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Foresight in sight

クロノロジー型 危機管理情報共有システム 災害ネット

事例紹介

2021年6月8日  

木更津市様

木更津市様:これからの災害対策は情報のデジタル化がポイントになる。クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」が情報共有スピードを飛躍的に向上。
人命救助から被災者支援まで、災害時の対応はさまざまな場面に及ぶ。その際、情報共有のスピードと精度は、的確な対応判断にとって非常に重要な要素となる。木更津市様では大型台風発生時の被災経験からそれを実感し、即座に抜本的な改善に取り組んだ。

SUMMARY

  • 情報共有スピードが格段に向上
    従来の手作業による情報共有と比較してそのスピードが格段に向上。上下左右の組織間情報の流れがスムーズに
  • 災害時の的確な状況判断を支援
    時系列によるクロノロジー方式の採用と自組織に紐づけた情報管理で、組織行動する際の状況判断に有効に作用
  • 避難者の方に寄り添った支援を実現
    避難状況の詳細情報をリアルタイム管理することで、避難者の方お一人おひとりの状況に沿った独自支援が可能に

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USER PROFILE

木更津市役所
所在地:駅前庁舎 千葉県木更津市富士見1丁目2番1号
    朝日庁舎 千葉県木更津市朝日3丁目10番19号
代表電話:0438-23-7111
職員数:1,014名(2020年4月1日現在)
本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」

災害時などに行われている「クロノロジー(時系列)で記録する」という行為をそのままシステム化することで、今何が起きているのかをリアルタイムで把握できる「災害ネット」。PCやスマートフォンから、時系列に沿って入力した情報をサーバーで一元化し、リアルタイムで共有することで、即座に状況が把握できるようになる。電話やメールなどさまざまな異なった方法で報告されてくる大量かつ最新の情報を、時系列でまとめた形で、自宅や外出先などからも確認できるため、情報の見落としが発生せず、迅速かつ適切な意思決定を下すことができる。

持続可能なまちを目指してオーガニックなまちづくりを推進

南房総、東京湾岸に位置する木更津市。市名「きさらず」の語源は古く古事記(「きみさらず伝説」)に由来すると言われている。童謡「証城寺の狸ばやし」の舞台として有名だが、古代から集落を形成して栄えた歴史を持つ。少子高齢化に伴って人口減少社会が到来している中、東京湾と上総丘陵などの豊かな自然に恵まれ、かつ都心へのアクセスの良さから定住・交流人口が増加。今では約13万6000人が暮らすまでに発展した。

同市は、持続可能なまちを目指し「オーガニックなまちづくり」を推進。未来に向けた発想によるイノベーションを意識しながら、市民のチャレンジが育まれ、人・もの・文化が循環する自立した地域づくりに取り組んでいる。その一環として、経済循環や脱炭素化、防災・減災をキーワードに、実現のためのアクションプランを策定。それに基づいた具体的な活動を展開している。同時に近年各地で発生している大型台風や集中豪雨、また、首都圏直下型地震などの自然災害の発生リスク増大に備えて、市民全員が安心して生活できるよう同市危機管理課を中心に地域防災力の向上を図っている。 

「令和元年の台風被害などの影響で市民の方の防災意識が非常に高まっています。このような背景も受けて令和2年度は当市としても防災に注力し、来年度もさらに防災力を高めていく方向です」と総務部危機管理課 米澤氏は市の防災力強化の方向性について説明する。

導入の背景と狙い 災害時の迅速な情報伝達・共有の必要性を実感

木更津市 総務部 危機管理課 危機管理官 梅木 竜彦氏
災害対策時における情報管理の重要性を痛感したのが、令和元年房総半島台風(台風15号)が発生した時のことだ。停電が2万3000件、復旧までに17日を要するなど大きな爪痕を残す結果となった同台風発生の際、被害状況報告や市民の方からの問い合わせが殺到することになった。

従来は電話で確認した情報をまず手書きで記録。それを関係部署に電話やFAXを使って伝達・共有していた。しかしその方法では圧倒的に処理速度が遅く、情報の記録・伝達が情報の発生量に追い付かないため、いくら頑張っても処理が間に合わない。その結果刻々と変化する状況を災害対策本部がリアルタイムで把握することが難しくなってきた。

『この方法ではだめだ! 今こういうことをやっているような時代じゃない』と感じました。やはりシステマチックな発想で真剣に災害対応のことを考えていかなければならないと思いました。今回の被害は大きなものではありましたが、幸いにして停電で済みました。しかしもし多くの人命が脅かされるような大規模災害が発生した場合、とてもじゃありませんが今の方法では対応しきれない、という現実を目の当たりにすることになりました。と総務部危機管理課 危機管理官 梅木氏は当時の印象を振り返る。

さらに、災害対策本部を通らずに直接各課に入った情報は、通常担当課同士で情報をやり取りしたり、対応依頼したりすることになる。その結果本部に情報が集まらずに、上記以外の関係部門に必要な情報を共有できなかったり、対応が部分最適になってしまったりということが起きてしまう。また、本部から関係部署などに対応依頼したものでも、事後の状況を経緯確認しようとすると逐一対象部門に確認しなければならず、災害時にはそのような作業負荷は極力減らしたい。

木更津市様ではこのような実体験を通じて、災害発生時などに迅速に関係者間で情報共有できる仕組みの必要性を強く感じるようになった。

選定理由 自衛隊での実績と信頼があるクロノロジー方式。災害ネットを迷わず選択

「私は元自衛官なので、自衛隊でのさまざまなミッションを通じて、膨大な情報を関係組織全体で共有することの重要性を身に染みて感じてきました。自衛隊ではクロノロジーの考え方に基づいた情報管理システムが構築されており、実際の災害派遣などでも活用されています。私も若い頃からずっと使ってきたシステムで、これに似たものがないかと探してみたところ日本ユニシスの災害ネットに行きつきました。見つけた時は感動し、詳しく内容をお聞きするとイメージどおりのものでしたので、これは使えると思い導入を検討しました」と梅木氏は検討理由を述べた。

災害ネットにおけるクロノロジーの考え方は、まさに自衛隊での情報管理手法を参考にしているので、根本的な考え方は同じものだ。システム導入前にその投資対効果を測るのには一定の難しさがあるが、同様のシステムの自衛隊での長年の実績を考えれば選択に迷いはなかったという。

それでは具体的には災害ネットのどのような点が緊急時や災害時の情報管理に適しているのだろうか? クロノロジーによって情報を時系列で管理できることはもちろんだが、それに加えて利用するユーザーの組織構造に沿った情報管理が可能な点だ。

一般的な情報管理システムやコミュニケーションツールは、個人間での情報コミュニケーションには優れているものが多いが、組織と結び付けて管理することがあまり得意ではない場合が多い。一方で災害ネットでは、自社の組織の系統図に合わせて自分が送りたい情報を送ることができる。例えば、各担当部署が独自に入手した情報を災害ネットに入力して本部に報告することで、必要な部署全体に情報を共有できる。つまり、その事象がどこで発生しそれに対してどういう措置がなされたのかに関して、関係者各署すべてで共通認識を得ることができる。

「自衛隊でも指揮官が状況判断する際にはまず、情報を正しく把握する必要があります。的確な状況判断のためには情報が最も重要な要素で、それに基づいて自らが今やるべき行動を選択、決定し、そして行動に移します。災害ネットはそのような情報把握から状況判断までの流れに沿って作られており、組織で行動する際に有効に働くように出来上がっていると思います」と災害ネットの有用性を梅木氏は評価する。

導入効果 災害ネット導入で情報共有スピードが格段に向上、事後検証も可能に

災害ネット導入に当たってはどのような準備が必要だったのだろうか。

「システム自体は完成度が高いので根本のところは特に手を加えていませんが、我々の使い勝手が良いように市役所の組織系統図に合わせて組織区分を変更していただきました。また、災害対応の際に重要となる避難所の情報を管理できるように工夫をしました」と導入前のシステム準備に関して米澤氏は説明した。

避難所の情報管理については主に2つの機能を使っている。1つ目は避難所開設時における現地の確認状況管理だ。避難所を開設する際にはまず市の職員が現地に赴いて、地震などの被害で建物が傷んでいないか安全を確認する義務がある。確認した状態を共有する手段として集計表機能を応用している。集計表の項目をチェックリストのように用いて、「壁の亀裂がないか?」などの各確認項目に関して、それぞれ異常の有無をチェックしていけるようにした。そのチェックリストの内容に基づき対象の避難所が開設可能かどうかの結論を出し、同時に災害対策本部に報告もできるようにした。

もう1つが各避難所における避難者の方の人数管理だ。避難者数はリアルタイムで刻一刻と変化していく。性別や各グループの人数、高齢者や妊婦の方の人数、ペットの数など細かな情報をリアルタイムで更新・共有できるようにした。どの避難所にどのような方が何人いらっしゃるのかを把握できれば、全体の状況から各避難所の適正化を図ることができる。さらに各々の避難者の方の立場や状況に寄り添ったきめ細やかな支援が可能になる。加えて運用面の準備も必要だ。実際のシステム稼働後にシステム導入効果を上げるためには、各職員がしっかりと使いこなすことが条件になる。

「職員全員が、災害ネットの使用用途を理解し使い方を理解していなければ、せっかくの良いシステムも宝の持ち腐れになってしまいます。そこでまず、導入目的を理解してもらうために勉強会を実施。その上で、実際に災害ネット利用を組み込んだ防災訓練を行い、使い方の習熟度を上げていきました」と梅木氏は災害ネットを有効活用するために必要な準備について説明する。
木更津市 総務部 危機管理課 米澤 聡史氏
2020年7月および9月に、水害の発生を想定した防災訓練を実施。訓練シナリオに沿って、大雨洪水警報や特別警報が発令され、災害対策本部が立ち上がる想定で訓練は進んでいく。そして実際に災害ネットを使って災害状況などの仮情報を流し、それに基づいて各課・担当者が今執るべき行動を判断する実践的な訓練だ。避難所などではスマートフォンを使って情報を入力・共有。本部では、共有された情報をPCで確認すると供に壁面へ投影し、皆で同じ情報を確実に目で確認できるようにした。リアルタイムで最新情報が共有されるデジタル版ホワイトボードのようなものだ。訓練での災害ネットの効果を実感することで、災害時の情報管理の効率化に対する職員の方々の期待感も増しているという。
令和2年に実施した災害ネットを使用した災害対策本部運営訓練の風景(提供:木更津市様)
プロジェクターで災害ネットの画面を映し(写真右)、本部内で共有しています。モニターで災害ネットのクロノロ画面を映し出しています。 災害対策本部の全員が情報を確認できるようにしています。
市内で行った防災訓練の一風景です。(提供:木更津市様)
市内で行った防災訓練の一風景
2021年1月の本番稼働後も、継続的な訓練や勉強会を実施することよってさらなる災害ネットの活用と防災対策力の強化を図っている。早速4月から災害ネットの勉強会を新たに開催するなど、年間を通しての訓練計画を策定。現在はその準備の真っ最中で、もしもの場合は対策本部の立ち上げと同時に、いつでも災害ネットによる情報管理・共有を開始できる準備を整えている。実際に災害ネットを使った場合の災害時の情報管理は、従来とはどのような差が生じると考えられるのだろうか。

「情報共有のスピードというのが全く違うと思います。対策本部から担当する各課への情報共有・伝達と、逆方向の各課から対策本部への情報の流れも作ることができます。これにより情報共有のスピードが向上し、処理できる情報量も圧倒的に増えるでしょう。また、従来はどの課がどこに情報を流して、結果どうなったのかの対応経緯を記録することができませんでした。しかし災害ネットを使うことによってそれらが自動的に記録されます。これにより、その対応が正しかったのか? もっと良い対処方法はなかったのか? などの検証ができるようになります」と米澤氏は災害ネット導入による効果を期待する。災害時や訓練時対応の事後検証は、継続的な災害対策の改善や強化につながっていくだろう。

「本番稼働以降、災害以外のさまざまな事態での災害ネット活用方法を想定して、独自の訓練を実施しているところもあります。非常に良い傾向だと感じています。具体的なことは各課にお任せしているので詳しくは確認していないのですが、これから始まるワクチン接種の場面での情報連携や連絡をテーマにして自主訓練しているようなところもあるようです。訓練モードを使っているので各課で自由に利用でき、かつ緊急時は本番モードに切り替えて使用するので特に影響はありません」と梅木氏は現場での活用状況を述べた。

確かに災害ネットの活用は何も災害時だけに限定する必要はなく、組織間で縦横かつ迅速に情報共有が必要な事態が発生した場合には、非常に有効なツールとして機能するはずだ。

今後の展望 これからの災害対策はデジタル化がカギになる

実際に使用するユーザー視点で見た場合、災害ネット活用のポイントは次のような点にある。

「フリーテキストで情報を入力するシステムですので、5W1Hなどを念頭に置いて簡潔に物事を表現して入力することがポイントです。訓練でもこのことを重視して行うのが重要になります。そうでなければ災害ネットを十分活かすことは難しいでしょう」と梅木氏は活用のポイントを述べた。

災害ネットが本番稼働してまだ2ヶ月あまり。今後一層効果的に活用するためにはまだ改善の余地があるが、木更津市様では災害時の情報管理システムとしての発展型のイメージをすでに持っている。

「災害時対応では視覚的に把握できる情報、すなわち地図情報が非常に重要です。実際に行動する上で、どこで火事が起きているのか? どこの道路が壊れているのか? などを地図上で確認できればより迅速に対応でき、特に一刻を争う人命救助には有効です。現在は災害対策本部で地図上にプロットしていますが、災害ネットで入力した情報が直接地図システムなどと連携できるようになれば非常にありがたいと思います」と梅木氏は災害ネットの発展型をイメージする。

さらに、現在避難所に避難されてきた方のお名前や住所などに加えて、ご高齢かどうか、妊娠されているか、お子様がおられるかなど、被災時の支援に特に必要な情報を避難者カルテとして管理しているが、それらの情報も同時に管理できるのが理想だ。

「災害対策において最も重要なのは人命です。人命救助ではやはり自衛隊や消防が主にその能力を発揮します。そこで市役所が主に果たすべき役割ということになると、避難者に寄り添って、お一人おひとりきめ細かな支援をすることだと考えています。そのためには、非常に広範囲な生活のための情報収集が必要になってきますが、そのような個別情報に基づいて被災者の方に寄り添った支援ができる状態が理想だと考えています」と今後進むべき方向を梅木氏は語った。

これからの災害対策における重要なキーポイントの1つがデジタル化だという。例えば国の政策と方向を合わせてマイナンバーカードと連携したり、先程の被災者カルテや家屋の損害/被災情報などをデジタル化することで、人的な被害のみならず罹災証明や住宅の再建支援などを含めた総合的な災害支援をより迅速かつ細やかに行えるようになるだろう。
木更津市 米澤 聡史氏、梅木 竜彦氏

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