JP/EN

 

Foresight in sight

電力小売 クラウドソリューション 卒FIT対応 Enability® シリーズ

容量市場とは | 概要をもとに小売電気事業者への影響やスケジュールを理解しよう

2019年7月12日
容量市場とは | 概要をもとに小売電気事業者への影響やスケジュールを理解しよう

日本にこそ必要とされる容量市場

政府は2020年度実施に向けて「容量市場」の導入検討が進められています。2016年に電力小売が全面自由化され、2020年には送配電部門の法的分離が行われることとなっています。このような電力自由化の流れの中で、より安定的な電力供給のために容量市場の導入が検討されています。

これまで一般電気事業者が各地域で独占的に電力供給を行ってきた分、法的な供給の義務づけがあり、電力は安定供給が実施されてきました。そのため容量確保は一般電気事業者に任されてきました。しかし、電力が自由化されることで、新規の小売電気事業者が参入しやすくなった反面、供給の義務付けは無くなります。

自然災害や季節ごとに寒暖差がある日本においては、電力需要が大きく変動する中で、火力と原子力によるベース電源市場と電力供給の容量を確保する容量市場を合わせて導入することが必要と考えられています。

現在、日本には容量市場はなく、実際に発電された電力量を取引する「卸電力市場」のみで電力の需給調整を行なっています。しかし、電力自由化に伴いさまざまな問題を解決する方策の一つとして、容量市場の導入が求められています。フランスやイギリス、アメリカなどではすでに容量市場が開設され取引が行われています。

容量市場の開設によって電力市場がどのように変わるのか、小売電気事業者にとってどのようなメリット、デメリットがあるのかを確認しましょう。

容量市場の概要

電力の自由化が進む中で、中長期的な安定供給が求められています。中でも化石燃料による発電割合を下げて、CO2排出量を削減していく一方で、需要が逼迫した際にも火力発電などによる安定した電力供給を続けられるよう設備投資を行うには、現状の卸電力市場による自由取引だけでは賄えないと考えられています。

解決策の一つである「容量市場」では、買い手は電力広域的運営推進機関(OCCTO)であり、売り手は発電所を保有する発電事業者です。参加できる電源種別は固定価格買取制度(FIT制度)の対象として補助を受けている電源以外すべてが対象となり、発電事業者は容量市場へ参入するかしないかを選択できます。

発電容量(kW価値)の費用負担は、半年毎のピーク時における各小売電気事業者の利用割合に応じて負担し、また今後分離される送配電事業者も一部負担します。これらの費用は、電気料金や託送料金として消費者が負担することになります。

電力量ではなく、将来の供給力の取引

容量市場で取引されるのは、実際に発電した電力(kW/h)ではなく、発電設備が発電できる発電力(kW)の価値を取引します。発電設備は新規建設に多額の投資が必要となります。発電所の新規建設や廃炉など将来の供給力を数年前から見込んで発電力を取引するのです。

オークション体制を想定

政府の原案では、OCCTOがオークションごとに容量の目標値を決めたうえで、発電事業者の入札量に基づいて価格を決定する方式です。

既にアメリカやイギリスではオークション方式の容量市場を運用していますが、容量の目標値を設定するむずかしさなどが指摘されています。目標値の設定を誤ると、オークションが成立しなかったり、取引価格が必要以上に高くなったりする課題が指摘されています。
全量オークション体制となった場合、kWhの供給とkW価値の提供を切り離す仕組みになります。集中型の市場において全てのkW価値を容量オークションに出す仕組みにしても、kWhの供給にあたっては、従来通りの卸取引市場だけでなく、自社所有電源 や相対契約電源など自由な形態での売買が可能です。

オークション体制以外にも、相対契約という考え方がありますが、コストとリスクが高くなると予測されることから、全量オークション体制による検討が進められています。

リクワイアメントとペナルティ

容量市場では市場参入にあたって、固定価格買取制度の対象として補助を受けている電源以外すべてが対象となるものの、リクワイアメント(要件定義)とペナルティが定められ、それに則って取引が行われます。たとえばリクワイアメントとしては年間で一定時期や一定時間以上、稼働可能な計画としていることや計画外停止をしないこと、需給ひっ迫のおそれがあるときにも、稼働可能な計画となっている電源などについて、小売電気事業者との契約により電気を供給、もしくは、卸電力市場・需給調整市場に応札すること、 一般送配電事業者の指示などかあった場合に電気を供給することなどが検討されています。リクワイアメントやペナルティの具体的な内容は今後決定する見通しです。

容量市場開設の目的

容量市場開設の目的は、中長期的な電力共給力を確保することにあります。容量市場を導入することにより、卸市場価格のスパイクを抑制、卸市場価格の高止まりを防止し、再生可能エネルギー導入拡大時における調整力の確保に寄与することが期待されます。つまりエネルギーの安定的な供給がゴールであり、そのために以下の2つの目的を達成する必要があります。

再生可能エネルギーの拡大に伴う調整能力確保

政府は改正エネルギー供給構造高度化法を2016年に施行し、小売電気事業者に対して、調達電力に占める「非化石電源」の割合を2030年度までに44%以上にすることを求めております。

しかし、太陽光や風力などによる再生可能エネルギーはいまだ供給力が不安定で電力供給の調整能力を火力発電が主に担っています。特に発電量を細かく制御できる天然ガス火力発電の容量を十分に確保しておかないと、需給バランスの調整がむずかしくなってしまいます。一方で天然ガスは輸入コストが高く、現状では安い石炭火力の取引量が多くなり、天然ガス火力の需要は減り続けています。

結果、天然ガス火力の稼働率は低下し、発電事業者は設備投資を回収できない可能性が出てきました。そこで容量市場を導入し、天然ガス火力発電所の新設や更新を妨げないよう、調整力として必要な容量を十分に確保することを目指しています。

電気料金の抑制

電力の自由化により発電設備の投資回収の予見性が低下することに伴い、仮に今後発電投資が適切なタイミングで行われなかった場合、電源の新設・リプレースなどが十分にされない状態で、既存発電所が閉鎖されてしまう事態が招かれます。

その結果、中長期的に供給力不足の問題が顕在化し、更に電源開発に一定のリードタイムを要することから、需給が逼迫する期間に渡り、電気料金が高止まりする問題が提起されています。

また、競争の促進や、メリットオーダーの徹底、需要抑制などを通じた発電投資の適正化により電気料金を最大限抑制できると考えられています。

容量市場が必要とされるようになった背景

2000年から電力の自由化が進み、いよいよ2020年に配送電の分離がなされるところまで近づいてきました。エネルギーの小売自由化の実施や再生可能エネルギーの導入拡大により、一般電気事業者のシェアは年々縮小傾向にあります。

一方で国内の総発電所設備容量の約8割を保有しているので、一般電気事業者にとってみれば、発電容量が余ることになります。この時、一つは、余っている発電所を休廃止すること、もう一つは、余った電気を卸電力市場に売り出して売電利益を上げるという選択肢があります。

通常なら採算のとれない発電所は閉鎖するところです。しかし、電力について言えば、需給バランスが崩れると大規模停電を招き、国民生活に大きな影響を与えます。

これまで一般電気事業者は、年に数回のピーク需要に備えて、採算のとれない古い火力発電設備も維持管理してきました。また、自然災害が増加し、より生活インフラの安定供給が必要となるなかで、卸電力市場だけでなく、発電設備への投資としての容量市場の開設が必要となりました。

容量市場開設のスケジュール

OCCTOは2019年2月時点で2020年4月の市場開設を目指して、制度設計などの検討を進めていると発表しています。また、オークションは4年後の発電容量を取引するため、その落札されたkW価値の受渡対象年度(実需給年)は2024年度となります。

容量市場の課題や懸念点

実施予定が迫る中でなかなか詳細を議論するに至らない容量市場。検討委員会の議論の中ではさまざまな課題や懸念点が指摘されています。そのいくつかを見ていきましょう。

電力安定供給の予見低下対策は他にもある

政府は卸電力市場に切り替わることで、市場価格が変動し、安定供給の予見性が低下するため容量市場を開設し、供給力を確保したいと説明しています。しかし、予見性の低下については、緩和できる仕組みが他にもあると指摘されています。長期契約や、先渡市場、先物市場など、将来の不確実性に対処するための仕組みが海外で実施されているところもあります。そもそも、本来は市場の機能をしっかりと整備・構築した上で、それでも容量不足の懸念がある場合に検討されるべきだという声もあります。

また、仮に供給力が低下した場合でも、必然的に市場価格は高くなり、それによって固定費回収の可能性が高まることで、電源投資が進むことが見込まれる意見もあります。
そもそも容量メカニズムを導入している海外の国・地域は、市場価格の上限設定があるために、供給力が低下しても市場価格の高まりが抑制されるので、固定費回収のインセンティブの高まりが制限されます。そのため、容量メカニズムの導入が正当化されています。しかし、日本の場合は、市場価格に上限設定をしているわけではないので、容量メカニズムの導入の根拠は弱いという意見もあります。

電力価格が下がるとは限らない

容量市場の導入により人為的な価格スパイクが減ることや、安定供給の予見性から、電力価格が下がることが期待されています。しかしながら、諸外国では必ずしも電気価格が下がっているとは言えません。むしろ既存の一般電気事業者が保有する設備を下支えするための市場との懸念も出ています。いずれにせよ、容量市場に大きな価格抑制効果を期待することは難しいのが現状です。

経過措置が必要とされる

電力市場を効率化し、消費者の負担を減らすために容量市場を開設することは意義があることですが、そこには経過措置が必要という意見が出ています。古い電源のみに経過措置を適用して支払わないと、必要以上に早期に電源を廃棄あるいはリプレースする歪みを与えかねない懸念が指摘されています。また古い電源でも長く使うには一定の投資が必要ですが、その誘因を損なうことも考えられることから経過措置が求められています。

容量市場に関する議論は今も継続中

容量市場は2020年に開設することを目標に計画が検討されていますが、いまだ議論は絶えない状況です。容量市場の導入により、エネルギーの安定供給が可能となると見込まれる一方で、リクワイアメントやペナルティなど詳細事項を確定するには至っていません。
現状でも、容量市場そのものの必要性や、実質的な効果など各方面から懸念事項や課題が上がっています。

小売電気事業者としては、現状、制度の動向を注視し、開設された場合を想定して対策を準備しておくことが大切です。
重要ポイント
  1. 2020年に容量市場が開設される予定
  2. 容量市場により、エネルギーの安定供給が可能になる
  3. リクワイアメントなど詳細事項はまだ確定していない
  4. そもそもの必要性など、各方面からは懸念事項や課題が上がっている
 

*Enabilityは、日本ユニシス株式会社の登録商標です。

*その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。