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BIPROGYグループの歴史 ENIAC誕生50周年記念 〜その歴史を追って〜 VOL.10

情報化時代の幕開け VOL.10

アポロ月面探査機の実物大模型に乗るENIACの共同発明者のジョン・W・モークリーとJ・プレスパー・エッカート。
この写真は1971年にシカゴ科学・産業博物館で行われたENIAC25周年記念式典で撮られた。

初期のコンピュータ販売にとって決定的に重要なのはそのユーザであった。

軍の委託先であるシステム・エンジニアリング会社の高度な設計作業における計算ニーズ、とりわけ航空産業のそれが、コンピュータ事業を成長させる大きな原動力を果たしている。

同じように、連邦政府の行政需要、軍の兵站業務や予算監理局(Office of Air Comptroller)の購買活動、人口統計局(Census Bureau)、アメリカ特許庁(U.S. Patent Office)、社会保障制度管理局(Social Security Administration)などの政府の活動がデータ処理システムの大きな市場を創造した。

ユーザはコンピュータ・システムの市場を供給したばかりでなく、初期のコンピュータ・システムに関する大量の技術知識をも提供した。

1950年代には科学者や工学技術者の深刻な不足があり、コンピュータ会社は開発資金の手当に苦労した。

USE、CUBE、SHAREといった自発的ユーザ団体が、ハードウエア改良への提言や、多くのアプリケーション、システムズ・プログラミングを供給している。

半導体と集積回路は、コンピュータを小型化した革命的技術であり、コンピュータ産業を急成長させた。

ENIACは近代コンピュータ産業を招来し、長期にわたって続いた技術革新の第1歩を記すものであった。
ENIACはジョン・アタナソフやRCAが設計した電子式環状計数器などの先行した研究の啓示の上に築かれたものである。
ENIAC開発チームは多くの人達の着想から刺激を受けている。ムーア・スクールのアービン・トラビスの、「機械的に加算する機械」に関する著書は、ENIACのアーキテクチャの構想を立てたモークリーに大きな影響を与えている。

エッカートと彼の工学技術チームはいろいろな真空管を試験し、個々の真空管の寿命を増し、稼働時間をもっと引き延ばすために、真空管はいつ、どうして故障するのかを研究した。
設計を何度も試みて、より低出力でかつ仕事量が最小になる真空管が開発された。

最終的には、真空管は遅かれ早かれその寿命時間内に故障するという現実を踏まえれば、予防保守を徹底することが現実的な解決策であるという結論に達した。
予防保守という概念を導入することによって、故障が発生する前に危険な真空管は取り除かれ、丈夫な真空管のみがENIAC内に残るようになった。

ENIACは、初期の研究者や発明家が開発した多くの概念や革新を集大成することによって、大胆な未来指向の製品になったのである。

残念ながら、ENIACの特許権(ENIAC patent)紛争によって、関係者は当時の歴史を追憶するとき、必ずしも愉快ではない感情にとらわれざるをえないであろう。

1973年、アタナソフ−ベリー・コンピュータが“先に創られた工芸品”であると判定され、それによってエッカートとモークリーが申請していたENIACの特許権は無効になった。
しかしわれわれが、近代的計算について50年の歴史を振り返る際は、争いや桎梏、紛争を脇へ押しやり、共通の遺産を認めあい、創造的な人々がこの分野でなし遂げた貢献に思いをいたすべきであろう。

コンピュータは、しばしば“電子頭脳”とか“偉大な頭脳”と呼ばれてきた。

ENIACが最初に命の火を灯したのは、はるか昔になった。

コンピュータ技術は急速な進展を遂げ、開発し残された技術は何かあるだろうか、と思うほどである。

地球規模の社会的変革がコンピュータによって次々ともたらされつつある。

次の50年はもっと血を沸き立たせるような革新が約束されているのである。
情報化時代はまだ50年を経たに過ぎない。

今後にこそ無限の可能性の広がりが待っているのである。

< 完 >

著者について

  • ディリス・ワイングラッド博士:元ペンシルバニア大学学長補佐、アーサー・ロス美術館理事/館長主な著書に「嬉々として学び嬉々として教える」(Gladly Learn and Gladly teach)(ペンシルバニア大学誌(Press)「歳月を経て、大陸を超えて」(Through Time, Across Continents)

  • アツシ・アケラ(Atsushi Akera)氏:ペンシルバニア大学歴史社会学科卒

*このコンテンツは、ENIAC誕生50周年を記念し、平成8年10〜12月に作成/公開したものです。