CAM
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2016年12月発行 Vol.36 No.3 通巻130号CAM
CAMとは、Computer Aided Manufacturingの略で、CAD(Computer Aided Design)で設計した製品を量産するための金型や部品を製作するシステムの総称です。主な役割は、金型を削り出す工具の刃先を機械制御するための「加工データ」の作成です。この加工データの良し悪しが、金型の品質や製作の安全性、効率性を大きく左右します。 本号では、ものの形をつくるための重要な基礎となるこの金型製作にスポットを当て、日本ユニシスグループのCAD/CAMシステムであるCADmeisterと、それをベースにCAM機能を強化した次期CAMについて、事例を交えて解説します。
日本ユニシスにおけるCAD/CAMシステムの歩み
日本ユニシスは1965年にCAMシステムAPT/1100の提供を開始して以来,主に自動車部品を対象とした汎用CAD/CAMシステム並びに国内大手自動車メーカの専用CAD/CAMシステムを約半世紀に亘り開発提供してきた.1980~90年代のCAD/CAM普及・展開期では,ITプラットフォームに応じてUNICAD,CADCEUSといった汎用商品を提供し,金型業界でNo.1シェアを確保した.2000年代以降はグローバル化に伴い,CADCUESの開発・適用支援でこれまで培った日本のものづくりノウハウを用いて仏ダッソー・システムズ社のCATIA V5 上にDynavistaを構築した.また日本ユニシス・エクセリューションズからは2005年に日本のものづくりの伝統と職人の技を実現するデジタル・マイスター・ツールCADmeisterが発売された.
本稿では,日本ユニシスのCAD/CAMの歩みを,ITプラットフォームや要素技術の進化および他社市販システムの動向を交えて紹介する.
次期CAMの構成と機能
日本ユニシスは日本ユニシス・エクセリューションズが提供するCAD/CAMシステムであるCADmeister上にCAM機能を強化した新たな金型製作ソリューションである次期CAMの提供を開始した.次期CAMは曲面加工用パッケージ,型構造部加工用パッケージおよびプロファイル加工用パッケージから構成され,長年のCAD/CAMシステムの開発・適用支援を通して培ってきたノウハウに加え,新たな要素技術を用いて日本のものづくりを支援することを目的としている.次期CAM には,(1)安心・安全の確保,(2)高能率・高品位加工,(3)作業工数の削減,(4)一体操作環境の四つの狙いがあり,それらを実現する機能と環境がある.
CAM作業工数を大幅に削減する『流用/自動加工設計』
金型構造部の型製作におけるCAM作業では加工部位が多いため,加工部位の特定,加工手順の割り当て,加工残りの確認及び工具干渉の確認といった一連の繰り返し作業に多くの時間が掛かっている.また,類似の型データに対しては,過去に行った作業結果があるのにも関わらず,新規データと同じ作業を行っているため,新規データと同じ作業工数が掛かっている.
次期CAMでは,これらの作業工数に関する課題を解決するため,『部位自動認識』,『自動加工設計』及び『流用加工設計』の三つの自動化機能を構築し提供した.それにより,作業者のCAM作業工数を70%~75%削減することができた.
磨きレスを狙う『複合面沿い加工』
金型において,仕上げ加工後の型でプレス成形を行うと3~10ミクロン程度の型の凹凸(カッターマーク)や最大30ミクロン程度の加工段差が成形品に転写される.これらを取り除くために加工後の金型に対し磨くという作業をする必要があるが,この磨き作業には工数がかかる上に,金型自体の精度を低下させる.
磨き作業を最小にするため,加工段差やカッターマークを発生させる原因を調査し,複数の領域を複合し一つの経路を作成する機能と加工順の最適化機能,加工速度一定となる経路点配置機能を,複合面沿い加工として実装することにより,それらを解消した.
品質の事前折込により手戻りを防ぐ『仕込み』
CAMデータ作成作業では,自動化によって大幅な作業工数削減が実現できている.しかし,仕上げ加工は複雑な要因が相互に関連し,自動化の適用が非常に難しく,手戻りも発生しがちである.その原因を調査し,それらを解決するために,目視と手修正のプロセスを折り込んだ仕込み機能を実装した.これにより手戻りが減り,工数を削減できた.
超大物金型への適用を実現する『高速等高粗加工』
近年の金型の粗取り加工は,高精度かつ高速な加工が可能な,最新の加工機による粗取り加工を模索する取り組みがあり,超大物金型についても,従来の低速重切削加工より,高速軽切削加工が主流となりつつある.しかし,従来のオフセットタイプによる粗取り加工法では,大きく次の二つの課題があり,高速軽切削加工を実現するための障害となっていた.
1)折れのある切削動作の影響による工具送り速度の減速
2)エアカット動作による加工効率の低下
次期CAM の高速等高粗加工は,粗取り加工における高速軽切削加工を実現するためにトレースライン法と加工順の工夫を実装し,この二つの課題を解決した.
無人加工を実現する『プロファイル加工』
プレス金型のトリム工程やフランジ工程の切り刃部と2番逃がし部を加工するプロファイル加工は,有人加工をしている顧客が多く,無人加工が進んでいない分野の一つである.ユニシス研究会の研究活動(CAMグループ)の要望を受け,プロファイル加工の無人化を狙った3Dプロファイル機能を開発した.
無人化が遅れている理由は,製品と工具との干渉回避,加工負荷による工具折損防止の保証が困難な点にある.工具干渉問題には,製品と工具との干渉を自動で回避し,干渉回避した箇所の加工残りを安全な工具系で加工するパスを自動作成した.加工負荷問題には,切削体積に応じて送り速度を最適化した.これにより,加工機オペレータが担っていた作業をシステム化し,無人加工を可能にした.
加工トラブル防止と高能率高品位加工を実現する『加工シミュレーション』
加工シミュレーションとは,CAMシステムで算出する経路から工作機械での実加工をシミュレートし,干渉や削り込み,削り残しなどの【安心・安全】の問題がないかを検知することを第一の目的とする機能である.日本ユニシスグループが提供するCAD/CAMシステム,CADmeisterでは加工シミュレーション機能をCAMシステム上に組み込んでおり,実加工より前のCAMの段階で,より早く【安心・安全】の問題を検知できる.さらに加工シミュレーションを応用し,不要経路の除去,加工負荷を低減する経路追加,最適高さの乗移り動作付加など【高能率・高品位】な加工を実現する最適化機能を提供している.
トヨタ自動車における次期CAMの『適用事例』
トヨタ自動車株式会社は,これまで以上に高品位な金型を低コスト,短期間で製作するためCAM作業の工数削減および高能率・高品位加工を目指し,日本ユニシスの次期CAMをプレス分野に導入し,2015年より適用を開始した.次期CAMはプレス金型全体に対し粗加工から仕上げ加工をするためのCAM機能を有しており,プレス金型の製品部,構造部およびプロファイル部の全ての加工箇所を対象に適用した.
本稿は,それらの加工箇所に対し次期CAMの自動化機能を用いたCAM作業の工数削減事例,および各種加工機能を用いた高能率・高品位加工の事例を紹介する.