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ヘルシーカンパニーを目指して

2010年3月16日掲載
CSR推進部

1月19日、日本ユニシス関西支社において社内セミナーを開催しました。タイトルは「企業で取り組むメンタルヘルス」、講師は大阪ガス株式会社で統括産業医をされている岡田邦夫先生です。 産業医として30年の経験をふまえたお話を少し紹介しましょう。

社員が健康を害すれば会社の生産性に悪影響を及ぼし、やる気を出して働けば生産性は上がる、至極当然のことなのですが、あまりに基本的なことなので見逃してはいないでしょうか。企業で一番分かりやすい生産性低下の要因は「花粉症」だという調査結果があります。ハーバードビジネスレビュー2006年12月号に掲載された記事によると、社員数25,000人のA社社員1,600人を対象に調査したところ、花粉症と思われる「アレルギーあるいは鼻腔の問題」を持つ社員が59.8%を占め、花粉症による生産性の損失率が4.1%、年間平均損失額が181万ドル、約1.8億円となっています。

同じ調査でA社では13.9%の社員がうつ病の症状を訴えており、これによる年間損失額は78万ドル、約8,000万円にも上ると述べています。うつ病に関しては、一度うつ病に罹った人が回復し復帰した後も再度罹患する確率は6割、2度目の人の再発率は7割、3度目では9割となっており、再発率が非常に高いことが分かります。予防が重要、うつ病にならないための環境作りが大切なのです。

うつ病に関連する指標に自殺者数がありますが、日本では平成10年以降、3万人を超える自殺者が出ており、これは人口比率で考えても先進国の中で突出した数字になっています。岡田先生を訪れる相談者のうち、自殺を考えるほど深刻な状態になっている人には次のような4つの特徴があるということです。

  1. 業務過多による長時間労働での疲弊

  2. 過剰に重い責任による精神的負担

  3. 目標達成の難しさと未達成時の落胆

  4. パワハラや退職勧告などの人権侵害

最近、岡田先生が気になるのが3番目の相談で、成果主義がもたらす過度のプレッシャーは、古来農耕民族であった日本人には向いてないと感じるそうです。また、4番目のパワハラについては2009年4月に出された判決で労災認定がなされ、セクハラ・パワハラを原因とする自殺などでも労災認定される可能性がでてきました。過重労働や昇格によるストレス、叱責などがあり、本人のパーソナリティにも要因はあったと思われる事案でも会社への賠償責任が発生するため、組織長には安全配慮義務として幅広い監督責任が発生してくるのです。

岡田先生は、ストレスを受けたときにストレスを緩和するモデレーターとして次の4つのポイントを上げています。

  1. 自律性

  2. 人との結びつき

  3. 将来の見通し

  4. 体調

この業務は自分の努力と関係部署の協力でなんとかできると社員が考えられること、これが自律性の発揮です。同僚や関係する部署のメンバーは、自分の仕事に協力してくれると思えること、困ったときにも相談できる友人や上司・同僚などがいること、これが人との結びつきです。今はつらくても、我慢すれば将来には希望を持てる、社外の人から「あなたの会社は良い会社だ」と言われることで「現時点より先」や「外」に視点を移すことにより、考え方を整理できる場合もあるのです。そして自分の生理的、精神的な体調、これはやる気の基本だと言えます。

このように、うつ病になる前に対策を打ち、業務多忙や責任のある職位への昇進などでストレスを感じる場合にも、上司や同僚の協力でそれらに前向きに対処できる環境作りが重要だと言います。社員がやる気とやりがいを感じて仕事に取り組むことで、最大の顧客満足が得られる、というのが岡田先生の主張です。

健康管理は企業の社会的責任の柱です。健康増進プログラムを提供し健康な社員が増えていくことで、業務の生産性や経営効率の向上とリスク低減ができるはずです。また、医療費削減や地域雇用の増大などにより、社会への企業責任を果たすことにもつながります。健康増進、とい、会社生活の基本となる事項について、自分の健康は自分で考える、などと会社とは切り離して考えている方もいるかもしれませんが、業務遂行はもとより、社会人として、家庭人としても自分や家族の健康はすべての活動の基本です。今後も日本ユニシスグループでは社員の健康増進についても積極的に取り組んで行きたいと考えています。