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事例紹介

eラーニングはいかにして成長戦略に寄与するか

株式会社ニッセンホールディングス 様

2013年06月03日

SaaS型 企業向け教育プラットフォーム提供サービス LearningCast

アパレルからインテリア、ビューティー、雑貨、食品と暮らしを彩る多種多様な商品を扱い、年間の総発行部数が約2億冊の“ニッセン”発のカタログ群。そこで蓄積された3,000万人を超える顧客から得られる膨大な情報は、緻密で確度の高いデータベースマーケティングを可能にし、インターネット・カタログ通販事業の枠を超えて美容、金融、保険、宝飾品などの幅広い事業分野において、グループ各社の躍進に結実している。そんなニッセングループ全体の成長戦略をグランドデザインするのが株式会社ニッセンホールディングス様だ。企業におけるコンプライアンスの見直しが迫られていた2010年初頭、むしろこれを社会的信用度の向上、顧客からの信頼獲得といった経営基盤安定化のための戦略的チャンスと捉え、グループ全社の教育体制を強化する方針を打ち出した。そこで企業内教育研修を支援するeラーニングシステムの活用が検討されたが、実はシステムの導入を巡って、その“リスク”に対する危惧の声もあったという。
経営管理室長の亀井雅信氏に、導入の経緯、導入後の効果と展望について伺った。

INTERVIEW

執行役員 経営管理室 室長 亀井 雅信 氏

執行役員
経営管理室 室長
亀井 雅信 氏

USER PROFILE

株式会社ニッセンホールディングス様のロゴマーク

設立:1970年4月10日
資本金:112億1,841万円(2012年12月20日現在)
本社所在地:京都市南区西九条院町26番地
社員数:1,476名(連結・2012年12月20日現在)
事業内容:ニッセングループ成長戦略の立案機能、ニッセングループポートフォリオの設計とM&A等による
新規事業開発機能、ニッセングループ経営執行の監督機能

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更される可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客さまにご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了承ください。

導入の背景 「導入リスクの解消」がシステム選定のポイントに

ニッセングループの総社員数は1,476名(従業員数は4,960名/2012年12月20日現在)。組織の規模が大きくなるほど内部統制は困難になる。が、たった一人の不品行や誤判断がグループ全体の企業経営に深刻なダメージをもたらしかねない。

「コーポレートガバナンスを重視する当社ではこれまでも従業員教育には注力してきましたが、企業コンプライアンスの重要度が増す時勢下、これをさらに徹底し、全従業員にこれまで以上に“人として、そして社会人としてあるべき姿”を修得してもらう必要がありました。より質の高い企業経営のためにも、コンプライアンスに対する全社的な意識統一と底上げが急務と考えたのです」(亀井氏)

亀井雅信氏の写真

とはいえ、研修のたびに全国・海外から従業員を招集する従来型の集合研修では、時間と経費ばかりがかさんでしまう。よりスピード感のある効率的な教育体制を確立するにはeラーニングの導入が不可欠だった。そこでベンダー4社のeラーニングシステムを対象に、2010年2月より選定作業を開始した。
亀井雅信氏の写真
「まずは各社のデモ版を導入して、ユーザビリティやコスト、サポート体制などを総合的に比較しました。ところが一方で、『システムを導入しても結局活用しきれないまま無用の長物になってしまうのではないか』という懸念の空気もありました。サーバーを設置すれば新たな資産を抱えることになる。それが無駄になるリスクへの当然の危惧でした」(亀井氏)

システム導入に対する慎重論がある中、それでも新たな教育体制確立に向けての選定作業は続けられた。そうして4カ月に及ぶ検討を重ねた末に選ばれたのが、企業内研修業務の統合的な運営・管理を可能にするSaaS型eラーニングシステム『LearningCast』だ。

「サポート体制の充実など選定理由はいろいろありましたが、やはり導入リスクを回避できる点は大きなポイントでした。SaaS型の『LearningCast』なら、導入後にそれが利用されない事態に陥ったとしても契約終了の時点で利用をストップできますし、逆に活用性・有用性が認められた場合は契約を更新すればいい。細かな機能調整などの要望に対する柔軟なサポート体制もありましたので、先々、単なる教育研修の範疇を超えた様々な活用法が見込めることも魅力でしたね」(亀井氏)

選定理由 研修の効率性や迅速性に加えてクオリティも向上

『LearningCast』は、研修の作成、申込管理、実施、進捗照会、結果集計、受講履歴照会といった作業の効率化を支援し、研修の運営・実施に関わる作業負荷を大幅に軽減する。同システムを利用してニッセンホールディングス様が最初に実施したのが、個人情報保護研修だ。グループの主要事業会社でプライバシーマークを取得しているため、全グループで年に一度、同研修を全従業員対象に実施している。データベースソフトで作成した既存のアンケートシステムでは、研修の実施者や各部門長などの照査者が、従業員一人ひとりの受講状況をリアルタイムで把握できなかったという。

「そのため実施者側がシステム上で集計作業を行った後に進捗率をメールで送信するまで、部門長は未受講の部下を督促することもできませんでした。それが『LearningCast』導入後は、受講状況や履歴を即座に把握できるようになり、結果として研修・テストの修了率が向上。受講する従業員の側も採点結果をすぐに確認できるため、どこを間違え、何に対する理解が低いのかを明確に認識できるようになりました」(亀井氏)

以前は“YES‐NO形式”に限られていた受講者へのアンケートが、今では記述式、択一式、複数選択式と幅広く作成できる。コンテンツは全てプレゼンテーションソフトで作成したものをHTML化して配信しているため、海外駐在の従業員でも国内と同じ研修を支障なく同時に受講できるようになった。個人情報保護研修は期間内に確実に遂行しなければならないものであるだけに、その効率化、迅速化には大きな効果があったと亀井氏は振り返る。研修を実施した人事担当部署でも、個人情報保護に対する社内全体の理解度が深まったという実感が得られたという。
「通常新しいシステムを導入すると、順応するまでの間ユーザーには負荷がかかりやすいものです。そこで導入当初、受講者側からの問い合わせがあることを想定してヘルプデスクを準備していたのですが、それも杞憂に終わりました。ウェブブラウザ上で直感的に操作できるせいか、質問や確認の類いはほとんどありませんでしたね」(亀井氏)

ユーザビリティの面で高い満足が得られた一方で、見直すべき点もあった。照査権限の設定について、照査権を持つ部門長などの監督者から要望があったからだ。 「グループ各社は組織形態が微妙に異なっており、一人の上司が複数の部署を監督しているケースもあります。そのため、『どの部下の進捗まで照査できるか』といった権限設定を細かく調整する必要があったのです。要望を出すと、その改善にすぐ対応していただけて、今では各部署の事情に応じて柔軟に設定を変更できるようになりました。」(亀井氏)

『LearningCast』を導入したことで、それまで困難だった研修自体のクオリティ向上も図れるようになったという。例えば人事・労務・経理・総務などの管理に関する研修に、『5分でわかる』と銘打ち、受講者のわかりやすさ、手軽さ、親しみやすさを重視したコンテンツをオリジナルで作成した。

「この研修は管理職クラスの人は理解しておかなければならない基本的な内容を扱っていますが、意外に修得されていないケースが見受けられていました。そこで実施者側の伝えたいことがブレずにしっかり伝わるよう簡潔に要点を絞り、イラストも交えた単純明快なコンテンツを作ったのです。すると研修・テストの実施案内を配信後、時をおかずに次々と研修が終了されていくのが管理画面で確認できました。eラーニングが社内の一人ひとりに着実に浸透しつつあることが実感できた瞬間でした」(亀井氏)

サービス概要

導入の効果 「QSC」の向上にも「LearningCast」を活用

亀井雅信氏の写真


ところでニッセンホールディングス様では、グループのさらなる進化・発展の柱の一つとして、“QSC”の向上に注力している。“QSC”とはQuality(商品品質)、Service(サービス品質)、Clearness(わかりやすさ)のことで、 これを向上させてお客さまの支持をアップさせていくために欠かせないのが、顧客と直接コミュニケーションを取るコールセンタースタッフのクオリティアップだ。

「スタッフ一人ひとりの商品知識が向上することにより、お客さまの嗜好やニーズ、流行、季節性などを踏まえたタイムリーで説得力のある付加価値の提供が可能になります。そこで現在『LearningCast』を活用することで、お客さまニーズに沿った、きめ細やかな付帯提供サービスが実施できるようスタッフ一人ひとりの応対品質向上を図っています」(亀井氏)

まさに「QSC」の向上にこだわる“ニッセン”だからこその活用法と言える。このように、『LearningCast』を単なる“人事・教育ツール”に終わらせず、様々な部署でそのニーズに応じた活用をしてもらうというのが導入当初からの構想だった。実際、「こんな使い方はできないか?」という現場からの問い合わせが増えている。最近では、品質管理に関わる部署が、顧客満足を高めるための商品品質向上を目的とし、素材からデザインまで商品知識を高める研修のために『LearningCast』を利用した。

「これまでは組織における階層単位の研修が中心でした。今後は各階層の底上げと同時に、部門や従業員個々のスペシャリティに応じた専門分野特化型の研修を増やしていきたいと思っています。組織の縦軸/横軸のニーズを満足させる幅広い研修の提供によって、より厚みのある組織が出来上がっていくのではないでしょうか」(亀井氏)

今後の展望 最大の狙いはグループ全従業員のモチベーションアップ

『LearningCast』を導入したことで、教育研修の効率性、迅速性、クオリティの向上に加え、これまでの研修のあり方さえも見直されつつある。『LearningCast』導入の端緒となった“コンプライアンスの強化”という役割に関しては一定の成果も上がりつつある現在、活用の幅はさらに広がりを見せそうだ。

「繰り返しになりますが、人事部が研修のために使うツールという枠を超えて、幅広い目的のために活用できるものにしていきたいと思っています」(亀井氏)

従業員一人ひとりのモチベーションアップに貢献するツール。それが今、ニッセンホールディングス様が考える理想のeラーニング像だ。グループ全体の成長戦略に不可欠な“人的資産”の充実化という課題が、『LearningCast』に期待されている。

「人事教育というのはどんなことがあっても最終的には“人対人”、人間どうしのコミュニケーションが人を動かしていくものです。モチベーションアップも同じ。そうした最も基本的な活動を最大限に補完してくれる機能として、『LearningCast』にはおおいに期待しています。具体的な活用法はまだ模索中ですが、例えば先の品質管理に関する研修では、国内外、いつ、どこにいようとも品質に関わるメンバーにはそれを単純な知識修得だけの場に終わらせないためにも、『LearningCast』によるeラーニングと従来型の集合研修をミックスした形で実施しています。『LearningCast』はまさしく弊社のブランドメッセージである“いつでも、どこでも、あなたのもとへ‘ちょっといいな’をお届けします”を実践できるツールで、そしてこれからもグループ全体の企業経営に最大限に活かすこと。それが我々の取り組まなければならない大きな課題の一つであり、そのためのサポートを今後も日本ユニシスさんには期待しています」(亀井氏)

*LearningCast/ラーニングキャストはBIPROGY株式会社の登録商標です。
*Microsoft、Officeは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
*その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。