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Foresight in sight

クロノロジー型 危機管理情報共有システム 災害ネット

事例紹介

2021年5月12日  

長崎空港ビルディング株式会社様

長崎空港ビルディング株式会社様:空港を安全で円滑に運営するためのさまざまな情報を一括管理。クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」が災害時のお客さまへの情報提供やスタッフの空港運営を支援。
景観の美しさが特長の海上空港、長崎空港。しかし同時に海上空港ゆえの特有のリスクも抱えている。過去の実際の経験から得た教訓と知見を活かし、災害対策強化を目的とした情報管理改革に乗り出した。

SUMMARY

  • 管理部門への必要な情報をワンストップで迅速に提供
    フライトやアクセス状況などさまざまな情報をワンストップで確認。緊急事態発生時でもお客さまに必要な情報を迅速に提供。
  • 遠隔地から現地の状況把握が可能に
    災害ネットにより情報を一元化。災害発生時に交通遮断などによって現地に赴くことができなくても、遠隔地から状況確認や判断が可能に。
  • 災害時の問い合わせ集中を回避
    施設保守部門など災害時に状況照会が発生する部門に問い合わせが集中することを回避。本来の施設復旧作業などへリソースを集中できるように。

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USER PROFILE

長崎空港ビルディング株式会社
設立:1959年(昭和34年)2月16日
資本金:4億5,300万円
本社所在地:長崎県大村市箕島町593番地
社員数:285名 (2021年4月1日現在)
事業内容:
・貸室並びに施設の賃貸業
・航空事業者、航空旅客並びに航空貨物に対する役務の提供
・広告宣伝業
・航空代理店業務
・食堂及び喫茶店並びに売店経営
・旅行業法に基づく旅行業
・損害保険代理店業務
・食品・日用品雑貨・スポーツ用品の販売および輸出入業
・駐車場運営業
・催し物の企画・運営およびチケット等の販売
・その他附帯業務一切
本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」

災害時などに行われている「クロノロジー(時系列)で記録する」という行為をそのままシステム化することで、今何が起きているのかをリアルタイムで把握できる「災害ネット」。PCやスマートフォンから、時系列に沿って入力した情報をサーバーで一元化し、リアルタイムで共有することで即座に状況が把握できるようになる。電話やメールなどさまざまな異なった方法で報告されてくる、大量かつ最新の情報を、時系列でまとめた形で、自宅や外出先などからも確認できるため、情報の見落としが発生せず、迅速かつ正確な意思決定を下すことができる。公的機関をはじめ航空・鉄道業、ライフライン事業、金融業、製造業などさまざまな業界での採用が進んでいる。

世界初の本格的な海上空港としてその美しい景観が魅力

長崎空港は長崎県の中央部、大村湾内に1975年世界初の本格的な海上空港として誕生した。1972年から約3年の期間を費やして島を埋め立てて約154万㎡の用地を造成。陸地との間には970mの連絡橋を建設してアクセスを確保した。2,500mの滑走路を持つ空港として1975年供用を開始。国際便の就航、滑走路の延長(3,000m)を経て国際空港として現在に至っている。その長崎空港の旅客取扱施設の運営を一手に担うのが長崎空港ビルディング様だ。同社では「空港を利用されるすべてのお客さまや地域の皆さまに愛される『あたたかみのある、楽しい空港づくり』をテーマに、長崎と世界の空を繋ぐ『Air-port(エア・ポート)』の役割を通じて、持続的かつ安定した成長を図り、地域活性化に貢献すること」を経営ビジョンに掲げている。

「長崎空港の一番の魅力はやはり海上空港ならではの景観の良さです。実際に来て見ていただくと分かりますが、非常に美しい空港です」と代表取締役社長 幸重氏は空港の魅力を伝える。

美しい景観が魅力の海上空港だが特有のリスクも存在する。そのため独自の安全対策も欠かすことができない。停電に備えた72時間対応の自家発電装置の設置や、風水害に備えた設備・施設設置位置の見直しなどの必要な安全対策を講じている。

導入の背景と狙い 集中豪雨による空港内の滞留者発生が教訓に

海上空港に特有のリスクにもさまざまな種類がある。上記の対策のみですべてに対応するのは難しい。

「例えば、多くの方がまだ記憶されていると思いますが、台風による強風が原因でタンカーが関西国際空港の連絡橋に激突した事故がありました。これは海上空港としての弱点を露見することになり、私共も大きな危機感を持つに至った事例でした。その他にも地震や風水害などさまざまな原因で各地の空港が危機的状況になる事態が発生しています。そのような状況を鑑みて、さらに堅牢な対策を講じておく必要があるだろうと考え解決策を模索していました」と幸重氏は当時の状況を語った。

そのような矢先に起こったのが、2020年夏の豪雨による滞留者の発生だ。空港自体は正常に機能していたが、空港と長崎市内などの周辺との地上交通が寸断。バスなどの公共交通をはじめ自家用車も動けない状態となった。そのため到着してもそこから出ることができずに、空港内に滞留することになってしまったお客さまが30名ほど発生した。危機事案発生時、従来は電話やFAXを使って情報を伝達し、それをホワイトボードに書き出すという方法で情報を管理していたが、そのやり方では情報共有のスピードに遅れが発生した。

「不測の事態が発生した際、危機管理体制を立ち上げた後、各部署に入る情報をしっかりと一元的かつ的確に管理できるかが課題になります。加えて必要な情報がお客さまにタイムリーに提供できるかがさらに大きなテーマになります。豪雨による滞留者が発生した時、周辺への二次アクセス情報が関連部署には入っていたのですが、情報の一元管理が不完全であったために、それらの情報を迅速にお客さまに伝えることに遅れが生じました。このような背景があり、危機事案発生時の情報管理をより大きな課題として認識するようになりました」と当時の模様を幸重氏は振り返る。

加えて昨今、感染症拡大防止などの観点から、人が一カ所に集まって緊急事態などに対応するということ自体が新たなリスクを発生させる可能性がある。そのため「集まらなくても離れた場所同士でも確実に情報共有でき、状況の把握や指示・命令ができるかどうか」ということも重要なテーマになってきている。
長崎空港ビルディング 代表取締役社長 幸重孝典氏

選定理由 現場での使い勝手に差が出るモバイル対応機能などが採択要因に

上記のような課題に対する解決策として日本ユニシスから提案したのが、クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」だ。

「災害ネットが先ほど申し上げたような豪雨による滞留者の発生などをはじめとする危機事案発生時における情報管理上の課題に対して有効ではないか、と考え導入を検討しました。ただし同様のシステムの導入は初めてのことでもあり、導入に際しては事前に使ってみて検証をしたいと思っていました。災害ネットは本導入前にトライアルができるということでしたので、その期間を活用してさまざまな面からその有効性を検証した上で最終決断をしました」と幸重氏は災害ネット採択時の経緯を説明する。

検証などに利用したトライアル期間は約3カ月。具体的にどのような検証を行ったのだろうか。
長崎空港ビルディング 施設部施設保安課 係長 安田浩二氏
「他の情報共有ツールなどとも比較しましたが、やはり災害時の情報管理にフォーカスして開発しているために、災害ネット以上に使いやすいものは見つかりませんでした。また、特にスマートフォンなどのモバイル端末での使い勝手が良いことも大きな採用のポイントになりました。例えば、現場の状態を簡単に写真で共有できることは、緊急時に現場を駆け回るスタッフにとっては非常にありがたい機能です」と施設部 施設保安課 係長 安田氏は実際の検討内容を明らかにした。

空港では多くの現場スタッフの活躍がその運営を支えている。従って机上のPCよりもモバイル端末での使い勝手や操作性が重要になってくるのは当然の流れだと言えるだろう。さらに災害ネットは、国際空港や鉄道会社などの交通インフラ企業にも導入されていた。このようなクリティカルな業務を担う同業種での利用実績も、安心して採用できる要因となった。

導入効果 災害ネットによる情報の一元管理で、包括的かつ迅速な状況判断とお客さまへの情報提供を実現

正式導入前には、機能検証に加えてテスト運用による導入準備も進めた。

「トライアル期間を使って、昨年(2020年)9月から我々が所属する施設部のみでテスト運用を行いました。台風発生時などに実際に使ってみて、どのように時系列に情報が並んでいくのかを確認しました。また、文章だけでは施設の破損状況などが分かりづらいところが、写真を使うと一目で状況を把握できるなど、使い勝手の部分がポイントになることも確認できました。さらに、動作確認や操作方法など『これなら誰が使っても問題ない』というレベルまで検証した後、テスト環境をそのまま本番環境に移行して本格運用に切り替えました」と安田氏は本番稼働前の運用準備について説明した。

現場スタッフへの教育は日本ユニシス作成のマニュアルに加えて、独自の簡易版マニュアルを作成し効率良く研修を実施。日本ユニシスが作成した動画による操作解説も活用。こうして総勢約300名の全スタッフの利用を前提とした準備を整え、昨年12月に正式に稼働を開始した。

正式稼働直後、今年初めに2度にわたって発生した大雪が、早速災害ネットを実践で活用する場となった。従来の情報管理と比較してどのような変化が現れたのだろうか。

「課題であった空港への二次アクセス情報をしっかり管理・共有することができました。市内で雪が降り始めた時には空港では雪が降っておらず、もし情報がなければ空港内での何らかの対応が必要か否かの判断できませんでした。しかし、『空港へ向かうことができない』という情報が市内にいる職員から入って来ていたため、事前に空港へ来るお客さまの到着が大幅に遅れる可能性がある前提で対策を講じることができました。その後空港でも徐々に雪が降りはじめたのですが、『各拠点で何が起こっているのか?』という情報を一元的に管理することで、さまざまな状況に対して先手を打つ対策ができるようになりました」と幸重氏は災害ネットによる情報の一元管理の効果を説明する。

また、空港サービスを支えるスタッフの安全や、空港までのアクセスを確保することも緊急時には極めて重要になる。
長崎空港ビルディング 施設部 副部長 中川内裕二氏
 
「空港機能のみならずスタッフ社員の安全を守るために、空港までのアクセスや従業員駐車場からターミナルビルまでの降雪状況などの情報を収集し、必要な場合には『ここは滑りやすい』など、写真を添えて注意喚起することもできました。また、空港は年中無休ですので交代で休んでいるスタッフもいます。自宅などからでも今空港で何が起こっているのかが把握できることも、災害ネット導入による大きな効果だと感じました」と、施設部 副部長 中川内氏はスタッフ社員の立場からの情報共有の重要性を訴える。
スタッフ社員からも、休日で遠隔地にいる場合などでもタイムリーに状況確認ができ、例えば早めに出勤するべきかどうかなど、自らの行動の判断にも役立っているという声が挙がっている。

「私自身は長崎市内に居住しているため、今年の大雪の際は足止めされ空港に来ることができませんでした。普通なら現場の状況がなかなか分かりづらい状態になりますが、災害ネットのおかけで何が起こっているのかがすべて自宅でも把握でき、適切な判断と指示をすることもできました。そういう意味では大きな恩恵を受けたと思いますし、災害ネットがなければ恐らくそういった状況を作り出すのは無理だったのではないでしょうか」と経営者視点からも幸重氏はその重要性を説明する。

元々の課題であった緊急時のお客さまへのスピーディーな情報提供に関しても、案内所スタッフが災害ネットにアクセスできるようにしておくことで大きく改善された。案内所で二次アクセスの状態やフライトの情報などをワンストップで確認できるようになったことで、内容によって逐一担当の部署に問い合わせる必要がなくなり、さまざまな情報を迅速に案内できるようになった。その他にも、施設部への緊急時の業務負担軽減の効果が現れている。
「施設部は空港内設備の管理を担っていますので、災害発生時などには施設の状態などに関する問い合わせが集中します。災害に対する対応に加えてそれがさらに大きな業務負担になっていたのですが、災害ネット導入後は各人が状況を確認するようになりました。その結果、ほとんど問い合わせが発生しなくなり、施設復旧などに集中できるようになりました」と安田氏は災害ネット導入後の施設部の状況を語る。

今後の展望 今後は必要な情報が欲しい時に届く情報のパーソナライゼーションがポイントに

今後さらに災害ネットを活用した情報管理で効果を上げるためには、運用上のルールづくりがポイントになる。

「初めて使用した際には、全員が次々に情報をランダムに登録したために、どれが何の情報なのかが整理がつかない状態になりました。そこで枝番を使ってナンバリングできる機能(続報機能)を活用し、情報のカテゴリーごとに枝番を分けるようルールを設定しました。交通情報は何番、人的被害は何番などあらかじめ定めた枝番を付けることで、その情報がどのような内容なのかを即座に判断できるようにしました」と安田氏は災害ネット活用のポイントについて述べた。
さまざまな訓練も、今後は災害ネット利用が前提となってきている。

「年に1回、当社役員も含めた全体訓練を実施しており、そこでは全体の指揮命令系統の確認・訓練や、組織している自衛消防隊の訓練、また避難誘導や消火訓練などを行っています。災害ネット導入後は、同システムを使った危機管理体制を採るようになっており、その前提で災害時の担当や役割を明確にしています。まだシステム立ち上げから時間があまり経っていませんので、より迅速で確実な災害対応を実現させるために、手順やルールを調整しながら進めている段階です」と施設部 施設保安課 課長 桶屋氏は現在の訓練の模様を説明する。
長崎空港ビルディング 施設部 施設保安課 課長 桶屋俊一氏
訓練および実践で災害ネットを利用した後は毎回反省会を行い、うまくいった点と修正すべき点を洗い出している。修正すべき点はむしろこれから使い方などを改善して災害対応の精度を上げるための良い材料となっている。災害ネットのようなシステムは、運用との連携がその導入効果に大きく影響を及ぼす。従って使いながらどんどん使い方を改善していくのが良策だ。

「近年、毎年と言っていいほど我々の想定を超えるような災害がどこかで発生しています。そのような状況に的確に対応するためには、トレーニングやIT環境などを含めた万全の危機管理体制の整備が必要になります。それによりはじめて、災害時などの緊急時においてもお客さまに本当に安全・安心に利用いただける空港の運営が可能になると考えます。今回災害ネット導入によって、さまざまな情報の一元管理を実現することができました。これはこれで非常に重要な意味を持ちますが、次の段階として今度はこれらの一元的に集約された情報を、いかに必要な時に必要な形でお客さまに届けるかが課題となってきます」と幸重氏は早くも次の情報管理・活用のビジョンを語る。

具体的には次のようなイメージだ。長崎空港を何度もお使いいただくお客さまなら良いが、そうでない場合はメールなどを登録してもらい情報発信するのは難しい。そこで例えば、空港内に設置している大型ディスプレイをうまく活用して、必要な情報をタイムリーに表示させる方法があれば1つの解決策になる。その情報を必要としているお客さまに対してもれなく確実に情報を伝えることができるのが理想だ。

「その情報を知ってどう行動するかは最終的にはお客さまの判断に委ねることになります。しかし『それを聞いておけば良かった…』というような事態にならないことが肝心です。お客さまがしっかりと判断するのに足る情報をスピード感を持って提供することが危機管理の観点からは非常に重要です」と幸重氏は緊急時における情報発信についてのあるべき姿を述べた。

また、従来は人による手厚いサービスを提供していくことを長崎空港ビルディングは大切にしていたが、感染症拡大の影響などにより必ずしも人手に頼らない良質のサービスを提供していく必要性も生じてきた。そのような観点からも、「どのような内容の情報をどういう方法で発信していくか」が危機管理のみならずお客さまの顧客体験(カスタマーエクスペリエンス:CX)を向上させるために重要な要素になってくるだろう。
長崎空港ビルディング 中川内氏、安田氏、幸重社長、桶屋氏

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。