクライアントツールにもいくつか課題もあります。例えば「利用者の操作によって、クライアントPC上にファイルを置くことができるため情報漏えいの原因になりうる」などです。セキュリティ上の大きな問題になる可能性があるため改善方法を検討中ですが、会社支給の携帯電話と同様、完璧な防御はできません。

テレワーク導入によるワークライフバランスの効果と克服すべきポイント整理すると、次のようになります。

テレワーク導入によるワークライフバランスの効果と克服すべきポイント

テレワーク導入によるワークライフバランスの効果と克服すべきポイント

育児関連制度からテレワーク、そしてワークスタイル変革に必要な情報技術と、ワークライフバランス推進には幅広い視野と多様な視点に立って考えてみることが必要なことご理解いただけたでしょうか。ワークスタイルの変革から進めるワークライフバランス推進、いかがでしょう、真剣に検討してみる価値があると思いませんか。