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金融ビッグバンと情報技術

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金融ビッグバンと情報技術

遠山節夫

本稿は,金融・資本市場の潮流から日本の金融ビッグバンが起こる背景と,金融機関における情報技術の要件を考察したものである.はじめに,金融・資本市場がどのように変化しつつあるかを,そして金融機関にどんな変化をもたらすかを経済の成熟化,国際化,証券化,金融の自由化,金融技術の発展の五つの切り口から整理する.経済の成熟化の側面として,資金不足時代から資金余剰時代になったことにより,資金の供給重視から資産の運用重視への同市場の変化を述べる.そして,金融機関が制度として非競争的仕組みになっていたことを整理する.それが,低成長化によって競争が激化し経営方針を変える方向にあることを述べる.次に,金融機関の国際化は,産業の国際化とともに進展したことに触れ,金融の国際化とは結果的に単一市場化の方向であることを述べる.そして,国際規準に準拠させることが必然となり,BIS規制,決済システムの統一化,国際会計基準の準拠が,情報システムの要件として直接的に関係することを述べる.また,証券化については証券化の定義を述べ,証券化には伝統的な証券化と新しい証券化とがあることを述べる.特に新しい証券化は仕組み型金融と呼ばれ金融機関がリスクをコントロールする為の手段として重要な役割をになうであろうことを述べる.金融の自由化には,価格の自由化,業務分野の自由化,商品の自由化,対外取引の自由化がある.それぞれの規制緩和が実施されてきたが,もう一段押し進めるのが今回の改革であることを述べる.そして,これによって金融機関の事業がどう影響されるかについて述べる.最後に金融技術の発展がどのように金融機関の事業に影響しているかを分析し,今回の改革後にどんな役割となるかを考察する.以上の分析の後,情報技術への要件について,ネットワーク化,情報活用の強化,経営管理の精緻化,資産運用力の強化,新商品開発力の強化,資産運用管理業務の強化,堅牢で柔軟なバックシステムという要点ごとに情報技術に求めるニーズをまとめる.

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インターネットバンキング—概要と実装の考察

宮島眞二

インターネットバンキングは銀行サービスをインターネット経由で顧客に提供するサービスである.現在提供されている主要なサービスの内容とインターネットに特有な情報技術を紹介し実装を考察する.実装インフラとしてJolt(Java OnLine Transaction)を適用した場合の考慮点を述べる.情報基盤を構築することにより既存勘定系システムに影響を与えずに資産の有効活用が可能となり,今後も多様化が予測される顧客との新たなサービスデリバリチャネルへの対応が容易に実現できることを述べる.

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ビッグバン時代の銀行経営の中核 —多段階型トランスファー・プライシング(行内資金移転価格)制度

田中 淳

金融ビッグバンの時代を迎え,日本の金融機関が生き残るためには内部管理とマーケティングが重要であると言われているが,その両者を支える基盤となるのが「多段階型トランスファー・プライシング」である.トランスファー・プライシング自体の概念は,従来から収益管理業務で利用されてきたが,それをリスク・ファクタごとに細分化することでリスク見合いリターンが認識できる.そうして初めて,ビジネスの意義を測定するための尺度が構築され,どの領域が自らのドメイン(生存領域)であるかが判別可能となる. 本稿では,このトランスファー・プライシングの銀行経営における位置付けと歴史をレビューし,業務コンセプトと管理モデル例を解説する.

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Hull & Whiteモデルによる債券オプションのプライシング

小川正夫

Hull & Whiteモデルによる債券アメリカンオプションの理論価格を算出するプログラムを開発し理論価格の妥当性を検証した.単純なアルゴリスムだけでは計算時間,計算精度共に不十分で次のような実務上の問題点が発生した. 1.「短期金利が正規分布に従う」という条件では,金利の低い部分で負になってしまう. 2.債券の残存期間が7年〜10年であるのに対し,オプション期間が数日〜数か月なので1種類の時間刻み幅で離散化するには無理がある.刻み幅を小さくすると計算時間が飛躍的に増加し,刻み幅を大きくすると債券アメリカンオプションのプレミアムの推定精度が悪くなる. 3.オプションのキャッシュフローがモデルの格子点に乗らないことが多い.不適切な処理では計算精度が悪くなる. 4.Hull & Whiteモデルのモデルパラメータa,σの最適化をどうするか?これらの問題点に関して有効な対策を施すことによって,実務に耐えうる計算モデルが得られた.

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アメリカン・オプションの理論価格の計算法

岡野豊明

現在我が国では「日本版ビッグバン」と呼ばれる金融大改革が進められており,その中の中心課題の一つにデリバティブ(金融派生商品)取引の拡大・展開がある.デリバティブの中で最も基本的なものに1997年7月にようやく我が国に導入された個別株オプションがあるが,この価格付け理論は金融の数理モデルの基礎となるものである.個別株オプションのうちのアメリカン・オプションの価格は理論価格を数式の形で求めることができず,数値解に頼らざるを得ないので,現在でもその数値解法の研究が盛んに行われている.  アメリカン・オプションの理論価格の数値計算法には,格子モデル,モンテカルロ・シミュレーションおよび偏微分方程式の差分解法などがあるが,本稿では偏微分方程式の差分解法をとりあげた.偏微分方程式の差分解法を用いたアメリカン・オプションの価格付けにはBrennan-Schwartzアルゴリズムがよく用いられている.しかしながら,この方法はバニラ・オプションと呼ばれる単純なオプションの価格付けには有効であるが,近年盛んに考案されているエキゾチック・オプションという複雑なオプションの価格付けには不向きである.そこで,エキゾチック・オプションにも有効な汎用性のあるアメリカン・オプションの価格付け手法を提唱する.この手法は,流体工学分野における偏微分方程式の差分解法を応用したもので,数値計算に現れる行列が正定値対称行列という性質のよい行列になるように差分化を行うことによって,計算の安定化と精度の向上を目指したものである.

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オブジェクト指向技術による勘定系システムのリエンジニアリング

向井 丞

現在,日本ユニシスでは地域金融機関向け次世代基幹勘定系パッケージSBI21(Strategic Banking Integrated-system for 21century)の開発を行っている.SBI21は数々の特長を持っているが,開発言語がCOBOLでありながら,分析/設計工程にオブジェクト指向技術を採用しているというのもその特長の一つである. このシステムをオブジェクト指向技術で構築するに際して,本開発では,先に販売し豊富な導入実績を持つTRITONとFAST1100の二つのパッケージのプログラムソースコードとデータベース項目を入力としてリエンジニアリングするという手順を採っている. 本稿では,オブジェクト指向技術による分析/設計結果のCOBOLによる実装構造を紹介するとともに,既存システムをオブジェクト指向技術でリエンジニアリングする際の手順/利点/考慮点を記述する.

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SBI21におけるオープン環境を利用した開発基盤

奥野信幸

SBI21は,地域金融機関向け次世代勘定系システムパッケージであり,専用の開発環境を保有している.この開発環境は,PC上で開発したプログラムを実行環境であるメインフレーム上でも稼働させるという考え方に基づいて設計されている.また,SBI21は,オブジェクト指向技術を前提としたアプリケーション構造になっているため,本開発環境は,それらを支援する機能や,PC上でのテスト実行を支援する機能を提供する.これにより,従来開発負荷の大きかったテスト工程において,テスト検証負荷の軽減や仕様変更にともなう手戻り工数の削減といった効果を上げている.  本稿では,このPC開発環境の特長および機能に関して説明するものである.

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BRaMSによる顧客情報の活用事例

斎藤 譲

「BRaMS」は情報系システム構築支援パッケージとして1997年10月に商品化され,金融機関を中心に顧客情報を中核とした情報系システムの構築に活用されている.「BRaMS」の提供機能は,データベース構築,データベース検索,システム運用管理の各機能から構成されるが,適用業務内容を特定しないこと及び段階的な構築・拡大を可能とすることを狙いとして,データモデルは規定していない.「BRaMS」の適用ユーザは,基幹業務システム,社内蓄積情報,外部情報を利用した独自の顧客データベースを構築し,顧客管理及びマーケティング業務に幅広く活用している. 本稿では,情報系システムの変遷と機能要件を整理すると共に,情報系システムの中核となる顧客データベースの考え方及びその活用についてBRaMS導入ユーザの事例を中心に紹介する.

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ミッションクリティカル・データウェアハウス“CRMS21”

塩崎敏彦,守家正美,北浦幸浩

本格的な金融ビッグバンを迎え,日本の金融機関は生き残りをかけ,従来型のマーケティング・システムから,顧客との継続的なリレーションシップを築き,顧客の問題を解決するマーケティング手法(リレーションシップ・マーケティング)を試行しつつある.このリレーションシップ・マーケティングを実現するためには,統合型マーケティング・データベースの構築が必須となる. 「CRMS 21(Customer Relationship Management System)」は七つのサブシステムから成り,業務処理プロセスに基づいた,部門共通のビジネスルールと論理データモデルをベースに,統合データウェアハウスを構築する.顧客を中心としたマーケティング・サイクル全般を支援するミッションクリティカル・ソリューションである.

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オープン環境における入出力の部品化と標準化

おお津昌三

Windows NT環境での金融ソリューション開発,特に利用者インタフェース開発の標準化を目指して1997年度にSWEETSプロジェクト(旧称金融入出力標準化プロジェクト)が試みられた.SWEETSプロジェクトでは,金融ソリューション開発における生産性の向上を目的とした利用者インタフェース部品の開発,使用性の標準化を目的とした規約の整備,およびこれらを格納するリポジトリとその運用ツールの開発が行われた.現在その成果物は実際のシステム開発への適用を評価中である. 本稿では,SWEETSプロジェクトの成果,その実適用にあたっての課題について,紹介する.

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